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絶対捜査戦のアストラルホルダー~新人特務官の事件録~  作者: 夜月紅輝
第2章 忘れたものと思い出すもの
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第27話 初戦#2

 さーて、ここからどうするか。

 あの爆発を爆心地で受けたというのにまだ平然と立っているあの化け物をどうやって倒すべきか。

 まあ、ないわけじゃない。むしろ、先ほどの爆発のおかげで倒し方が見えたぐらいだ。

 とはいえ、今の爆発であらゆるものを薙ぎ払ってしまったせいで、いくらここに煙がまだあるからってそりゃあバレますよね―――――――


 黒鬼だけど赤鬼は姿を消しながら向かって来る。そして、俺の場所へ思いっきり拳を叩きつけた。

 その拳は床を軽く砕き、円形状にくぼませていく。

 幸い、煙が残っていてくれたおかげでその煙の動きでなんとなくわかるし、先ほどの爆発はやはりダメージがあったのか完全な透明化にはなれずよく見れば人型に歪んでいる。

 

 そして、少しでも意識を散らせば透明化は解除される。


 近くにあった瓦礫を拾うと顔面に向かって投げる。

 赤鬼がそれを右手で薙ぎ払っている隙に一気に近づくと高電圧の紫電を纏わせた右手を左胸に向かって殴る。

 鉄板を殴ったかのように拳が痛い。けど、これでいい。


 赤鬼は反対の拳を地面に叩きつける。しかし、その場から後方へ跳躍することで避ける。

 そこから再びかけると叩きつけた拳をアッパーに切り替えて振り上げる赤鬼の攻撃を横に回転してズレながら、再び左胸に電撃を当てる。


「グッ!」


 少しだけ赤鬼が唸った。しかし、すぐに右手を左側に向かって薙ぎ払う。

 それを背中を思いっきり逸らすだけで回避、すぐさま距離を取る。

 すると、鼻からスーッと何かが流れ出てきた。触れてみると血であった。

 掠ってもいないのに鼻に痛みを感じる.......ってことは、拳圧でダメージを受けたってことか。

 待て、赤鬼はどこだ!?


 俺が一瞬だけ目を離したすきに目の前から赤鬼が消えていた。その場で透明化になったわけじゃない。

 すぐさま手袋を見る。背後にマークがある。

 その瞬間、一気に背後から寒気が走った。そして、何も考えずに前へ跳躍した。


―――――――ドンッ!


 背後から聞こえる強い衝撃音とともにそれに伴う衝撃波で吹き飛んでいく。

 空中で逆さになりながらそのまま後方を見る。するとそこには、変形した赤鬼がいた。


 もともとの赤鬼の姿は童話とかに出て来そうな典型的な鬼の姿だった。

 いわゆる赤いボディに口をはみ出している下から上向きの牙、牛の角、トラ柄のパンツ。こん棒は持っていなかったが、そのままの姿であった。

 しかし、今は下から上向きに牙に加え上から下向きの牙もあり、短く生えていた角は伸びてねじれ前方に突き出しており、体の至る所に欠陥が浮き出ていて、腕なんかにはブレードのようなヒレがついている。

