表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ枠『アイテムボックス』で異世界商売無双!〜追放された元社畜は、もふもふ銀狼と絶品グルメで経済を掌握する〜  作者: 黒崎隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/15

第12話「最後の契約と新しい地図」

 王宮との契約を終えてから数週間後。

 

 俺はベルムの町を見下ろす丘の上に立っていた。

 

 眼下に広がる町は、かつてのひなびた辺境の姿を留めていなかった。

 

 新しく整備された石畳の街道には、各地から集まった商隊の馬車が列をなし、活気あふれる掛け声が風に乗ってここまで聞こえてくる。

 

 サトウ商会の本拠地となった「木漏れ日亭」は、今や大陸全土の物流を司る巨大な拠点の中心となっていた。

 

「ケンイチさん、次の視察の準備が整いました。……何を、見ていらっしゃるんですか?」

 

 背後から、凛としたサリアの声が聞こえた。

 

 振り返ると、彼女は以前の給仕服ではなく、上質な生地で仕立てられた秘書用のドレスを身に纏い、柔らかな笑みを浮かべていた。

 

 彼女の手に持たれたバインダーには、各地の支店からの報告書がぎっしりと綴じられている。

 

「いや、少し昔のことを思い出していただけだ。……あの時は、この銀貨数枚から始まったんだよな」

 

 俺がポケットから、王宮から放り出された時に握らされていた古い革袋を取り出すと、サリアはくすくすと楽しそうに笑った。

 

「今のケンイチさんが持っているものは、銀貨だけじゃありません。この町の、およびこの国の信頼そのものです」

 

 彼女の言葉は、心地よい温かさを持って俺の胸に染み渡った。

 

 俺はこの数週間で、単なる独占ではなく、相互扶助をベースにした新しい経済圏を構築した。

 

 魔王軍の脅威は、俺が提供した兵站と、最新の防具によって撃退された。

 

 皮肉なことに、勇者が倒せなかった魔王を、商人の供給能力が追い払ったのだ。

 

 もはや、この世界に俺を縛るものはない。

 

「フェリル、お前はどう思う? 次はどこに行こうか」

 

 足元にいたフェリルが、顔を上げて空を仰いだ。

 

 その金色の瞳には、大陸のさらに先にある未知の領域が映っているようだった。

 

 俺はアイテムボックスを起動し、その中に広がる「新しい地図」を確認した。

 

 物流網をさらに広げ、世界中の特産品を繋ぎ、誰もが飢えることのない世界を作る。

 

 それは、現代社会でシステムの一部として磨り潰されていた俺が、ようやく見つけた「自分のための仕事」だった。

 

「サリア、君も来てくれるか? 世界の果てまで、おいしいものを探しに」

 

 俺が右手を差し出すと、サリアは少しだけ驚いたような顔をして、すぐに弾けるような笑顔でその手を握った。

 

「もちろんです。私の特製サンドイッチ、まだ世界の半分の人しか食べていませんもの」

 

 彼女の力強い答えに、俺は思わず声を上げて笑った。

 

 丘を吹き抜ける風が、二人の髪を優しく揺らす。

 

 太陽の光が降り注ぎ、新緑に彩られた大地を黄金色に染め上げていた。

 

 俺たちは歩き出した。

 

 背後にある栄光も、過去の怨恨も、すべてを心地よい余韻として残したまま。

 

 これから始まるのは、誰にも邪魔されない、俺たちだけの自由で贅沢な旅の続きだ。

 

 もふもふの温もりと、最高の料理、および信頼できる仲間と共に。

 

 俺の新しい「在庫管理」は、ここからまた新章へと突入する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