表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/186

第79話 怪しげな五か所#4

「学校も神社も異常なしっと」


 時刻は深夜0時を過ぎたあたり。当然ながら、人気はほとんどなく、大通りでも僅かに車が通るばかり。

 そんな時刻に外出した経験がない俺は仕事のためでありながらも少しワクワクしていた。

 まあ、そんなのんきなことを言っている事態でもないのだが、それでも余裕が少しはあると考えよう。


 そして、人気も街明りも少ない、賑やかさも打って変わって無くなった大通りを歩いていく。

 次に向かっているのは駅だ。ここに来る前に学校も神社も調べたが、特にファンタズマらしき気配はなかった。

 どうしてここで違法ホルダーの可能性を潰したのかというと、それは二人からゲートが作れるのはファンタズマだけだと聞いていたからだ。


 そんなわけで、一先ず近場にあり、ゲートを見つけた駅から寄ってみる。


 駅前に辿り着くと当然ながら人はいない。とっくに終電は終わっている時間だ。来ても意味がないだろう。

 そんな当たり前の閑散を見せる駅の中に俺は懐中電灯を照らしながら進んでいく。

 少しだけホラゲーの主人公になったようでドキドキするな。まあ、大きな違いはまだ対抗手段があるかぐらいだけど。もっともそれは自分でも対処できる相手に限る。


 周囲を警戒するようにマギを周囲に拡散しながら改札のある場所からさらに下の階段を下っていく。

 目指している場所は昼間にゲートがあった駅地下だ。そこに気配があったなら、一応確かめておくだろう。

 ......と思ったが、鉄柵のようなシャッターが下りていてそれ以上進めなくなっていた。まあ、店があるから防犯とかの意味で設けたのだろう。

 とはいえ、今の俺にとっては不便でしかない。しかし、壊すわけにもいかない。う~む、どうしようか。


「はあ、仕方ない。ここは気配だけの調査にするか」


 考えに考え抜いた結果、俺は自身のマギを集中的に周囲を拡散させる。

 コントロールが弱いのか、探る範囲が大きくなるほど細かい意識がおろそかになり、より集中するためにその場で突っ立ってなければならない。

 しかしまあ、これは先生に教えてもらったものなのだが、出来るようになっていて本当に良かったと思う。

 俺がアストラルを使えるようになった当初は体に纏った紫電による僅かな差異で敵の居場所を特定していたからな。ほぼゼロ距離といっても過言ではなかった。


「反応なし。本当はもう少し奥に行ってみたい気もするが、他の二つもかなり気になるしな」


 踵を返すとその駅を後にする。もし他に何もなかったら、この駅が確定となる。そのつもりでいこう。

 そして、次に向かってきたのは病院だ。

 病院は確か昼間に看護師から「夜中に徘徊する人が多くなってる」ってことを聞いてたんだよな。そして、そのまま徘徊して未だ戻って来てない人もいるという。


 当然ながら、俺はここが本命であると思っている。

 ファンタズマは基本夜中に活発になるらしい。もちろん、例外も存在するらしいが、そんな夜中で徘徊する人が増えているのなら、まず間違いなくファンタズマによる影響を受けていると考えていいだろう。

 

