ヤンデレ幼馴染来襲
全編を通すと、エグイシーンが多くなります。あしからず。R15あります
頭に響く鈍い痛みにうなされて気がつくと、オレはふん縛られていた。後ろに回された手首には無機質な肌触りの革ベルト、ズキズキする痛みが夢にまで混じってオレはよく眠れなかったという訳だ。
「何のつもりだ、美也?」
平然を通りこして冷然とオレを見下ろす犯人にオレは問う。近所に住んでいて、二歳年上の幼なじみの美也に。小学生からのばした黒髪は腰までとどき艶めいて、細い目の瞳は黒真珠のよう。しっとりしたその光は読み取りづらい。
何かと姉貴気取で世話を焼く以外は何を考えているかよく分からない奴だった。これだけ美人なのに浮いた話一つ聞かない。こうして勝手にオレのうちに入るのもしょっちゅう。今その光が不気味に輝いている。
「ねえ、勇、これ何?」
動けないオレの頬を冷たいペン軸でぺたぺた叩く。
「何って、玲奈が、昨日バレンタインのチョコといっしょにくれた万年筆だよ。医大に受かってこれでカルテとか書けるといいねって。……って、勝手に箱あけたのかよ!」
俺が声を荒げても美也はいささかも動じない。むしろ目が据わり身にまとう冷気がグンと下がった。
「フーン、勇は、私というものがありながら、どこぞの女からチョコとかもらったんだ」
「(゜Д゜)ハァ!?『私というもの』って何だよ!?つか、お前いったい何のつもりだよ!?」
「許せない……」
ヤバい。この状態になった美也は手がつけられない。こいつは、昔オレが遠い街で地元ヤンキーにからまれた時、金物屋から包丁ひったくって、五人を相手にして大暴れしたことがある女なのだ。あの時は散々だった。パトカーだって五台くらい来たし、腰を抜かしたヤンキーがパトカーにひかれたり、逃げ切るのもやっとだった。えらい目にあった。
今、まさにあのときの目だ。
「わ、分かった。な?オレにも悪いところがあったのかもしれない。今やっと気づいたよ。人間って愚かだ。医学が進歩したつって、死人も生きかえらせない。でも、いやだからこそ、殺人はよくないとも思うんだ」
「…………」
美也は形の良い眉を顰めてまだ納得がいかない様子だが、
「バレンタインに、私、勇に会えなかった。だから……プレゼント、あげたいの」
へ、プレゼント?なーんだ。そうだよな。オレは一安心した。それというのも、こいつのチョコをもらうのは小学四年生の頃からの恒例で、年中行事のようなものだったから、美也の怒る理由もわかったというものだ。今さら彼女ができたからって、少しなおざりだったよな。年を追うごとに気合の入ったのこしらえては、感想しつこく訊くし、よっぽど菓子作りの腕を磨きたいんだな。中学でて料理学校に入ったくらいだし、こいつにとって年に一回の腕試しなんだろ。今年ばかりシカトじゃ、そりゃ腹も立つか。
「チョコの代わりに私のプレゼント、受け取って欲しい」
「しょーがねえ。何だ?代わりって。高いものならかえって気を使うぞ」
「うん、売り物じゃない、私があげるの。私の大事なものを……」
美也はシャンプーの香りする黒髪を掴んでもじもじしながら、はにかんで見せる。
はて、何くれんだろ?食えるものだといいな。
「なんだよそれって?」
「私が……」
こいつ、ちょっとうつむいて、
「私が、 勇 を × し て あ げ る ♥」
へっと思う間もなく美也がのしかかって来た。身動きのできないオレを押し倒して馬乗りになる。
「な、てめえ、なにす……っ」
わめく口をすぐ塞がれる。唇にすごく柔らかい、良い匂いのするかたまりが押し当てられ、隙間からしなやかに蠢く異物が押入ってきた。
「プハァ、お前、玲奈ともまだなのに!?」
こいつ、舌まで入れてきやがった。抵抗しようにも、きっちりマウントポジションを取られている。大体「●してあげる」ってなんだよ!?女が男に言うセリフか!?
「どう?かまととぶった女のプレゼントなんて、もういらない。勇に必要ないし必要ないのは科学的な真理だし、官報にも載ってるし。つか、勇には相応しくない。私が、もっと素敵なのあげる」
オレの口を解放するや、弄んでいた、玲奈のくれた万年筆をポイッと部屋の隅に投げる。と、鞄から中身をさぐった。
「……!?」
「これで私が診察してあげるの。こっちのが、勇のずっと欲しがるものだよ♪」
ふさがったものが去っても、口がろくに聞けないオレ。あるものにオレの目は釘付けになっていた。待て、あれって何だ?なんかやたら、エロい。そしてグロい。確か、エロ本か何かで見たような。エネ?エネ、なんとか……。
「勇ごめんね。私は身も心も勇のものだけど、大事なものだけは最後の時まで取っときなさいって、お母さんに言われてるの」
いや、こいつには親としてもっと説教すべき他の何かがあるのではないか?こいつのおじさんおばさんはホントまともだし良い人なんだけど……。
「むぐっ!!」
口の中に突っ込まれる。安いプラスチック特有のしょっぱにがい味。美也の片手はいつのまにか動けないオレの胸板をそっと這っていた。跳ね除けようとするが、かえって関節を極められ組み敷かれてしまう。
「うわーん、やだやだ、やめろー!!」
ああ、こりゃ夢だな。うなされて、起きているつもりになっているんだ。その証拠に、痛くもなんともないや。オレは、思考することを放棄した。