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第80話 怪しげな五か所#4

「うぁあ......うが、あ.......ああぁ!」


「いや~、これなんてゾンビ?」


 俺の目の前から迫りくるはまるで生気を感じさせないような目に虚ろな表情をした患者たち。

 まるで海外のゾンビ映画に出てきそうに若干足を引き吊りながら歩く姿はもはやそうとしか感じられない。

 しかし、その患者の中から確かに感じるファンタズマの気配。無視して、すぐにあるだろうゲートを壊しに行くのもいいのだが、やはり放ってはおけないだろう。


 俺は体を集中強化させるとそのまま勢いよく一人の患者に接近した。そして、素早く懐に潜り込むと右手を掌底を腹部に当てる。

 これは単純に取り憑いたファンタズマを引き離す行為で、むやみに攻撃してるわけじゃない。本当はもっと簡単に祓う方法があるのだが、俺はこれが一番向いてるので直接やっているだけだ。

 そしてその瞬間、患者の背中から先ほど見たような小鬼が飛び出してきた。


「ギャギャッ!」


「逃がさねぇよ!」


 患者が床に倒れないように支えて、ゆっくり寝かすと逃げ出した小鬼に素早く接近して背後から蹴り飛ばす。

 それだけで下級は落ちるのだから楽なものだ。まあ、自然(オリジン)が高火力だからという理由もあるが。

 

 俺はすぐに周囲にマギを飛ばして気配を探る。すると、多くいたファンタズマがバラバラの方向に逃げていくのがわかった。

 何とも面倒なことを。仕方ない。追える奴は追って、先にゲートを破壊しに行くか。


 そして、俺はこの階で仕留めれるだけのファンタズマを仕留めるとすぐに上の階へと昇っていく。ここにも気配がするが、強い気配はさらに上だ。

 なので、先ほどと同じように、だけど今度はバラバラに逃げられないように素早く排除しながら、再び気配を探る。


「マジか、こっちの棟じゃないのかよ」


 気配が流れてきたのは渡り廊下を渡ったもう一つの棟の方であった。だから、急いで渡り廊下を渡って、関係者以外立ち入り禁止の階段を使ってさらに上の階へと昇っていく。

 そして、二階ほど上がったところでモワッと感じるぐらいの強い気配を感じた。それは駅で感じたゲートよりも明らかに強い。


 扉を出て、気配を探って走り出す。すると、ある部屋からドバッと流れているのを見つけたので、その部屋の扉を開けて侵入した。


「ナニモノダ?」


「うわぁ.......」


 結構広めな部屋でまるでとぐろを巻いた蛇のような大ムカデが歯をカチカチ、足をジャラジャラさせながら見下ろしてきた。

 おもくそに俺のSAN値が下がっていくのがわかる。ハッキリ言わなくても気持ち悪い。特にうねうね動く足がもうそれは言い表しがたいほどに。

 正直言って、これを素手で殴って倒すなんてことをしたくないのだが、ここにゲートがあるような気配を感じるのでもはや背に腹は変えなれないか。


「俺はお前を倒しに来た。もうここで悪さをするのはやめてもらおうか」


「ホウ、ヤハリタダノ人間デハナカッタカ。ナラバ話ガ早イ。オ前モアノ方ノ糧トナレ!」


 大ムカデはまるで発射された大砲のように鋭い顎を携えた頭を俺に向かって飛ばしてきた。

 その軌道を呼んで素早く避けて、ふとその場所を見てみると床が大きく窪んでいた。つまり、一撃はかなりの重さがあると。

 しかし、素早さは圧倒的にこっちの方が上。


 体勢を立て直すと素早く床を蹴って頭に向かって走り出す。そして、勢いをそのままに頭を蹴り飛ばした。

 その瞬間、足をカサカサと動かしながら頭は何かの薬品が入った棚に突っ込んでいく。さらに、とぐろを巻いていた隙間からゲートらしき亜空間が見えた。

 なるほど。コイツがあえてとぐろを巻いたまま攻撃してきたのはゲートを守るためか。ならば、どっちにしろ先に倒さないとゲートは壊せないのか。


「そうと決まれば、油断せずに全力で行く!」


 俺は体中の紫電の火力を上げる。先ほどまでバチッと僅かになっていた音はバチバチッと勢いよく爆ぜる音に変わった。

 それはつまり、俺の電気によって刺激された筋力のパラメーターも上がったということなので―――――


「そこをどけ!」


「ガッ!」


 とぐろに向かって接近すると大きく振りかぶった拳を叩きつけた。すると、大ムカデの体は大きく弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 あ、やべ。窓ガラスとかわれて吹き飛んじまった。これは駆け付けられる前にサッサと倒さないとな。こう考えるとなんか悪いことしてる気分になってくるな。


