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第45話 事情聴取

「はい、好きなものを頼んでください」


「いや、悪いですよ」


「いいんです。私のために動いて下さっているんですから。どうかここは奢らせてください」


 ここまで言われてしまえば、それでも断るというのは逆に失礼なことか。


「それじゃあ、イチゴミルフィーユケーキをお願いしまーす」


「俺は特上.......ゲフンゲフン、抹茶クリームパフェで」


「意外に甘党なんですね......」


 入信から翌日の現在(午前中)はとあるファミレスにてそよかさんに来てもらっている。それは一日目のお姉さんの様子を伝えるのとそれとはまた別件のことで。


 店員に注文を済ませてから注文の品が届くのを待ちつつ、軽くどうでもいい会話で談笑(主に来架ちゃんが)。こういう時に女子がいるのは非常に助かる。俺? 空気に決まってるじゃないか。話が全く分からないので適当に相槌打ってるだけだ。


 そして、三人の目の間にそれぞれ品が置かれていく。

 隣の来架ちゃんは切ったイチゴとイチゴのソースがふんだんに使われたパイ生地で挟んだ文字通りの“イチゴミルフィーユケーキ”で、正面に座るそよかさんはショートケーキにコーヒーだ。

 そして、俺はパフェ専用の容器に抹茶チョコ、コーンフレーク、生クリームと三層構造の上に抹茶パウダーがかかったバニラアイス、抹茶色のパイ生地棒が小さく乗っている一品。くはっ、うまそぉ~!


 俺はパフェ用スプーンをコーンフレークの位置まで一気に差し込んでいく。そして、すくうように取って口へゴー! くっはっ、うっまはぁー!

 食べながらでも話そうとか思っていたけど、出来そうにもねぇ~。こうなれば食べ終わった後にでも話そう。そう人間マルチタスクは苦手な人がほとんどだから無理しない、無理しない。

 ふと隣を見ると来架ちゃんが“ほわわ~ん”という効果音でも出そうな良い表情をしていた。ついでにポニテも振れている。え、女の子って髪とか自在に動かせんの?


 そして、俺達は全員がその味に満足して食事を終えると話し始めた。


「それで、姉さんの様子はどうでしたか?」


「昨日潜入した段階では他の信者と変わらない行動をしていましたね。けど、熱心と言うべきか信仰深いと言うべきか憑りつかれたように必死でした。まあ、他の方もそうなんですけど」


「それ以外に何か変わったことはありました?」


「いや、なかったかもですね。まだ私達が入ったばかりなので警戒されていたかもしれないです。けど、安心してください。必ずスパッと解決してみせるかもですよ!」


 癖のせいでいまいち説得力が生まれていないが、その気持ちは確かである。

 とはいえ、ここで俺達は一つ嘘をついた。それは自称神が現れたことについて話さなかったことだ。

 まだあれがどういうことなのかわからないし、実態もつかめない以上聞かせて不安にさせないため......というのは口実で、本当はその情報をそよかさんがうっかりお姉さんに話してしまって、さらに教祖に伝わるということを防ぐためである。


 あの現象には必ず裏がある。こちとら、異能力・怪異を専門として動いているんだ。超能力も神の御業も恐らく異能力(アストラル)が原因であると見ていいはず。もしくは、安易な手品かなにか。それ以外で説明がつかなかったら、手の打ちようがなくバッドエンドだ。


 しかし、裏がある以上はその裏がバレないように相手側も動くはず。知ってしまったが最後、口封じに殺されてしまうなんてこともあるかもしれない。

 来架ちゃんが不可思議な行動を取ったのだ。アストラルによる肉体向上効果によって睡眠薬や麻酔薬、毒に対して耐性が向上しているにもかかわらず。


「そよかさん。今回お呼びしたのはその情報を伝えることもそうなんですが、実は別の調査に関しても追っていまして」


「はい.......ということは、事情聴取ということですか?」


「まあ、簡単な聞き込みってやつですよ」


「にゃはは、犯人がどうとかじゃないのでリラックスして、知っていることだけ答えてくだされば結構ですよ。私達はあくまで()()ですので、逮捕権とかはありません」


 来架ちゃんが純度100パーセントの笑顔で二カッと笑う。チラッと見える八重歯とともに背景からお花畑が見えるようだ。うむ、可愛いな。

 しかし、この意外に巧みな嘘をつくな。あくまで探偵としてこの仕事を受けていることを強調させている。


「それで聞きたいこととは?」


「実はここ最近で連続している女性失踪事件に関して調査しておりまして。失踪した人達の姿を今見せますので知っている人がいたら教えてください」


 そう言って来架ちゃんにアイコンタクトを送る。すると、来架ちゃんはリュックから取り出したタブレット端末を少し弄って、画面の方を上にした。


「それではいきます。最初の失踪者ですが―――――――」


 来架ちゃんはタブレット端末に映し出されている失踪者の画像と簡単なプロフィールがまとめられた資料を開いた。

 そして、その失踪者の顔をタップすると所長の時と同じようにホログラムを映し出した。それも全身である。警察側が事前に調べたもの拝借しているので、ある程度の核程度はあるだろう。


 来架ちゃんはそよかさんに計6名の人物を順番に丁寧に見せていく。その間、俺はそよかさんの言葉を録音する傍らで、気にならない程度で表情を伺う。

 明らかに曇った顔で否定した場合に見逃さないためだ。もちろん、そんなことはしないだろうという信用は持っているが、所長から“信じてもいいが疑いもしろ”と言われているのでそのためである。


 今は3人目に差し掛かったところだ。見ている限りでは特に目立った変化はなく、普通にキレイな人だと思ってしまう。

 しかしまあ、どうしてだろうか。若者が往来する渋谷だから必然的にキレイな女性もいるわけで、その人に対して邪な目で見ているわけじゃないのに、背後から死神に刈り取られそうな寒気を度々感じるのは。冷房つけっぱなしで寝たし、風邪ひいたかな?


「あ、この人......」


「お知り合いの方ですか?」


「あ、いえ、一度親切にしてもっらった人で印象深くて覚えていた感じで.......というだけです」


 そよかさんが反応を示したのは4人目の人物で名前は【唐笠 実夕】という人だ。まあ、深く関わりがあったわけではないそうだが、その人を見た瞬間悲しそうな顔をしている。


「まさか......あの親切な人が失踪しているなんて.......」


「事件発生は今から12日前の午後20時から21時の間。唐笠さんは友達と会食の予定があったので、いつまで経っても連絡が取れないから加算を不審に思った友人が自宅に尋ねても不在。それで事件が発覚したそうです」


「それでその友人は警察側にも相談したそうですが、こっちにも相談したそうです。相当慌てていたかもしれませんね。まあ、あんまり難解だったら警察側からこっちに回ってくることもあるかもですけど」


「私と同じぐらいの年齢なのに凄いんですね......」


「ははは、(物理的に)鍛えられてますから」


 俺の強化訓練に付き合ってもらってから運動不足解消に丁度いいとかいってよく突っかかってくるんだよな。その度に心身ともにイジメられる。


「それで、この方についての情報を教えてくださいませんか? 親切にされた時の印象とかでも結構です。どうか些細な情報があればお聞かせください」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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