天地を割る光
昔、少し夢見たことがある。
レイトと共に旅をすることを。
私が魔法使いで彼が剣士。
彼が私を守り、私が彼をサポートする。
そして、、、すごい宝を見つける夢を。
二人で旅するなんて実現しないと分かっていたからこそ、夢に描いた。
夢物語。
そう・・・・夢物語なんだ・・・・・
ふと気が付くと、真っ暗闇の中に居た。
暗闇だ。イメージとしては石棺の中に居る感じ。
土だ。四方八方、上下左右。
土。
土砂に囲まれている。土砂に閉じ込められている。
瞬時に思いつくのは「洞窟が崩落した・・・」というワードだった。
だって、王国騎士団が何やら調査に来ていた理由がこの洞窟が崩落の恐れがあるから・・・・というものだったから。
・・・・暗闇。
暗闇に包まれている。
そして、ふと思う。
完全な暗闇のはずなのに、なぜ「土の中にいる」と分かる??
私の目にはうっすらと土が見えている。
それは、つまり、光がある、、、ということ。
どこから??
その淡い光の光源を探す・・・・と、そこには人影・・・・
一瞬、(バドラック??)と焦ったが、よくよく見ると、その人影は王国騎士の服装をしている・・・
・・・・・レイトだと分かった。
私はホッと胸をなでおろす。
さらに、よく見ると、その光はレイトのポケットの中から出ているようだった。
(何か光るものを持っていたんだ、レイトは)
そんなことを思って、、、、ふと
ふと、私は自分をを見る・・・・と、わたしは一糸まとわぬ、裸だった。
「え・・・?え???」
少しびっくりして、誰も見ていないというのに手で大切なところを隠す。
そして記憶をたどる・・・・。
そう、、、確か、バドラックに色々されて、私は服を脱がされたんだった。
最悪なところでレイトがやってきて・・・・
レイトが殺されてしまう・・・と思ったとき、
そう、私は叫んで、そしたら光に包まれて・・・・
そこから記憶が飛んで、ここに至る・・・・
この暗闇の閉じ込められた空間・・・・
やはり、思いつくのは「洞窟が崩落した・・・」というワード。
洞窟が崩落したけれど、私とレイトの周りだけ土砂に埋もれず助かったのかな??
そんな奇跡あるわけが無いと思ったが、そうでなければ説明が出来ない。
一糸まとわぬ私はそんな風に現在、私が置かれた状況を確認しつつ、とりあえずレイトに声を掛ける
「レイト・・・起きて、レイト…死んでないよね??」
声を掛けると、「んん、、、、」と、レイトはくぐもった声を出し、私は彼が生きていることを確認する。
ホッと肩を撫でおろし、ふと、見るとレイトが私の服を抱えているのを見る。
私はレイトがまだ気を失っているのを良いことに、その服をそそくさと着るのだった・・・・。
「リアが凄い魔法を使って辺り一面破壊しまくったんだ」
目覚めたレイトがここに至った事情を説明する。
それはにわかには信じがたいことだった。
私が無意識のうちにすごい魔法を使ったらしい。そして洞窟が崩落。バドラックはその場から逃げ、レイトは私を次々落ちてくる落石から救おうと、私を抱えて横穴に向かって走って・・・・
でも、崩落からは逃げられず・・・巨大な岩が降ってきて、もう駄目だと思ったとき、
再度私が私たちを守ったらしい。洞窟は完全に崩落したが、私の魔法によって、私とレイトの周囲の空間だけは
土砂に埋もれずにすんだらしい。まるで結界のように。
にわかには信じがたいが、彼の目が嘘を言っていないと言っているので、それは本当なんだろう。
(火事場の馬鹿力で私の秘められた能力が開花したのかな??)
