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リアの華麗なる冒険譚  作者: ゆうたく
1/9

冒険譚の始まり

「リア、見てごらん。世界はとてもとても広いんだよ」


それは初めて父の冒険に連れて行って貰ったときの事。

高い高い、「世界樹」と呼ばれる大きな木に父と共に登り、そこから地平線を見ていた。


「あの地平線の向こうの先の先にも世界は広がっているんだ」


子供心に、とても感動した・・・・のを、今でも覚えている。


私の進路はその時に決まったのだ。


「私も・・・・・冒険者になる!!!!」










「あの~私、冒険者になりたいんですけど・・・仕事ありませんか??」


「ん~~??お嬢ちゃん、ひ弱そうね・・・何が出来るの??」


「か、簡単な魔法なら使えます!あと、体術も少し習ってました!」


17歳の誕生日の今日、この日のために私は入念に準備をしてきた。

冒険者たるもの、強くなくてはいけない。

魔法は知り合いの魔法使いのおばあさんに習ってきたし、武術道場にも通って武術も少し

身に着けてきた。抜かりは無い。


「魔法と、、、体術ねえ・・・・」


受付のお姉さんは少し懐疑的な視線で私を値踏みする。

それは仕方ないと思った。私はまだ若干17歳の少女なのだ。

魔法も体術も一級品とは言えない。けど、、、、


私は待ちきれなかったのだ。


準備万端になるのを待っていたら私はおばあさんになってしまう。


習うより慣れよ。案ずるより産むがやすし。


ホラ、先人も言っている。


見切り発車こそ、人生を切り開くのだ!


何かを掴みたいのなら、チャレンジあるのみのみ!!


「う~~~~ん、、、無いわね。貴方に紹介出来そうな仕事は」


「そ、、、そんな、、、なんでもやります!私、結構ガッツだけはあるんです!」


受付のお姉さんのそっけない拒絶の返答に私は食い下がる。


「貴方ね、冒険者の仕事ってのは最低ランクから命がけなのよ?簡単な仕事ってのは無いの。貴方を顧客に紹介する私たちの責任もあるわ。仕事が成功出来なさそうなあなたに紹介する仕事はありません。」


「死に急ぐことはないわ、お嬢ちゃん。鍛え直してからまたいらっしゃい」


取り付く島も無いとはこと事だと思った。


・・・と、その時。


「お嬢ちゃん、良かったら俺たちと組むかい?今丁度、初心者サポートをしているんだ」


と、救いの声が掛かった。








バシュ!!


私は得意の炎の呪文で魔犬を焼き討ちにする。


「どんなもんよ!」


鼻息を鳴らして私はバドラックさんとジーンさんの方をちらりと見る。


しかし・・・・・


うがおおおおおおおおおお


「きゃああああ」


まだ完全には倒せていなかった。

魔犬はその身に炎を纏いながら私に襲い掛かってきた。


そんな・・・・


私は自分の未熟さにようやく気が付いた。

気が付いたときにはもう遅い。



冒険者のミスは直接、死を意味する。


私は死ぬ。


華麗なる冒険譚の第1ページで私は死ぬ・・・・


私は死を覚悟する・・・


「早かったな・・・こんなに早く終わるなんて・・・・・」


魔犬の牙が私の柔らかい顔を噛みつけ・・・・・・


ようとしたとき、


その魔犬の顔が二つに割れた。


どしゃああああああ

魔犬の体液、内臓が私にふりそそぐ


「・・・・!!!!!」


臭いし気持ち悪い、最悪!


だけど・・・・・助かった!!!


それは・・・


「大丈夫かい?リアちゃん」


それはバドラックさんの魔矢によるものだった。


「あ、ありがとうございます、バドラックさん・・・」


「良いってことよ!油断はダメだぜ、リアちゃん!」


「は、、はい!!」


私がそうバドラックさんと受け答えをしていると、ジーンさんはそれを見てぽつりと呟く。


「さて、そろそろ良いかね??」


そう言って持っている杖を高く振り上げると、、、、


どががががががががが


天から無数の雷が降り注ぎ、魔犬はその雷光によって全て消滅していた・・・・・・


(凄い・・・・・・これがプロの冒険者の実力・・・・)


私とはその実力に天と地の差があると、、、、痛感した、、、、、












「落ち込む必要は無いんだぜ、リアちゃん」


顔をタオルで拭っている私にバドラックさんが声を掛ける。


「最初はみんな同じさ。負けながら実力をつけるんだよ」


優しい言葉に少し涙ぐむ。


ちらりとジーンさんを見ると目を瞑ってそれをただ聞いているようだった。


「でも、リアちゃんは正解だぜ」


「え??」


「冒険者たるもの、未開の地に飛び込めないような奴はそもそもの資質が無いのさ」


「実力をつけてから冒険者になろう、、、なんて奴は冒険者にはなれないのさ」


そう言うバドラックさん。


なるほど・・・・そういうものなのだろうか・・・。でも・・・・


「でも、私のように無鉄砲すぎてもダメですよね・・・・。」


さっきの戦いで自分の実力の無さを痛感した私はその優しい言葉になかなか同意は出来なかった。


「でも、リアちゃんは今生きているだろう?」


「でも、それはバドラックさんたちに助けられたから・・・・」


「それも全てがリアちゃんの実力さ。俺たちに会った運も、その助けを借りるという選択をしたリアちゃんの決断も、今までのリアちゃんの努力も、全てがあったからこそ、今リアちゃんは生き残っている。


良い結果が得られた・・・というのはそれだけの実力があったのさ。


でも、もちろんそれで自分の力だけだと過信するのもダメだがな。


良いところは良い、課題点は課題点、、、として、しっかり自分で見極めることが大事なのさ」


バドラックさんの言葉は身に染み入る。


確かにそうかもしれない。


自分を責めても何もならない。自分の実力の無さを悲観するより、今生きているのだから、「これから何をするのか??」が一番大事なんだろう。落ち込む暇など無いのだ。


「つまらないご高説は終わったかい??」

と、ジーンさんが本当に退屈なものを聞いていた、、、と言わんばかりの顔で私とバドラックさんの会話を中断させる。


「そろそろ寝るよ。明日には「風の洞窟」に入るんだ。夜更かしは成功率の低下に繋がるんだからね」


その鶴の一声で私たちは眠りについた。



こうして、私の華麗なる冒険譚の第一ページ目が終わった。


そして、明日は第2ページ目が始まる・・・・。


(明日は「風の洞窟」に行って、「月の草」を手に入れるんだ・・・・・)


私は今まで体験したことの無い、未知なる世界に触れる、その興奮に胸躍らせながら、、、眠りについた・・・・・



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