Episode 5 旅立ち
「もう......まぁいい、どうせこんな軍隊まで来やがった、これ以上に隠す意味も......ねぇんだろ!」
叫びと共に、着地したコロッサスは巨大の拳を振り下ろす
この高さから見ると、人も蟻同然だな
無意味な恐怖を撒き散らすつもりはない、一発で引導渡してやる!
両肩の外側に装備した盾のようなものが回し、元々盾の下っ端にいる砲口を地面へ照準
「内蔵式360mm二連装キャノン、放て!」
両肩共々二枚、計四枚のデカイ弾丸放たれた、瞬く間に着弾し、凄まじい爆風を巻き起こす
たっだ一回の斉射でまた数百人が葬った
「将はそこか!」
モニターのズームを数倍拡大し、ようやく陣列の最先端で将軍らしき人物を発見
四十歳ごろの中年男性、髪もひげも灰色に染め、端正で真面目な顔立ち、武を極めた者として満ち溢れる自信が黒い瞳を通して伝わる
こんな攻撃を受けてもなお慌てず、どうやら策を立てているようだ
前に聞いた対話からすると、周りにもう一人副将のような若者がいるはず......ほぉう
「生憎、そうな時間は与えないよ!」
一旦、前にいる大将に仕掛ける
向こうの策は大体予測できる、最悪の状況も考慮ずみ。だからこそ、敢えて無謀そうに見させて
両肩のキャノンが再び唸り、人の顔ほどデカイ四枚の弾丸が音速を超えて飛びかかる
鋭く速く、サッパリとした鉄の衝撃音が四回響く
神速の四連切り、弾丸とギリギリ接触し、特殊の角度から突きこむ、僅かの力を注ぎ込むだけで自分に影響を与えない周りまで弾をはじいた
剣で......弾いただとぉ?!
見事、いや、凄まじいテクニック。余の時代に生きたら、必ず大将軍として雇いたい強者
「見事な太刀筋。」マイクを最大限に、拍手の音さえ鳴らし出す「閣下はおよそ相当な剣術の達人、いや、その頂点に頂く強者であろう。」
「姫様のご褒美、ありがたく存じます。」威厳に満ちた声「拙者、姫様をお迎えに参りました、どうかお控えめに。」
「こそこそと魔を呼んで、軍を率いて人の住処を襲うのも、迎いの礼儀かな。」
「姫様を連れ帰すためなら、少々乱暴な行いも許してもらいましたっと公爵閣下か仰っております。。」
「ほお、公爵如きを諦めて、余の配下で働くつもりはないか。」
「これは、これは。陛下が帝国の再興を図るのも承知しておりますか、拙者は目の前の事しか分からない愚者ですから。」
自分のこと、何か知っているようだが、その上で敢えて拒んだ。あくまで命令で動かす、敵にも味方にもなるつもりはない...か。少々他の事情も聞き取らせてもらおう
「ここにいるのはただの田舎育ちの小娘、皇帝でも姫でもないよ。」
「どうやら姫様はまだご自分のこと知っておらんぬようだ。話しておいたら、こちらとあるべき場所へ帰ったらどうだ。」
「状況次第でなぁ。」
「閣下は月の女神の生まれ変わりであること、ご自覚しておいたか。いくらこんな辺境で生まれたとしても、その尊さは変わらない。」
ほぉ、女神の生まれ変わりとか、またくだらない神話
「生憎、何の神も信じないからね。」
「ならば、力尽くしても、連れ帰させてもらおう。」
数十倍の差にも恐れずに、単騎でこちらに突っ込む、それなりの実力があるで訳ね
出来ればこいつらを倒し切ったら家に戻し、別れを伝てまた旅に出る。でも今この状況、帰る心がバレたら逆に家族を傷つけてしまう。
この男、例え私がギルベルトとして戦っても、勝算は5割以下、あるいはより以下。筋肉バカ強いバケモノ皇帝じゃないのが悪かったなぁ!
【ごめんね、母さん、父さん。ルナティアは、今から......逃げる!】
どれだけに剣の腕が強いと、ただの馬に乗った以上、このコロッサスを追うことは到底不可能
確かにこのデカブツはバカ重くて遅くて飛べないし、30分動かす度に24時間の自動充電を待たせないといけない、だがそれも転生直前に見せたあの巨神と比べたこと
徹底的に逃げたいなら、空き地に歩くように山越えて走り出す、並みの人間が追えるスピードじゃない
今だ!
後ろに振り返って全速で駆け出し、何も考えずにとりあえず走れ!
「逃げられたか。」
大地震わす声は遥か彼方まで届く、だが姿はもうあっという間に山並みの向こうに見失った
「人質取ってくれたぞ?使わないか?」
前に姿が消えた副将は兵隊と共に、二人を挟んで来た
「使っても無意味であろう。先程の対話で確信した、あれはこんな手段で脅える方ではない。恐らくこうしても、人質諸共踏み潰されだ。」
手を振って、兵士に散開の命令をして、男はスミス夫婦の前に
「手下が多少乱暴な真似をしていたことにお詫び申し上げます。この度、我々はマノン公爵の命によって、ご令嬢を公爵領まで護衛させてもらいました予定ですか、少々不測の事態になってしまい、こちら側として、すぐに追いかけるので、どうかご安心を。それにもしご令嬢が家に帰ってきたら、これで連絡を。」
四角の小箱、実は通信用の魔道具「リンネコア」を二人の手に渡し、男は残りの軍を率いてルナティアが逃げた方向へと追いかけた
遠く離れて行く軍勢を見て、ナンナはリンネコアを森の奥へ投げ捨てて
「あの子、行ってしまったね、まだ何も言ってないのに。」
「もういいよ。こんな日が来ること、昔から分かっていたでしょう。」
震えているナンナの手を取って、軽く頭を振るいたスミス
二人はただ、遠く彼方を眺めていた