 多少、なんともいえない気持ちを抱えつつ、隙間から見えるゲートに向かって思いっきり飛び蹴りしていく。

 すると、俺のかかとが駅のゲートより少し大きめのゲートに直撃して破壊。見えていた亜空間が元の形に収束していく。

 よし、これでゲートは壊した。


「フザケルナ!」


「ぐっ!」


 そう少しの安堵がいけなかったのか、頭をハンマーのように振り回す大ムカデはその勢いで俺に突っ込んできた。

 ゲートを壊した反動で空中に躍り出ていた俺はそのままその攻撃をモロに受けた。

 一先ず両腕をガードして受け止めはしたが、吹き飛ばされた勢いで壁に叩きつけられ、その壁もろとも隣の部屋で転がっていく。

 くっそ、腕が痛てぇ......反応が遅れてたら確実に内臓を直撃していたな。それにしても、あいつの頭から何かにおってきたんだが、この感じ.......アルコール?


「許サン!」


「なりふり構わずかよ!」


 俺が態勢を立て直す大ムカデは横の壁にとぐろを巻いてスタンバっていた。その姿はまるで縮めたバネのようであった。

 そして、その縮みを一気に解放するように大ムカデは鋭い頭突きを繰り出してきた。

 それを間一髪で躱す。風圧で多少吹き飛ばされたが、特にダメージを受けることもなかった。


 その一方で、大ムカデは頭をさらに隣の壁に貫通させて、その穴に開いた部屋に入っていくように体を回収していく。

 しかし、いい加減そうばっかさせるわけにはいかない。

 大ムカデが引き戻しているお尻の方に長い二つの尻尾のようなものが生えていたので、それを掴んで動きを阻止する。

 そんでこれ以上ここを壊すわけにはいかないから、この状態から広い場所に行きたいわけだが......!


「潰レロ!」


「ふんぬっ!」


 俺が大ムカデの動きを阻止していると通り抜けている穴の横から大ムカデの頭が勢いよく飛び出してきた。

 咄嗟にその頭の顎を掴んで踏ん張るも先ほどまでの体勢が後ろ向きに体重をかけていたせいか、足の踏ん張りが弱い。

 そしてそのまま、背後の壁に叩きつけられて貫通していく。あぁ、痛てぇな!


「ふん、どりゃああああぁぁぁぁ!」


「ウガッ!?」


 俺は前傾姿勢で無理やり足の踏ん張りを利かせるとそのまま横に向かって集中強化させた足で跳躍、窓の外へと飛び出していく。

 そして、頭に電流をバチッと流して真下に放り投げる。


「アガ、アアアアァァァァ!」


 その瞬間、大ムカデの頭は勢いよく燃え始めた。それは恐らく薬品棚に頭を突っ込んだ時にアルコールが頭についたのだろう。それを俺は電気で引火させたのだ。

 そして、重さで真下に落下していく。その一方で俺は大ムカデを蹴って壁の一部に掴まっていて見下ろしている。


 大ムカデは頭から地面に落ちた。6階から落ちたのだ無事では済まない。それに自分の体でさらに頭は押しつぶされているはずだ。

 さらに、俺も押しつぶすからな!


 俺は一度やってみたかった壁垂直走りをしながら大ムカデに接近。その勢いのまま自重でスタンプしていく。

 その瞬間、大ムカデの気配は急速に小さくなっていった。どうやら倒したらしい。そのことに一先ずため息を吐く。


「それにしても.......どうしよう、これ。所長に怒られそうだな」


 しかし、それ以上に疲れたため息を一部壊れた病院を見ながら吐いた。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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