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第35話 いや何やってんの?

――――――【二斬 結衣】視点――――――


 不覚だった.......これは完全に不覚だった。

 この男、異性が口付けたものでも平気で食えるタイプか。

 反応を楽しむつもりでスプーンを差し出してみれば、すまし顔で食いおった。

 その反応に逆に私が恥ずかしくなったわ.......私だって少しは意識はあったのに。


 クソぅ......なんともこの屈辱は晴らさずべきか。

 とはいえ、ここでヤケになって同じ行動を繰り返そうとすれば、また先ほどの二の舞になってしまうに違いない。

 ならば、ここはさらに散財させてやるが吉だ。


「凪斗、あそこ行こう」


「え、また服屋」


「何か文句ある?」


「あ、いえ、ありません.......」


 む、少し凪斗が怯えてしまった。

 いや、今のは別に怒ったとかではなく普通の反応なのだが.......やはり表情に出ていないし、声に抑揚があまりないことが原因だろうか。

 うーむ。最近顔の特に表情筋に当たる部分のマッサージをしてるけど、高校の時みたいに不特定多数の接触が無くなってしまったせいかめっきりできなくなってしまった。


 まあ、わざわざ素顔を隠さなくてもいい.......という理由があるからなのだろうが、このままではまた凪斗に頼りっぱなしになってしまう気がする。

 凪斗的にはむしろウェルカムらしいが、やはりあまり頼り過ぎるのは良くない。

 特に表情をどうすれば良くなるとかどうでも良すぎないだろうか? こればっかりは自分で解決しよう。


 私達は別の服屋に辿り着くと服を物色していく。

 まあ、主に見ているのは私で凪斗は少し居心地悪そうに後をついてきている。

 やはり女性が多くいる場所、それもメンズ服がないレディースエリアだとそういう気分になってしまうのだろうか。

 まあ、さっきの罰だ、とくと受けよ......しかしまあ、凪斗のこういう反応を見るのは楽しいな。


「いらっしゃいませー」


 店員の女性が話しかけてきた。あまりいい予感がしない。

 なんせさっきの店では普通に“子供”認定されてたからな。服でわかるだろう、服で。

 まあ、人は第一印象で決まるって言うし、小学生の時も一人だったから陰湿って思われてたし―――――――


「もしかしてカップルですか? それならカップル割りとかございますが」


 この人、イイ人だー!

 うんうん、やはり見る目がある人にはしっかり私の小学生とは違うオーラが見えていたりするのだ。

 先ほどの店の店員はまだまだ未熟だな。この人を見習うがいい。


「あ、いや、俺達は別に――――――」


「どうしたの、なぎとー。お腹痛いのかなー?」


「がふっ!」


「大丈夫ですか、お客様!?」


 凪斗の腹部に一発肘打ちくらわせて回避。

 全くそこを否定されると下手すれば凪斗の妹認定されるではないか。それ即ち小学生認定と同じ。見た目で判断されかねない。

 それに割引があるのにわざわざお金を減らせる機会まで無くすつもりか。


 とはいえ、さすがにこの場で四つん這いになるまで思いっきり肘打ちはやりすぎたな。

 ま、まあ、決してカップルという響きにおだてられたわけではない。おだてられたわけではない!


