セカイノユクエ
何だコレ……」
レイドとアンナさんの後に続いて外に出た俺は、景色を見て驚いた。
見渡す限りの荒野。
「えっと、アンナさん、これは一体」
そこまで言った俺に、アンナさんはマントを差し出した。
「これ、被ると光学迷彩になるように設計してあるから、被って」
「え? なんのために?」
俺が問うと、アンナさんは小さい呼吸の後。
「シェルターに居る人間約200人、ファイトドール、ドール、あわせて総勢300の存続に関わる」
「……」
正直混乱したままだった俺だが、行動一つで全てが変わる。俺は直感でそう感じて、おとなしくマントを羽織った。
「人工衛星も95%はキルロイドの管轄下なんだよ、5%はアンナが何とか奪い取ったんだがな」
これまでこちらを見ているだけだったレイドがそう言った。
「え? それって」
「アンナの頭脳は俺らより、機械よりもはるかに上だ」
そこだけが疑問ではなかったが、俺は頷いて、ボロボロの車に乗った。
「ここからだと第五支部が近い……リトもいるし、丁度いいね」
GPSらしきものを見たアンナさんがそう言う。
「……そうだったな、リトも功績があった、あいつも居なければ衛星奪取は難しかっただろう」
そう言って、レイドは車をゆっくりと走らせる。
「あの……」
しばらく乗っていた俺は、小さくアンナさんに問いかけた。
「俺は本当に何もわからないんです。だから、この世界の状態が知りたい」
俺がそう言うと、アンナさんはにっと笑った後。
「人間人口30万、核による環境汚染、草一つ生えない大地」
「30万……? 確か、70億は居た筈では?」
「70億? なるほど」
俺の問いを聞いたアンナさんはポンと手を叩いた。
「人口70億、それが君がいた頃の時代の背景だね」
そう言われて、俺はハッとした。何故、70億という数字が自分から出たのだろうと。
「あ、レイド、かなり距離が離れたし、自爆装置作動よろしく~」
俺の考えをよそに、また物騒なことを言いだした。
「あいよ」
レイドは胸元から取り出した装置のボタンを押す。
ドン! と大きな音が後ろから聞こえた。
「これでここいらのキルロイドはあそこに釘付け、まあ正面通られたら不味いんだけど」
アンナさんはそう言って、後ろを見た。
あとにつづいて、俺も後ろを見る。
小さなきのこ雲が、空に上がっていた。
「あー、事後連絡になっちゃったけど、これで君も『帰る場所』が消えたね」
「……」
俺は黙り込む。
「あ、機嫌を損ねた。よく出来た感情回路だね」
そう言って、アンナさんはクスクス笑う。
「だから、俺は人間です」
「まぁ、今はそういう事にしておこうか、現実を見れば、嫌でも認めざる負えないしね」
そうして、俺たちは目的地、第五支部に着いた。