 変わらないのがトラ柄のパンツぐらいで、その威圧感はあまりにも強烈で無意識に体が震えている。


 赤鬼が地面を割ったことで衝撃波とともに吹き飛んできた瓦礫が俺の腕や脚を切り裂いていく。

 とりあえず、顔面には当たらないようにガードしといたが、それでもかなり痛いな。

 恐らくアストラルで感覚が上がったからなのだろうが、痛覚も上がるのは嫌だったな。


「ニガサナイ」


「がはっ!」


 赤鬼は床から叩きつけた右拳を腰近くに戻すと正拳突きの構えになった。

 そして、左手で俺に標準を合わせながら、右拳を鋭く突き出す。

 その瞬間、風が周囲の瓦礫を吹き飛ばし、砂埃を舞い上がらせながら向かって来る。

 その風はまるで質量を持っているようで、向かって来る風が拳の形に幻視出来た。


 咄嗟にガードする。しかし、それが意味を成さないように俺を軋むような風の勢いのまま壁に叩きつける。

 壁が軽くへこみ、同時に前にバウンドした。

 肺にあった空気は強制的に吐き出され、一瞬だが息が出来ず無理にでも息をしようとしてのどを締め付けられているような感覚になった。


「コロス! コロス!」


 赤鬼は上体を傾けていくと一気に駆け出した。

 そのスピードは先ほどの非ではなく、瞬きでもすれば一撃必殺の拳が直撃するのではないかと思うレベルであった。

 その動きを瞬きしないように無理矢理目を見開かせたまま地面を手で横に流すように動かす。

 逆さの状態ではそれが精一杯であったが、何とか赤鬼の攻撃軌道上から避けることが出来た。


 しかし、瞬間的に隣から爆音にも似た嫌な音が鳴り響く。

 それは赤鬼が壁に拳を叩きつけた音だ。

 衝撃と爆砕音は同時に俺の体を包み込むように襲い、激しい瓦礫のつぶてで体の至る所に直撃し、耳が再び軽くやられる。


 近づけない。近づいてはいけない。近づいて少しでもモロにくらえばそれでバッドエンドは確定。

 さて、こういう窮地になった時こそ思い出せ。


 俺は近くに転がっている瓦礫を拾いながら赤鬼を攻撃する。ほとんど意味を成さないことはわかってる。

 しかし、気になることは先ほどから赤鬼が透明化しないことだ。

 普通に考えて一段階パワーアップした状態で透明化すれば、まさしく"鬼に金棒"状態だろう。

 それをしないということは.......もしかしたら、あの状態で透明化は出来ないのではなかろうか。


 透明化を捨ててまでのあの姿。

 恐らく透明化をどんな形であれ見破っているからこそ隠れても意味がないとあの姿になったのだろう。

 おかげで認識はしやすくなったが、隙は無くなったような感じだ。瞬間的に食われかねない。

 とはいえ、攻めなければ勝ち筋は見えない。


 赤鬼はなりふり構わず突っ込んでくる。

 咄嗟に横っ飛びで避けると赤鬼は壁をぶち壊しながら、その振ってくる瓦礫をものともせずただ殺意の目をこちらに向けてくるばかり。

 こんな隙だらけの攻撃をしてくるのは俺が一方的に距離を取っていたり、瓦礫を投げて牽制しているからの行動であるだろう。


 防御する必要がない。それが赤鬼を壁に突っ込むまでに雑な動きをしている理由。

 一撃さえ当たれば終わり。その事実は拳圧で俺を吹き飛ばした時点で見えていたのだろう。

 だけな、いつまでも逃げの一手だと思うなよ?

 いくら拳圧でも攻撃を与えられようと致命的でなければ大丈夫。


 そして、攻撃は当たらなければ意味がない!


「右足に集中強化」


 呟きとともに右足のふくらはぎ部分にマギを集中していく。

 そして、強化した脚部で瞬間的に地面を蹴る。

 赤鬼は突然の俺の突撃に両腕をクロスさせて頭を守る行動に取った。


「そこ!」


「ガッ!」


 ならば、違う部分を狙えばいい話だ。

 赤鬼は両足を大きく広げてどっしりと防御姿勢を取っていた。

 俺は走り出した勢いのまま赤鬼の股下をスライディングで通り抜けると背後を取った。

 そして、すぐさま再び右の足にマギを集めていくと赤鬼の右足を蹴った。


 赤鬼の右足は地面を滑る。どっしり構えていたことが仇となり、体勢を崩していく。

 しかし、ただで流行られまいと左脚を軸にして回転し、左腕で背後を薙ぎ払った。

 風圧だけで周囲の瓦礫は吹き飛び、砂埃とともに地面がキレイに掃除されていく。


 だが、それも当たらなければ問題ない。

 しゃがんでいた俺は立ち上がりの勢いとともに右手を集中強化、赤鬼の顎を打ち上げる。

 それによって、赤鬼は維持的に死に体となった。そこにさらに追撃だああああああ!


 右手を素早く引き戻し、左拳を掴む。その状態のまますぐさま左肘を赤鬼の()()に打ち付けた。

 赤鬼はさらに体勢を後ろ向きに倒していく。

 だが、油断はできない。赤鬼は巨体だ。アッパーを決めた時も両足を地面から離すほど体を上げられなかった。

 だから、素早く両足を払う。そして、赤鬼の左側面に移動し、左胸にダメ押しのかかと落とし。当然、電撃付きだ。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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