第四章 わたしの朝っていっつも痛いんだよね
「ガツンッ」
「いっ…………つーーー…」
くーっ、痛い。効く。朝一番、ベッドから落ちて、床に頭ぶつけた。
「くっそぉっ」
と思い、床にわたしが寝る時愛用している、カチューシャを投げつけた。が、
「こんっ」
「うっ!」
跳ね返り、壁に当たって、わたしのおでこに。しかも、「こんっ」などと、少し可愛い音立てて。プラスチック製のカチューシャは、意外と反発力があって、先端があたると、若干痛い。ー朝からわたしはこんな感じ。気づけば、いっつもそうかもしれない。
「あーあ」
一人暮らしのわたし、
「やーなのーっ」
なんて、言ってしまう。わたしは一応、23才社会人、未婚………無職。名前は、相田千尋。馬鹿みたいだ。いや、馬鹿なんだよな、実際。親からも邪魔扱い。本当なら実家暮らしがいいけど、家に居たら、アンタいつまでも無職決め込むんでしょ、なんて言われて一人暮らし。しかし、家出ても結局無職…。別に、好きで無職な訳じゃない。ちゃんと努力はしてる。でも、なんかしっくりこないんだよな。そんなものに一生懸命できないよ。そんな時間、もったいない気がする。これだ!わたしはこれっ、天職、最高‼って思える仕事なら、もう、いっぱい頑張る。だから、それまでは、のんびり楽に過ごしたいと思ってる。
「まぁ、今日も行くか。」
わたしは無職だから、現在職探し中。本当は特に興味も無いけど、親がうるさいしね。
「行って来まーすっ」
ま、返事なんて無いけどね。
「あのぅ、できればぁ、楽しい感じのが…」
「ぇえと、仕事ですからねぇ…」
「ははっ…ですよね…ははっ」
「えぇ。」
もぉーう!馬鹿にしたのでいいから、笑ってくださいよ‼っていつも思う。わたしが職探しの時、よく出くわすこの男の人。いっつも無愛想なのだ。わたしが苦し紛れに、無職のことを、ちょっとギャグ風味にいうとこの人、同情のような、哀れみのような…いや、極真面目に返事する。それが居心地悪くて、またギャグを言う。それも、同じ反応。仕事、探し始めて半年?そろそろ、わたしのこのギャグの対処法も、習得してほしいものだ。いや、この人から見れば、わたしに、早く就職してほしいのだろう。
「ここの会社はどうでしょうか?」
「えっ……つまらなそうですね!」
「あっ…はい。では、別の…」
「あ!いや、あの、どうせなら楽しいの、と 思ってて。」
「えぇ、分かりました。」
うっ、この人は多分、本当に分かったのだろう。わたしが、バカだということが。まぁ、その通りですよ。
「あの、相田さん、具体的にどんな仕事ってないですか?」
「え!あぁ……」
「んー、では小さい頃の夢とか」
「うー……無い、デスね。ははっ」
「あぁ、はい、わかりました。」
すっ、すいません‼もう、いたたまれないっ。もう、今日はここまでにしよう…。
「あーあ!」
わたし、どうしたらいいんだろ。楽な仕事って、自分でも馬鹿なことだとはわかってる。なんでこんなこと、言い出したんだろ…わたし。
「プルルルー」
「お?うぇっ、母さん」
「プルルルー」
「もぉ…なに?」
『あっ、千尋?』
「うん。なに?」
『仕事きまった?最近聞かないけど』
「ああ、まだ。」
『大丈夫?もうそろそろ、働いてよ?』
「わかってるよ……母さんはさぁ、」
『ん?』
「なんか、働いてさ、楽しい?」
母さんの仕事は、老人達の介護。じいちゃん、ばあちゃんのお世話。
『んー?急に変な子ね』
………。
『まぁ、楽しいと言えば嘘になるわ』
「え?」
『でもね、私、ばあちゃんっ子だったのよ。でも、私が小学4年生の時、亡くなったの。悲しかったわ…。だって、たくさん迷惑かけたのに、何にもしてあげられなかった。でも、今こうして老人ホームで働いて、ちょっとスッキリしたの。すっごく大変だけど、今になってばあちゃんにお返しできた気分。』
「そっか…うん、ありがと」
『応援してるのよ』
「うん。ばいばい。」
はぁ。そっか。母さん、いいなぁ。わたしもそんな仕事したいな。
でも、具体的に、では無い。わたしってさ、夢が無いから、具体的にって、ちょっと難しい。だからまず、職の前に、夢探そ。そしたら、あの男の人に、迷惑もかからないでしょ。
それから……ベッドから落ちて起きるのは、やめよう。
ーだって、痛いからさ。
お久しぶりです!
今回は、初の女子、初の大人です!これからも読んでいただけると、嬉しいです‼