表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

妻の務め

ルーチェに第二王妃のクリスタルからお茶会の招待状が届いた。

新たに王妃仲間に加わったルーチェへのご機嫌伺いといったところなのだろう。


ここのところルーチェはエリザベスと話し合いをしようと度々、先ぶれを送っていたが、いつも都合がつかないといって断られ続けていた。

そんな折の招待状である。ルーチェはすぐに出席の返事をしたためた。



クリスタルの部屋は、ルーチェの部屋がある階の別棟にあった。東の棟が第二王妃の居住区になっているらしい。

部屋に入ると落ち着いた内装になっていて、クリスタルの穏やかな人柄が伺えた。


「いらっしゃいませ、ルーチェ様。よくきてくださいました」


肉感的なボディを持つクリスタルだが、今日はおとなしめの色合いのペールピンクのドレスをまとっている。


「お招きありがとうございます。ご機嫌いかがですか、クリスタル様」

「ありがとう、体調はすこぶるよろしいのよ。これもあなたのおかげかしら」

「は?」


お茶の用意をしていたベテランの侍女たちが、クリスタルの合図で部屋から下がっていった。二人きりになった部屋で、クリスタルは屈託なくルーチェに話しかけた。


「ルーチェ様とは春先の夜会以来ですわね」

「ええ、そうですね。弟のスティーブと一緒にご挨拶をさせていただきました」

「ホホホ、弟(ぎみ)は顔を赤められて、たいそう可愛らしいご様子でしたわ」


あの夜会でクリスタルが着ていたのは胸や腰を強調した身体の線が出るタイプの派手なドレスだった。

スティーブにしても目のやり場に困ったのだろう。

ルーチェも母もああいうドレスは似合わないので着たことがない。弟としても普段、見慣れていないドレスだったので、余計にうろたえてしてしまったようだ。


「成人してすぐの夜会だったものですから、失礼がありましたら申し訳ありません」


ルーチェが決まり文句でお詫びを言うと、クリスタルは「成人ね……」と言いながらルーチェの方を伺ってきた。

さっきから何なんだろう? 女の駆け引きのようなものはルーチェはどうも苦手だ。

言いたいことがあるなら、ハッキリ言えばいいのに。


ルーチェの顔つきから心情を読み取ったのか、クリスタルは腹を割って話をすることにしたようだ。


「あの……ね、ルーチェ様は、私が子だくさんの貧乏伯爵家にいたことはご存知でしょう?」

「はぁ」

「なかなか良いご縁もなかったので、陛下が第二王妃にと望んでくださったことには、とても感謝してるんですの」

「そうですか」

「そこでね、どうやら陛下は困っておられるようなので、ご恩返しに一肌脱ぐことにいたしました」

「??」

「ルーチェ様、身体の関係という言葉はご存知?」


「はぃ?」



クリスタルの始めた説明は微に入り細に入り、非常に具体的なものだった。妻の務めとしてのテクニックやら、陛下のお好きな閨でのあれこれなど……

もう、これ以上話し続けるのはやめてほしい。

今度、陛下のあのすました顔を見た時に、思い出してしまいそうだ。


真っ赤な顔をしてお茶会から帰ってきたルーチェを侍女たちは心配して、ベッドに入って横になった方がいいと言ってきたが、ベッドという言葉を聞いただけでダメだった。


あの嫁いできてからの三日間を振り返ると、自分の態度のひどさに昇天しそうになる。

あれから陛下のお渡りがないのも無理のないことかもしれない。


けれど現在の王政を続けたいのなら、ルーチェを手籠めにしてでも(はら)ませるべきだ。

レクスはそこまでのことを望んでない?

それともオディウム公爵夫人の権力欲に、あまり危機感を感じていないのだろうか?



その日からルーチェは悩み続けていたのだが、ある日、レクスが久しぶりにルーチェの部屋にやってきた。

しかしクリスタルが言ったようなことをルーチェには求めていないようで、カードゲームをしてちょっと雑談すると、すぐに帰っていく。

そんなことを何回か繰り返されたので、ルーチェが思い切ってレクスに閨の行為のことを尋ねると「お前はそんなことを心配しなくていいんだよ」と優しく返された。


陛下の真意がわからない。


そんな日々が一月ふた月と経っていく間に、おめでたい知らせがもたらされた。

第二王妃のクリスタルが懐妊したのだ。


陛下や国の人たちにとってはとてもいいニュースだろう。

けれどルーチェはエリザベスのことを心配していた。


あの子、絶対に泣いてると思う。


聡明で誇り高いエリザベスは、顔で笑って心で泣いているに違いない。

彼女は昔からプライドが高くて、人に弱みを見せるのが嫌いな子だった。そんなエリザベスだが、ルーチェと一緒にいると肩ひじ張らないで、ありのままの自分でいられるとよく言っていた。

ルーチェにしても、女特有のベタベタした関係を求めてこないエリザベスはとても付き合いやすい友達だった。

親同士の仲が良かったので、何度か一緒に遊んでいるうちに親友と言える関係になっていった。



今なら、エリザベスもルーチェと話をするかもしれない。

ルーチェとしてはそんなにショックではないのだが、妊娠できなかった王妃同士、お互いの傷をなめ合いましょうという態度で接すれば、エリザベスも聞く耳を持ってくれそうな気がする。


第一王妃にお茶会の招待状を送ったら、やっと了承の返事が返ってきた。


やった!


いざ出陣。

ここが、王妃が一致団結して敵に対抗する、勝負どころになるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ようやく夜の営みについて理解したけど時既に遅しw 陛下からは珍獣枠としてすでに認定されていそうです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