きっかけ (6)抽選が運命を分ける?
会社内対抗ボクシング大会へ向けて練習に励む植木。今日は日曜日。
それをサポートする斉藤と花田。
バンッバンッとミットをたたく音が響く。「もっと腰をひねろ!バランスがまだまだ!」
それに答えようとする植木。だが今日は調子がよくない。
「どうした!?」気遣う斉藤。「大丈夫です。」と答える植木。
すでに練習開始してから3時間が経過していた。
「今日はこれまで!」と花田がとめに入った。
シャワーを浴びて帰る植木。
植木は挨拶を済ませ斉藤より早くジムを出た。トントンと階段を下りる植木。ドアを開けて外に出たら待ち構えていた人影が見えた。
「まっさーるくん♪」呼びかける女性の声。振り返るとそこにいたのは大平だった。
「私丁度出かけた帰りなの。今帰りなの?」「うん。」
気遣う大平。「どうしたの?最近元気ないけど。また何か仕事であったの?」「そういうわけじゃないけど。」
「いっつも何かあると口をへの字にするからすぐに分かるよ。」
「そう。」「だってしょうでしょ!?いっつも一緒にいたんだもん。」
「大平にはかなわないなぁ。」照れくさくいう植木。
「ねねどっかよってく?」「えっ」「嫌なの?」「そういうわけじゃないんだけど今減量中でさ。」
「そ、そうだよね。なに言ってるんだろう私。ごめんね変な話しちゃって。」「いや大丈夫。今度試合終わったらどっか紹介するよ。」
「いいの?」「うん。行こ!」「うん!」
何か芽生えた二人。それを2階から見ている斉藤と花田。微笑みながら眺めていた。
それからいよいよ会社内対抗ボクシング大会の予選抽選会が植木の勤める会社で行われた。
アナウンスの声。司会は大平だった。
抽選のやり方は白い箱の中に棒が入っていてその棒の先端には番号が振ってありその番号の場所に立つ。その場所の隣になった人物と対戦を行うのである。早く言えばトーナメント式である。
全国の事業所から本当に同じサラリーマンなのかと思うようないかにも強そうな選手が集まる。
大平の案内で次々とくじを引かれてようやく植木の番がきてくじを引く。見つめられる大平に見られながらくじを引いた。5番だった。まだ誰も立っていない場所に立つ。その数人後対戦相手と思われる人物が隣に立つ。気弱そうな社員だった。名前は近藤忍。
これなら勝てると自分は高を括っていた。
本番前日。最後の体重検査を済ませたあと、Bジムで花田からあることを植木は聞いて唖然とした。
そう初戦の対戦相手のことである。その対戦相手とは、現役時代にボクシングアマチュア選手権大会でチャンピョンになったことがある人物だった。シード権を獲得してもおかしくないくらいの選手だったのだ。
ボクシングを始めて5、6ヶ月くらいの自分にかなう相手ではないとすぐに落ち込んでしまった。
そんな植木に花田は「おい。もう試合前で落ち込んでるのか?やってみないとわからんぜよ。なんでもあきらめたらいかんぜよ!やってみるぜよ!」
急に土佐弁になっているのかは不明だがそれに対し「できることはやりつくします!」と気合を植木は入れなおした。
本番当日。後楽園ホール。前の2試合が終わった後いよいよ植木の出番となった。
流れるアナウンス。「お待たせしました。第一回戦。本日3試合目は植木優対近藤忍の対戦であります。まずは赤コーナー近藤忍選手の入場です!」
場内が暗くなりBGMが流れる。プシューっと白い煙が拭いてスポットライトが暗くなり歓声の中近藤が出てくる。リングに入る近藤。声援が多い。
「続きまして青コーナー植木優選手のー入場です。」BGMがかかり周りが暗くなり颯爽と出てくる植木。それに着いてセコンンドに着くBジムの花田と斉藤。
花束を渡されいよいよ大事な初戦開始となり運命のゴングが鳴った!