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第78話 怪しげな五か所#3

 俺が見つけた穴は端的に言えば、壁にある穴ではなかった。強いて言うなら、空間としか言いようがない。

 その穴の大きさは丁度アリ一匹が通り抜けられるほどの大きさで、スマホのライトで照らして見てみるがその中は暗くてわからない。

 光が吸い込まれている感じで、亜空間が広がっている......って表現が正しいかもしれない。亜空間とか知らんけど。

 しかし、これが恐らく......


「ゲートか」


 恐る恐る手を伸ばしてみるとスッと透けて手が通った。触れることは叶わなかった。まあ、空気を掴もうとしているようなもんだしな。

 だけど、先生や焔薙さんはこのゲートを破壊してる的なことを言ってたよな。そうなると、同じホルダーである俺が触れれないのはおかしいということになるが。


 そして、次に手にマギを纏わせてそのゲートに触れてみる。すると、今度は透けることなく触ることが出来た。

 しかし、ゲートの中には手を突っ込むことが出来ず、まるで紙でも掴んでいるような薄さであった。

 とはいえ、握りつぶして割ることは出来ない強度を誇っている。金属でも少しは曲がるだろうから、金属以上の物質ということになる。いや、素手で触れれない以上は物質と判断していいのか?


「おらよっ!」


 そんなことを考えつつ、右手を集中強化するとついでに紫電も纏わせて殴りつけた。

 しかし、僅かにパキッという音を立てただけで変化はあまりない。なので、繰り返し殴ってみると3回目辺りでヒビが入り、4回目でガラスが割れたような音を立てながら砕け散った。

 砕け散った破片は空気に溶けていくように消えていく。


「あ、空気が軽くなった」


 ゲートが無くなると周囲にも変化が起こり始めた。

 先ほどまで妙に重たく、そして冷たく感じていたこの場は体が少しリラックスできるほどには軽くなり、冷たい空気が霧散していく。

 マギをレーダーのように拡散させると川の本流のようだった気配は無くなっている。つまり、ゲートは無事破壊できたということのようだ。


 成り行きで壊してしまったが、まあいいだろ。しかし、あのゲートが本命とは考えづらいな。

 確かに先生と焔薙さんが調べて重なった怪しい場所であったとしても、ゲートの大きさが大体どのくらいか知らないとしても、これではない気がする。

 この町のあちこちにゲートを作り出すぐらいなのだ。予想としてはこれ以上に圧倒的に大きいだろう。


「まあ、それ調べるためにも残りの工場と神社を調べようか」


 そんなことを独り言ちりながら、スマホのマップを頼りに移動していく。


 そして、次に辿り着いた場所は神社だ。

 その神社―――――月詠神社は割に広い神社で、本殿までの道もそこそこあり、境内もデカい。そして、緑も多くあるのでいい感じの木陰で休んでいる人が多く見られる。

 本殿までの道を多くの観光客が行きかう。新しく作られた神社なので、それほど格式高いものでもないし、なんなら有名でもないのに存外多いものだ。


「ま、こういう神社ほど存外あったりするよな」


 どのくらいのものかはわからないが、とりあえず大きい者だろう......と思いながら、いつも通りにお守りとかを売ってるところにいる巫女さんに話しかけて、神主を紹介してもらう。

 そして、聞き込みをしたが......ここ最近で夜に不審なことがあったり、奇妙なものが落っこちていたりとはなかったらしい。

 まあ、ないならそれで構わないが、念のため夜にでもまた来た方が良いだろう。もちろん、駅や学校も。


 それから最後にやって来たのは、工場。それもただの工場ではなく、またしても廃工場。

 はよ撤去せんかい、と思うのは仕方ないことで、だって廃工場で思い出すのは結衣と共闘して倒したあの赤鬼なんだもの。

 あんな強い奴、一応修行でレベルアップしてるであろう今の俺でもタイマンで勝てる気はしない。場所と運で勝ったようなものだ。あれ、とりあえず勝てたから次もいけるだろう、という楽観的姿勢にはなれない。