とりあえずそんな風に決めつけておいて、レイトと色々話す。
なぜ、レイトが私を助けにこれたのか?私が何をされたのか?ジーンさんが助けてくれたこと。
今の状況。これからどうすれば良いのか・・・・。色々、色々。
色々話した結果、とりあえず、私たちは洞窟内に閉じ込められたということ。
そしてそこから逃げ出す算段が無い・・・・ということだった。
「ごめんね、私を助けに来たばっかりにこんなことになって」
「ん、、、、仕方ないよ。リア姉ちゃんが悪いわけじゃない」
「ん、、、でも、私が無鉄砲に飛び出して来なければ・・・」
閉じ込められた空間だ。
酸素が無くなれば死んでしまうだろうし、酸素があったとしても、このままでは死んでしまう。
私はこのまま死ぬのだろう、、、と脱出方法を探すのを完全に諦め、レイトに謝る。
巻き込んでしまったから・・・・。
レイトは怒っていないようだった。
「良いんだ、リア姉ちゃんを助けられたんだから」
「俺の方こそごめん。俺にもっと力があれば・・・・」
そんなことを話しながら、お互いに謝っても意味が無い、、、と分かると、互いに黙り込み、
場に沈黙が流れる・・・・。
私たちの命ももう残り僅かだ。
だったら・・・言いたいこと、やりたいことをしよう・・・・
「避けてごめんね。私、レイトの事が好きだよ。本当はレイトの恋人になりたかったし、結婚もしたかったんだ」
告白をする。
レイトも、
「俺も、、、本当はリア姉ちゃんが・・・一番好き。俺の方こそ家に縛られてごめん。もっと自分の気持ちに正直に生きるべきだった」
互いに告白をして、両想いだったことを確認して、キスをする。
この、絶望的な空間。死を目前にしても、、、、想いが伝わったのは嬉しかった。
「こんな機会が無かったら絶対レイトとキスしなかったな」
「うん、僕も」
互いに分かっていたのだ。両想いであっても、それが社会的に許されぬ愛だ・・・ということに。
でも、これからすぐ死んでしまうとしたら、もう怖いものは無い。
互いに想いを確認して、本能に身を任せて、身体を重ねる。
さっきまでの気持ち悪さを、レイトは消してくれた。
「死ぬのかな・・・私たち・・・・」
「うん・・・・そうかも・・・・」
静寂が訪れる。でも死は怖く無いと思った。
だって隣にレイトがいるんだから。想いが通じたんだから。
冒険者としての新しい凄い発見をする・・・という夢は叶わなかったが、
レイトと共に冒険をする、レイトと両想いになる、レイトと体を重ねる、、、という
夢は叶ったのだ。
・・・ふと、少し、眠くなってくる。目を閉じれば二度と目を開けることは無いだろう。死ぬ。
思えば今までの人生楽なことは無かった。
(少し・・・・疲れた・・・・・)
永遠の眠りにつこうとしたとき、、、、ふと、レイトのポケットの中の光源の正体を知りたくなった。
「ポケットの中身、何が入っているの?」
私が質問すると、レイトは、何かを思い出したように、「あっ」と声を出して、
慌ててその光源を取り出す。
それは淡く緑に光る不思議な石だった。
「これ、ジーンさんからリアに渡してくれって・・・・」
「なんか、、これが必要になるからって」
ジーンさんが??私に??
見ると、それは魔石のようだった。しかも高純度の・・・・。
こんな高純度の魔石は見たことがない。
それも、こんなに大きい・・・・・
ふと、さっきレイトから聞いた、「私が魔法を使った」からくりが分かった気がした。
多分、これだ。
この魔石の魔力を私は無意識に使って、魔法を放ったのだ。
と、言う事は・・・・・
これを使えば助かるかもしれない??
「レイト・・・いちかばちか、やってみる??」
助かる可能性はあるが、単純に天井の土砂が私たちを押しつぶす結果になるかもしれない。
生きる時間が少し減ってしまうかもしれない・・・・。
でも・・・・・試す価値はあると思った。
そんな私の言葉に、レイトは私に同意してくれた。
でも・・・・
「死ぬかもしれないんだったらもう一回してから・・・」
そんなことを私に言ってきた。
こんなときに何を言っているの??とも思ったが、私も同感だった。
もう一回致す。。。。。
そして、、、、
覚悟を決め、私はこの魔石に魔力を注ぎ込んだ・・・・・・
瞬間・・・・・・・・・
どおおおおおおおおおおお
天地が割れる音がして、、、
私とレイトは光に包まれた・・・・・
どおおおおおおおおおお
音がして、ジーンは目が覚めた。
音がする方を見ると、天を割く光が地上から出ている。
リアちゃんがやったようだ。
ジーンは寝ていたネコとカラスを叩き起こし、
その光の元へ向かった・・・・・・・