 一先ず病院の外観が見える位置まで移動してきた。するとその近くで、不自然な歩き方をする人を見つけた。

 入院患者のような恰好をしているその人は映画に出てくるゾンビのようなややつんのめったすり足で歩いており、腕も頭も脱力したように下を向いている。

 そして、その患者はその状態のまま階段を下りようとし――――――踏み外した。


「危ない!」


 すぐさま体に紫電を纏わせると前のめりに倒れ始めている患者に向かって走る。

 素早く地面を蹴って、階段の下から跳躍するとその勢いのまま患者を抱え、最上段へと昇った。


「グギャ!」


「!」


 俺が患者を救えたことに一息つこうとした瞬間、甲高くはありながら喉を潰したような鳴き声がすぐ近くから聞こえ、そして患者の背中から何かが飛び出した。

 街灯もない暗い場所であったが、夏の夜の明るさと進化した体の視力でその姿をハッキリと捉えた。


「ファンタズマ!」


 小鬼のようなファンタズマは俺から逃げるように走っていく。しかし、その走り方はややビクついている。

 俺は患者をその場で寝かせると素早く移動し、目の前を走るファンタズマに接近していく。そして、集中強化した足で後頭部から蹴り飛ばした。

 それによって、ファンタズマは体を地面にバウンドさせていくと止まり、空気に溶けるように消え始めた。


 それにしても、まさかファンタズマが人に取り憑いてとは......。

 知らなかっただけでこういうこともあるのか。ということは、俺が助けに行かなければあの患者は大けがを負っていたということ?

 そうならば、未だ戻ってこない患者は()()()()()()のかもしれない。その可能性の方が高い。


 そして、あのファンタズマが俺から逃げたのは、恐らく俺の纏っていた紫電に干渉したからであろう。

 あの時、患者は意識がほとんどない状態であった。だから、患者事態にその電気に対する抵抗反応を見せなかった。

 その代わりに受けたのが、操っていたファンタズマ。今回はたまたまわかったが、次からはもう少し詳しくファンタズマの生態について知らなきゃダメだな。


「にしても、夜に徘徊する人が多くなっている原因がファンタズマにあるのなら、そのファンタズマがここには多くいるってことだよな。基本群れないと聞いたファンタズマがこうもいるとなると恐らくゲートがあってもおかしくないよな」


 俺は病院の横側に向かうと身体能力を活かして壁を上っていく。そして、窓を調べていく。

 すると、先ほどの患者の病室であろうか。二階の一部の窓が開いていた。中に入って病室に置いてあるものを色々確認すると名前がわかった。

 そこで一旦戻って、未だ気絶している患者の名前を確認していく......がわからなかった。なので、仕方なくその空いている病室がそうだと信じて、抱えながら再び上っていく。


 患者をベッドに寝かすと月明かりを背にしながら病院の廊下に出ていく。

 病院の廊下は暗くて不気味だ。ゲーム実況とかで一人称視点の病院を題材にしたホラゲーとか見たことあるが、やっぱりリアルの方が数倍怖いな。

 しかし、被害者が出ている以上は放って置くことなんてできない。


 懐中電灯で照らし、マギで周囲の気配を探りながら歩き始める。するとすぐに、俺の両サイドから川が流れているかのような太い気配が流れ込んでくる。

 両サイドから感じるってことはどこかで分岐しているということで、大体分岐するのは階段を下りた後ぐらい......それじゃあ、もっと上の階か?


「少なくともここよりも上の階であることは確かだな」


 移動しなければいけない事実にため息を吐きながらも、やや縮小している肝に喝を入れて歩き始める。

 恐らく夜勤の看護師とか警備員とかが巡回しているかもしれないので、一応気配を殺して慎重に進んでいく。


 俺の向かう場所は当然ながらゲートのある場所だ。しかし、恐らくあるだろうゲートから流れる気配に逆らって進むのは本当に川の流れに逆らって進んでいるような感じがして進みにくい。

 昼間もそうだが、そう思っているせいでそう感じてしまっているのか、はたまた本当に感じるのか。

 そのせいか、特に風が強く吹いているわけでもないのに、手を頭を庇うように掲げて進んでいるのが自分でもとてもおかしく思えてくる。


 そして、その調子で三階へと昇っていく。すると、そこには廊下を徘徊している何人もの患者が。

 ......なんだろ。バイ〇ハザードかなにかかな?


 そう思ってしまったのがいけなかったのか、壁に懐中電灯が軽くぶつかる音が静かに広がった。

 すると、徘徊していた患者がその場に止まり一斉にギロッと俺を見る。


「ひぇっ」


 思わず変な声が漏れた。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