 まあ、強い敵がいたとしても、先生と焔薙さんがいるから躊躇なくあの人たちに任せとけば大丈夫だと思う。

 むしろ、その状況でも俺も戦いに参加したら足を引っ張りかねないからな。うん、適材適所ってやつだ。まだ弱いうちは相手できるレベルまでで戦っていた方がいい。

 なんせ、中級種相手でも毒で死にかけてたしな......いかんいかん、こんな後ろ向きな考えはいかん。


 俺は廃れてそのままになっている工場の敷地内に入っていく。当たり前だが人気はない。ついでに言うと気配もない。

 事情を聴ける相手がいないので、ここは自分で探索しないとダメそうだ。

 そして、辺りを探索していくとある壁でなんか特殊な魔法陣のようなものが描かれた壁があった。明らかに不自然......と思うのだが、その周りにはスプレーで落書きされた跡があるんだよな。

 「烈怒帝琉参上」とか「CRAZY BOYS」とか後はしょうもない絵だったり、下ネタの言葉や絵だったり。


 まあ、廃れた廃工場とか恰好のたまり場になるよな。それにその周辺の壁のいろんなところに落書きがあるし。

 となると、この魔法陣的な絵も落書きなのだろうか。


「にしても、普通だったらもう少し人の気配があってもいいよな。ここがたまり場だったなら」


 今は世間一般の学生ではまだ夏休み期間だ。もはや常に休みなんじゃないかという偏見も抱きかねない不良グループにとってはこんな絶好の休みの期間にたまり場に集まらないはずがないと思うんだが。

 よくよく見てみるとやたら背もたれが高い改造されたバイクや特攻服だろう白い服も野ざらしに置きっぱなし。そこまで汚れてないから、つい最近までいたと思われる。


「どう考えてもアジトにしててもおかしくないんだよな~。もしかして、全員でどっかのグループに殴り込みに行ってるとか?」


 それで今留守にしてるならまだ納得がいくだろ。それでも、大事な特攻服やバイクをそのままに向かって行くのかと思うが......さすがにそこまではわからん。

 ともかく、一先ず明るいうちの調査は終わりでいいかな。病院のこともあるし、また夜にこの五か所を巡ってみようか。


****


「ふぅ~、戻りました~」


「お、おかえりなぎっち」


「おかえり」


 一先ず、いつものバーに戻ってくると焔薙さんと先生が先に戻っていた。そして、俺が近くのソファに座ると先生が親切にアップルジュースをコップに注いで持ってきてくれた。


「ありがとうございます」


「なあ、なぎっち。調査の方はどうだった?」


「まあ、ザックリ言うと大きな進展はないですかね。駅でゲートらしきものを破壊してきただけです。なんで、ファンタズマが活発になる深夜近くを狙ってもう一度その五か所を簡単に巡ってみようかと」


「そうか。まあ、仕方ねぇな。見つからなかったなら。別に気にしなくていい。俺と善さんなんてもっと見つかってねぇんだから」


「恥ずかしい話じゃがそうじゃの。故に、一刻も早く見つけられるようにしなければならない。ともあれ、深夜に再び調査に向かうなら少しは寝ておいた方がいいの」


「そうですね。それじゃあ、お二人はどうするんですか?」


「俺達のことは気にすんな。特殊な生き方してるから、そうそうなことじゃ体力が尽きることねぇよ」


「そうじゃ。それに能力を得た時に肉体も強化される。借りに寝たとしても十数分で6時間睡眠を得たような感じになるよう訓練されているからの」


「なにそれ、やば」


 これがのらりくらりと入ってきた俺と訓練学校で鍛えられた人たちとの差か。この差はまだまだそう簡単に埋まりそうにないない。


 俺はリンゴジュースを一杯飲むとお言葉に甘えて、少し睡眠を取った。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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