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第76話 怪しげな五か所#1

「それじゃあ、そろそろ俺達の仕事を手伝ってもらおうかな」


 しばらくやっていた修行の日々は一旦終わりを告げ、俺はようやく焔薙さんと金剛さん(先生)のやっている仕事に参加する許可が下りた。

 何気長かった気がする。どのくらいだろう、二週間ぐらい?


 一応、今回二人がやっていることはそれとなく聞いている。それはゲートの破壊だ。

 今いる場所には数多ものファンタズマがこっちの世界に渡るための入り口が存在する。50年前にあった未曾有の事故が原因で空間が不安定になったことが原因らしい。

 とはいえ、普通の人にもましてや俺達にも空間がどのように変わっているかなんてわからない。しかし、その空間が不安定である証拠を示すのがそのゲートなのだという。


「ワシらはこれまでいろいろな場所でゲートを破壊してきた。しかし、未だゲートは現れ、それを消しては別の場所に現れとイタチごっこが続いておる。この任務を始めてから軽く30か所は破壊しただろうな」


「だけど、ここまでくるとさすがに気づくわな。こんなゲートを壊し続けても意味がないって」


「ってことは、どこかに大元があるということですか?」


「可能性上な。それも高い、だ。消しても消しても現れる。それこそ俺達が消さなければ際限なく増えるだろう。だから、そのゲートを分散させたり、作り出すための大元がどこかにあるはずなのだが......それがさっぱし。ファンタズマは基本人目を避けるし、目が合ったら殺して口封じってのがザラだ」


「じゃから、聞き込みをしようにも知らない人が多すぎる。それこそここは都会の中心に近く、ここ最近で作られた新開発地区で人口が多い。砂漠の上で落としたコンタクトレンズを探すようなという表現もあながち大げさではないのじゃ。ファンタズマの気配で逆探知して虱潰しに探していくのがいいところ」


「でも、ゲートがまた別の場所に消すたびに現れるから永遠に終わらない虱潰しを終わらせるために応援を呼んだと......だけど、それって結果的に変わらないのでは?」


「ああ、それだと変わらない。だから、なぎっちには俺と善さんが小さなゲートを破壊している間に大元のゲートを探し居て欲しいんだ。その片手間に小さなゲートもな。それにある程度の目星もつけている」


 焔薙さんはそう言うとポケットから小さな地図を取り出した。それは丁度この場所周辺の地図で、真ん中の赤い点と周りに五か所青い線と黒い線で二重に囲った場所がある。

 そして、先生が赤い点を指さして告げた。


「ここがワシらの現在地じゃ。そして、君が修行している間にワシらが数日かけてここら一体をくまなく探してきての。気配が強かったり不自然な場所にはマークをつけてきたのじゃ。多少の範囲のズレはあると思うが、概ね理一君とも不審場所が重なった。それが二重に囲まれている場所じゃ。そこを調べて来て欲しい」


「わかりました。ってことは、お二方はそのままゲートを破壊することはわかったんですけど、先生はこのバーはどうするつもりですか?」


「ワシはもともと情報集め兼宿提供の借りを返していただけじゃからの。有益な情報がない以上、こちらから情報を探りにいくしかあるまい。まあ、借りを返すことはおろそかになってしまうが、そこは理解力のある知人じゃ。仕事ならば許してくれよう」


「そういうわけで、なぎっちはこれからこの五か所を調べて来てくれ。なるべく慎重にな、強い敵との識別なら出来るだろうから逃げれるんだったら全力で逃げろ。逃げれないだったら俺達を呼べ。これは絶対だ、いいな?」


「はい」


****


「まぶしい~。何日目ぶりの日射だろうか」


 外に出た俺はもう空高くに昇る太陽に手で傘を作りながら睨む。

 久々の外でそれも8月ももうすぐ終わるというのにまるでサウナにいるような暑さは出た瞬間に限界だ。もしゲーム中ならば毒をもらったようにHPが徐々に減っていくだろう。

 その表現が過言ではないぐらいに辺りには影が少ない。まだ朝の時間帯なのに日陰という日陰が消失してしまっている。これは一体なんという地獄だろうか。本当に灼熱地獄ではるまいな?


 そんなことを思いつつ、地図を見ながらもう片方の扇子で少しでも風を作る。送られてくるのは熱風だが仕方がない。

 これから行く予定の目的地は神社、学校、工場、病院、駅の五か所だ。とはいえ、人目を避けるファンタズマが学校、病院、駅にいるとは思いずらい。

 ......いや、案外いなさそうな場所にいるという可能性もあるか。焔薙さんのように結界を使える相手がいるかもしれないし。


「一先ず、一番近くの学校から行ってみるか。それにしても、特別製であるとはいえ、未だにこの炎天下に長袖スーツを脱げないというのはいかがなものか」


 俺はうだるような暑さの中で、ジャケットが脱げなくて汗まみれという苦行を感じつつ地図を頼りに近くの学校へ向かって行く。

 そして、学校に着くとすぐに見える防護ネットの奥に野球部やサッカー部、陸上部が炎天下の中で部活の練習に(いそ)しんでいる姿があった。

 その光景がなんだか懐かしい。そんな気分まで湧き起こってくる......って、これまでの経験が濃すぎてなんか凄い大人になったような目線で見ているけど、俺ってまだ17だった。まあ、髪は銀髪だから完全に別人に思われるけど。


 とはいえ、こっちに入ったのはいわば仕方のないことで、別に後悔しているわけじゃないけど......なんか他の高校とはいえ、入るの緊張するな。大丈夫かな?

 そんな気持ちを抱きつつも事務室にて警察手帳を見せるとあっさり入ることが出来た。そして、校長先生からここ最近で生徒とかに不審なことが起こってないか聞いてみたが、特に変わりない様子だ。

 どうやらここではないらしい。一応、他の場所に移動する前に学校周辺をグルリと確認してみたが、ゲートらしきものはなし。


「んじゃ、次は病院か......その前にアイス食いてぇな」


 次なる目的地に移動しつつ、近くにあったコンビニで棒アイスを買って食いながら移動。半端ない速さで溶け始めたような気がした。やはり異常気象だな。ここ最近の話じゃないけど。


 そして、次に訪れた病院でも同じように一応聞き込み調査。すると、ここ最近になって入院患者が夜に徘徊することが多くなったらしい。

 それは単純な認知症の症状なんかじゃないかとも思ったが、どうやらその中には若年層も多くいるそうだ。

 .......うん、これはさすがに怪しいか。もちろん、何事もなくが一番だが、中には徘徊した人で数日前に行ったっきり未だ戻ってこない人もいるらしいのでここはチェックする必要がある。


 行方不明者には警察を頼っているらしいが、それでもまだ見つかっていないらしい。そのことに看護師や医師も怯え気味で、病院的にも入院患者を行方不明にさせるということでダブルパンチを食らっているらしい。

 一先ず夜にまた訪れるとして、次の場所に向かおう。ここから近いのは......駅か。


「考えてみれば駅って人が多いってイメージあるけど、それってあくまで昼間なんだよな。夜、それも深夜頃になれば終電も過ぎてほぼ人はいなくなるはず。そう考えるとここの可能性も出てきたな」


 もちろん、神社も向上も怪しい。というか、基本夜になればどこも人の気配は少なくなるわけで......あれ? 夜に調べに行った方が良かったかな? いや、それだともしこうした聞き込みによって何か有益な情報があるやもしれないし。

 ま、地道に行こう。地道に。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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