7章
どうにかして領民をあちらに送りたい。
それがレイモンドの目下の課題であった。
「強制はしない、とは言ったが…」
どうしたらいいものか。
「兄さん、入っていい?」
「んもっちろんさッ!入り給え!」
そう言うと心配そうにしたフィナが入ってきた。
「兄さんなんか最近悩んでる?」
「そんなことないよ!心配しなくて大丈夫だ!」
「普段の兄さんだったら『ん?そんなわけないだろう?心配してくれるとは何て優しい妹なんだ!女神だ女神だ!』って騒ぐはずだよ」
むむぅ…うちの妹が名探偵すぎる……。
「気づかれたか…。でも大丈夫だ!」
「……じゃあちょっと助けてよ」
「どうしたんだ!何をどう助ければいい?」
「実はおなかがすいてて…」
「よしお菓子に取っておいたキャロイモチップスを贈呈しよう!」
「ありがとう兄さん!じゃあお礼に兄さんの悩み事も解決してあげるね」
「なっ……」
うちの妹が策士すぎるんだが。交換とは…。交換…。
「さすがうちの妹だ!僕の悩みも解決してしまうとは!」
「え?ええ?」
レイモンドが楽しそうなのを見て、フィナも思わず笑ってしまった。
「交換留学?」
「そうです。うちの領民が渋っているのはそちらの様子を知らないからじゃないかと思って」
「な…ぁる…ほど」
そこで思いついたのが交換留学ということだ。
「ぜひお願いできませんか?」
ミュースは少し逡巡した様子を見せたがやがて意を決したようにわかりました。と言った。
「皇帝、少しお願いが」
「どうかしたのか?そんなにお堅い感じなのは久しぶりじゃないか?」
「そう?じゃあ友達として。……、僕に少しの間だけでいいからあのシスコン領主の領地のうち、うちの領地と隣接している所を一部分くれ」
「その心は?」
「あいつを騙すために」
皇帝はすぐにOKを出した。