鈍感にも程があるだろ!
本当にお久しぶりです…(-_-;)
すみませんm(__)m
『あぁーーーーっつい!!』
部活の休憩時間、唯香の声が格技場に響く。
5月と言えば、涼しくて部活のやりやすい時期と思われがちだが、私達にとって5月はもう夏に分類される存在だ。
「ほんっと暑いよねー。うわっ、まだ1時間もある…。」
1時間…これだけやれば家に帰った途端眠ってしまえるだろうな。勿論、今でも汗だくなのにそんな事はごめんだが。
「はぁ…水筒とってこよ…。」
立ち上がり、一歩踏み出した途端…グラッと視界が歪んだ。
「あっ…。」
貧血…?まずい…倒れ…
…ガシッ
…!?
『おっとぉ…大丈夫?九条さん。』
「あ…先輩…」
そこには橘先輩の姿があった。
どうやら私が倒れそうになったところを先輩が支えてくれたらしい。
「あのっ、すいません…私っ…」
慌てて体を起こそうとするが体が動かない。
『まだふらつく?その様子じゃ稽古は見学してた方が良さそうだね。九条さんは頑張り屋だけど、あんまり無理しちゃダメだよ?』
そう言う先輩の笑顔に思わず顔が火照る。
可愛い…。
そんなことを考えていると『集合ー!』という川澄先輩の声が響いた。
『あー栞は見学しててね!じゃ!』
しばらくの間は先輩逹の稽古を見ていた。
自分が出ていない稽古はすごく変な感じがする。
先輩逹が修学旅行から帰ってきて、部活にはまた活気が戻ってきた。
勿論、柏木先輩も稽古をしている。(足の怪我も治ったらしい。)
「稽古出たかったぁ…」
自分の体の弱さが恨めしい…。
幼い頃からとても丈夫だった兄や姉とは違い、私は生まれつき体が弱い。
だから剣道部に入部する時も両親を説得するのに苦労した。
最近は体調も良くなりかけてたのに…。
やっぱり無理してるのかな…私…。
『おい…大丈夫か?』
男子の声ではっとした。
「へっ!?あぁ、うん、大丈夫……なんで?」
『なんでって…お前…ずっと顔あげなかったから…。 』
そう言って不機嫌そうにこちらを見る男子の名は佐野 秋人。
私と同じ2年生で背が高く、眼鏡をかけているのが特徴だ。部活、委員会、学校行事、全てに対して真面目で成績も良い。
だが今は私と同じ様に見学している。確か体育で手首を捻挫したとか言っていたっけ。
『…まぁいいや…それより、ほら。』
目の前にほうきがつき出される。
「え?」
『え?じゃねぇよ!具合良くなったんだったら掃除手伝えよ。』
「あぁ…ごめんごめん。今やる。」
ほうきを受け取ると私は佐野について格技場の下駄箱へ向かった。
格技場の下駄箱はそこまで広くないものの、普段滅多に掃除しないため、かなり砂やほこりがたまっている。
ふいに佐野が話しかけてきた。
『…なぁ。九条って誰かと付き合ったりとか…その…あるか?』
「はぁっ!?なっ…何言い出してんの!?そういうのって男女で話すもんじゃ無いでしょ!?」
『うっ、うるせぇよ!いいから答えろって!』
「なっ…無いけど…。」
『あっ…そう…。』
しばらくの間沈黙が続いた。
真面目な佐野がこんなこと聞いてくるなんて…ちょっと意外だな……あっ、もしかして!
「佐野、好きな人いるんでしょ!?ねぇねぇ誰?もう告白した!?どうなの!?」
『なっ …声でけぇよ !別にいねぇよそんな奴!』
頬を赤らめながら抵抗しているが、その態度ですぐわかってしまう。
「またまたぁ~!誰にも言わないって約束するから !お願い、教えて!」
佐野は少し躊躇ったが、そのうちこう言った。
『…ちょっとこっち来い。』
佐野に手を引かれ、私達は水道の前で向き合った。
ここは格技場からは完全に死角になっていて、辺りには先輩逹が稽古をしている声が響いていた。
「で、誰なの?早く教えて!!」
すると佐野がぼそりと言った。
『…にいる。』
「え?」
『こっ…ここにいる。』
「えっ!?ここにいるってことは同じ部活ってこと!?え、誰!?もしかして唯…」
『だああっ!お前鈍感にも程があるだろ!…だから…その…要するに…』
その言葉を聞いた瞬間、私は息が止まった。
橘先輩ナイトだぁぁぁ…!d=(^o^)=b