「大丈夫ですよ、時折彼は突発的腹痛が起きるのでお構いなく」


「は、はあ.......」


 さすがに苦しい言い訳だったが、まあ店員と客の関係である以上深くは聞いてこまい。


「ゆ、結衣.......俺、なんか悪いことした?」


「存在自体が悪い」


「え!?」


 “カップル”割引を捨てようとは嘆かわしい。


 凪斗を引っ張りながら適当に辺りを物色していく。

 まずはシンプルな白のワンピースの清純派コーデ.......ふむ。

 次にデニムのホットパンツに、正面に柄の入った少し大きめの(肩がチラ見えするぐらい)黒無地に帽子のカッコ可愛い系コーデ......ふむふむ。

 そして、ズボンはあえて長めのゆったりとした白のサルエルパンツに、フリルのついたベージュ色で大人っぽいコーデ.......ふむ。

 それから、少々気に食わないが黒を基調としたゴスロリ系コーデ(ストッキングは履いていない).......ふむふむ。


 時折気に入った服を選ぶとそれを凪斗に見てもらい感想を貰った。

 基本的に真面目に答えてくれた。凪斗視点から見て似合っているか否かを。

 しかし、感想はあくまで予備だ。目的はその感想を貰うことではなく、反応――――――どこを見ているかを見ること。


 基本的にどの服にも興味的な視線を示した。

 しかし、私は見逃さない。その服のいくつかの(特にカッコ可愛い系とゴスロリ系に)一部に強い視線を送っていたことを。

 それはデニムの短パンを履いた時とゴスロリの際のスカートの時だ―――――――そう、要するに生足が見える時だ。


 やはりこいつはムッツリの脚フェチらしい。

 本人は私にギリギリ隠せていると思っているらしいが、当たり前のことでバレバレである。

 しかし、これは悪いことばかりではない。

 私のような幼児体形の足にも反応してくれるのだ。もちろん、こいつが先ほどから他の店員の生足にも(うつつ)を抜かしていたことは気づいている。


 さて、一体この変態をどう調理してくれようか。

 基本的に足が見えればこいつの視線は勝手にそっちに動く。そう考えるとやっすい男かもしれない。

 まあ、これは惚れるが負けというやつで.......とっくの昔から負けているのでもういろいろと諦めているが。

 とりあえず、他の服も見てみるか。まだ全てを見れてないし―――――――ん?


「どうしたの?」


「いやー、ここ離れていいよな?」


 凪斗の顔を見ると必死に目を横に動かして視線をある一方向からずらしている。仕舞には目を瞑り始めた

 一体何が.......ほほう、女性下着とな。

 これはこれは.......使える。ちょっと反応を見てみようか。


****


――――――主人公視点―――――――


 マジか~、まさかのこの店の隣がランジェリーショップとは思わなかった~。

 どうしよう。あんまこういうのって見ちゃいけない気がするんだが、どうにもこうにも男の性と言うべきか目が動きそうになってしまう。


「凪斗、凪斗」


 挙句の果てに目を瞑っていると袖を結衣につんつんと引っ張られる。

 さすがに目を開けて反応せずにはいられんよな.......。


「どう、これ?」


「ど、どうと言われましても.......」


 結衣が赤い大人下着を掲げて見せてくる。その下着の後ろからちょこっと顔を覗かせる。

 こ、これを本当にどうしろと? まさかこの下着の感想をくれとか言わんよな!?


「ん、なるほど」


「.......」


 一体何基準に“なるほど”なのか。説明が頂きたいぐらいだ。

 それでこれに関して顔が赤くなってしまうのは仕方がないとして、どうして結衣はそんなにも瞳をキラキラさせているのか。


 .......もしかして、俺の反応を見て楽しんでないかコイツ。

 ま、まずい。周囲からいたたまれない視線を感じる。女の敵認定でもされているのか!?

 このままでは俺の社会的地位が危ない。ここは結衣に悪いが。この場は去らせてもらう。


「結衣、突発的腹痛が発生した! 一時トイレに立てこもってくる!」


「あ、え? 凪斗.......」


「さらばだ!」


 俺はアストラルで強化された肉体をここぞとばかりに活かして素早くこの店を出て少し遠くまで移動していく。

 あ、危なかった。(社会的に)死んでしまう可能性すらあった。

 あのどこか汚物を見るような周囲の目は絶対に危険であったに違いない(※本当は若々しいカップルのイチャつきに微笑ましく見ていただけということを凪斗は知らない)。


「ふぅ、とりあえず少し経ったら連絡でもしてやるか――――――――」


「どらっしゃああああああぁぁぁぁ!」


「!」


 近くのゲームセンターエリアから聞いてきた怒号にも似た声。

 声色的に女性であったし、それにどこか聞き覚えのある声でもあった。

 なんとなく気になるし、少しだけ覗いてみるか。


『ドルルルルルルルル、ルル、ル、ル、パッパラー! congratulation! new record score! Nice punch! Are you harmful or something?』


「しゃおら!」


 パンチングマシンの前で高らかにガッツポーズする所長の姿があった。

 .......あの人、何やってんの?

読んでくださりありがとうございますヽ(*´∀`)ノ

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