神に従う者
神が玉座に座っている時であった。
どこからか歌声が聞こえてきた。
「ほう、このような歌声の者がいるとは」
神は玉座へその者を召し上げた。
「その名を」
「サックバットと」
「サックバットよ、先ほどの歌の意味を」
「神の御名は永久に広がり、消えゆくことはない。我が声は、その御名を讃え続けると」
「ならば、我が名を永久に讃えよ。すべからく、人類を導くべき」
「我が主のみ心のままに」
サックバットとは、今でいうトロンボーンのことである。
昔には、このように言っていたと伝わっている。
神のみ前でサックバットと名乗ったその人は、天使の一人ではなかった。
だが、神が天国へと連れてきた。
そのため、神の御名を永遠に讃えることにしたという。
またあるとき、同じように歌声が聞こえてきた。
「ほう、このような歌声の者がいるとは」
神は再び玉座へその者を召し上げた。
「その名を」
「アムドゥスキアスと」
「アムドゥスキアスよ、先ほどの歌の意味を」
「神の御名は汚された。常に広がることはない。我が声は、その御名を汚し続けると」
「なぜ、このような行いを」
「神といえどももろいもの。信仰心こそそのカギとなる。信仰心亡き時、人は真の力を試される。計画にのっとり、我が声で、人の信仰心を試すべきと」
「ならば行え。計画はすでに始動している」
アムドゥスキアスとは、ソロモン72柱の悪魔の1柱とされる存在で、音楽性をつかさどっている。
なぜ、そのような悪魔が天国にいるのか。
それは、神の計画に必要だからだ。
天国が神の領域であること、悪魔を統べているサタン、またその代理人であるルシファーが、それぞれ神の一部であった天使であったこと、さらに、人も神が作り出したものであるということから、すべては神のもとで行われるということはよくわかるだろう。
問題は、何を行うか、それがわからないということであろう。
そのことは、神のみ心のままに。