行ってきます。
気づいたら俺は周りを取り囲まれていた。
一命を取り留めたのかなと思いつつ状況を確認する。
周りを取り囲まれているのに、自然と焦りや不安はない。
それも、周りの人から発せられている、神々しさのせいかな。
うーん 見渡しても一面雲の上のようだった。
いや、本当に雲の上だった。
ふかふかなのに頑丈な足場。上を見上げると真っ青な空。 なんて綺麗なんだ。
「おい」
人がせっかく感動していると言うのに、邪魔をするなんてなんて奴らだ。
と思ったが、ようやく自分の状況をよく考える。
俺を取り囲んでいるのは5人。
真ん中にこの中で1番神々しい、白髪で優しそうなおじいさん。
右隣に金髪で若くてイケイケな感じの青年。
左隣に銀髪で舞妓さんのような立ち姿のおばあさん。
そしてそれぞれ金髪と銀髪の隣にはクリーム色の髪とオレンジ色の髪のまだ3〜5歳のような子供。
どちらも女の子だ。
今喋ったのは金髪だな。
「人のことを見た目で判断すんなよ」
え? 今俺喋ったっけ?
なぜか金髪が喋り出して、暴れている。 心の声でも見透かされているようだ。
「その通り」
金髪を抑えている白髪じいさんがしゃべる。
あれ?どういうこと?
「それはね、んー まず、君は死んだ。」
普段はここで驚くはずだが、こんな神々しい人達に囲まれたら現世ではないと誰でも悟るだろう。
俺はすんなりと受け入れた。
「そこで君の記憶をミルティーに見てもらった。」
と言いながら白髪じいさんがクリーム色の髪の子供を指差した。
ほう。あの子がミルティーか。
「すると君は異世界転生希望ということが分かった。」
えっ!じゃあ異世界に転生させてくれるのですか?
「うんそんなことは簡単だ。まあ、『人助け』という条件はあったが君はやすやすと乗り越えていたし。」
あ、そうなんですか。 そんな簡単な条件で。
「簡単なんかじゃない。その助けた人がそのあと犯罪に手を染めたら元も子もないだろ。だから、その助けた人がその後、どんなことを齎してくれるのかをダーティーに見てもらう。」
と言いながら白髪じいさんは、オレンジ色の子供に目を向ける。
「助けた人が、あなたの前世に対して幸福を齎してくれたら条件が達成できる。そんな方法で色々な人の願いを叶えてきたのよ。」
初めて銀髪ばあさんの声を聞いた。
ということは、異世界にもこの世界からの転生者がいるということですか?
「うーんいるかもだけど、会えるかどうかはね。」
ふーんそうか。 会ってみたいなぁ。
「もういいだろ。 さっさと行けよ。」
金髪にいさんが苛立ったように言ってきた。
こいつのことは好きにはなれないな。
『なんだとッ』という声が聞こえたが無視しよう。
ではお願いします。
白髪じいさんが微笑んだ。
目の前がぼやけていく。
意識が途切れていく。
あぁ死んだ時のような感じだ。
「ああそういえば君の両親は置いて行ってしまった君のために、来世も一緒にいたいって言ってたよ」
最後にそんな声がした。
異世界にワクワクしながら俺は意識を手放した。