第六章 メールの着信音って、結構びっくりするんですよね
小学生のお話です‼
「ピロリーン」
「ん?…お父さん?」
あぁっ、もう8時か。いつもなら、遅刻確定だ。でも、今は夏休みだから、大丈夫。私は、山本 伊代里、小学4年生、姉で下に弟がいる。さっき、夏休みと言ったけど、小学4年の夏休みも、暇なわけでは無い。たくさんの宿題と、自由研究に追われるのだから。そして、家には、お父さんと、私しかいない。そう、弟とお母さんがいない。いや、会おうと思えば会える。でも、会えば、お父さんは悲しいと思うから、会わない。できればずっと。でも、弟とは、内緒で結構会ってる。私が6歳、弟が4歳の時、おやが離婚した。私はお父さんと、弟はお母さんと一緒に暮らすことになった。まぁ、もともとお母さんは、家にはあまりいなくて、お父さんっ子だったから、今、あまり淋しくは無い。薄情なのか?私。
「あっ。」
お父さんから、メールきてたんだった。なになに?ふーん。
「《はーい。大丈夫です。》っと。」
送信。今日、お父さんは帰りが遅いらしい。そっか、そっか。こんなことは、よくあること。ちなみに、携帯は、小学校入学からもっている。まっ、シングルの家庭には多いだろう。
「うん。」
じゃあ、支度するか。今日は、10時に、山の丘公園で、弟と待ち合わせしているのだ。まぁ、こんな感じで、弟とは、頻繁に会っている。そして、内緒で会うというのが、ちょっと楽しみだったりする。
誰もいない部屋に向かって、
「いってきまーす。」
「あっ、もういたの?あい。」
「うん。」
着くと、もう弟がいた。弟の名前は、あい。平仮名であいって、私の伊代里って名前より、女の子っぽいと思う。その名前のせいか、幼いせいか、とっても、女らしい顔立ちだ。まっ、2年生という、幼さのせいだろう。でも、綺麗な顔は、お母さんとそっくりで、正直、羨ましい。まぁ、それはおいといて、
「今日、大丈夫だった?木曜日、お母さん仕事、やすみでしょ?」
「うん。やっくん…友達と遊ぶっていった。」
「そう。」
「伊代里は?」
「一日中、家にいないから。」
「そっか。」
実は私、弟に、名前で呼ばれている。これは、お互いの、距離のせい。
「最近、お母さんどう?」
「変わらないよ。いっつも疲れてる。」
「あぁ、同じ。お父さんも。」
私たちは、あった時、それぞれの、近状報告をしあう。小学校の低学年と、中学年のする話しにしては、ちょっと渋い。これは、お父さんの、生真面目な性格のせい。
「伊代里、お腹すいた。」
「えっ、まぁ、11時か。いっか。」
「なに食べる?」
「マック?」
「えっ…」
「あー、お母さんなら、ダメって言うか。」
「うん。」
まっ、お父さんもだけど、そういうところに、厳しかった。
「あっという間だね。」
悲しげにそう言ってくれるのは、可愛い。
「また、今度。」
「うん、ばいばい。」
「ばいばい。」
また今度が、今から楽しみ。
「えっと…」
今日はお父さんいないから、夜更かしできる。ご飯たべたら、なにしよ。
「いただきます。」
誰もいない。けど、ご飯くらい作れる。
。。。
「ごちそうさま。」
自分で作って、自分で言うのは、変な感じがする。けど、言う。夜更かしっていっても、することないな。
「ピロリーン」
「ん?あいだ。」
ー今電話して、大丈夫?
私たちが会ってるのは内緒だから、電話するには、お互い、確認することにしている。今日は、帰らないって言ってたから…
「プルルルー」
「あっ、あい?大丈夫だよ。」
「伊代里?」
「うん。」
「お母さんがいないんだ。」
「は?」
「いないの。」
「急用とか、できたんじゃない?」
「ううん。それなら、置き手紙がある。」
そんな。お母さんが?
「あと、お母さんの荷物が、なんにもないんだ。」
「……」
「変だよね?」
「なんで、もっと早く…」
「ぼく、お母さんと部屋が違うから、お母さんの部屋なんて、いかないから。」
私は、姉。
「どうすればいい?伊代里」
「今何時?」
「11時。」
「まってて、あい。」
「え?」
「今いくからっ」
私は、あいの姉。なんとかしなきゃ。あいの家は知ってる。いける。
ーガチャ
「ん?伊代里?まだ起きてたのか。」
お父さん…。なんで。でもっ
「おいっ、伊代里!まて!」
「はあっ、はぁっ」
早くっ
「あい‼‼」
「伊代里っ」
「お母さんは⁈」
「いない。」
「探そうっ」
お母さん、あいを一人にしないで。今あいが一人になったら、どうするの?
「伊代里、疲れたよ。」
「だめっ。今探さないとっ。」
あれから、どのくらいたったかな?今、何時かな?あと、どのくらい探せばいいかな?
「おいっ、伊代里か?」
「っ………お父さん。」
「どこいっ…あい?」
「お父さん?」
「お前ら、」
「お母さんが、いなくなったの。荷物も。」
「今まで、ずっと…」
あぁあ。やっぱり、無理だった。いくら大人びていたって、子供なんだ。大人びた子供は、やっぱり、子供なんだ。子供は、なんもできない。お母さんをみつけることも、内緒にすることも。
お父さんが、悲しい顔をした。だから、できれば、会いたくなかった、ずっと。ごめんなさい。あい、お母さんをみつけられなくて、ごめん。
私はいつも、お父さんからのメールで起きるけど、もう、嫌だよ。
最後まで、ありがとうございます!
次話から、おおきく、話がうごきます!