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9章

「それでは、行ってきます」


 今日はミュースさんの領地に行く領民の見送りの日だ。


「なんかあったら手紙をくれればいいからな」


「わかりました。ありがとうございます。では、行ってきます」


 そう告げると彼らは馬車にのって領地を出た。




「ようこそミュース領へ!」


 ミュースの領地に着くとさっそく領主のミュースが出迎えてくれた。


「今日からよろしくお願いします。ミュースさん」


 そう言って頭を下げると、頭を上げてください、と言われた。顔を上げるとやけに笑っているミュースが目に見えた。


 いわれるがまま領地の中、領主邸に入ると、急に扉を閉められた。


 少し驚いて、ミュースを見ると先ほどよりも笑っていた。


 その笑い方に安心感を覚えると同時に先ほどまでには感じられなかった嫌悪感が芽生える。家族に脱出するように告げようとすると急に視界が暗転した。


 完全に意識が途絶える前、かすかに見えたのはミュースの手から電気のようなものがまとわりついている様子だった。


 次に目が覚めたのは牢屋の中だった。


「おや、起きたのか。今ミュースさまを呼んでくるから少し待ってろ」


 そういわれて周りを見渡すと、いくつかの空の牢獄が見えた。


「おうおう、起きたのか!」


 そういいながらドスドスと足音を響かせてミュースが入ってきた。


「どう…なってるん…ですか…?」


「君はね?騙されたんだよ。レイモンドに」


 信じられない。あのレイモンドさんがそんなことするわけがない。


「その証拠に今君は私に奴隷として売られようとしている」


「奴……隷………?」


 ふと気づくと周りに家族――妻や娘の姿がない。


「妻や娘はどうしたんだ!」


 そう怒鳴るとミュースはにやりと下卑た笑いを浮かべて低い声で「もう」と言った。


 その瞬間私は理性が壊れたのを自覚した。


 牢屋の檻を壊そうとして突進しようとするが――


「もう、やめてくださいよ。商品が傷つくと値段が落ちるんですから」


 ミュースが出したやけに弾力性の高い泡にはじかれた。


 それに包まれた私は強く床に押し付けられ、意識を失った。

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