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絶対捜査戦のアストラルホルダー~新人特務官の事件録~  作者: 夜月紅輝
第2章 忘れたものと思い出すもの
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第26話 初戦#1

――――――【二斬 結衣】視点――――――


『ヒーロー? まだそんなこと言ってるの? 恥ずかしくない?』


『なんか最近当たり強いよな。別にいいけど』


 私はその言葉に思わず笑った。

 それはそうだ。小学5年生にもなってそんなことを言っているのだから。

 加えて、それを本気で言っているのだから余計に笑えて来るというもの。


 しかし、同時に凪斗らしいと思っていた。

 とはいえ、その願いは実はすでに適っているのだ。本人はそのことに気付いていないだけで。

 私が今こうして凪斗と話せているのも、クラスメイトと仲良くなれたのも、男子に告白されたのも全ては凪斗と出会ったおかげ。


 もう私は既に救われているのだ。ヒーローを目指すヒーローに。

 だから、思わず笑えてしまうのだ。もう既に叶えているものを叶えようとしてもなれないのだから。


『どうしてヒーローになりたいの?』


『そりゃあ、決まってるじゃん。大切な人を救うためだろ?』


『ちなみに、どんな影響?』


『仮面ライダードラグーン! あれってすげーカッコイイんだぜ! だってさ――――――――』


=====


――――――主人公視点――――――


「二斬! おい二斬! 大丈夫か?」


「ん.......凪斗と?」


「良かった。意識はあるようだな」


 俺は赤鬼を殴り飛ばすとすぐさま二斬に声をかけた。

 二斬は頭を強く打ったようで目の焦点が合っておらず、頭からも血を流している。

 もう少し早く辿り着けばと思う気持ちもなくはないが、今はそんなことに怒っている場合ではない。


 二斬を抱えると一先ずその場から離れた。

 そして、二斬と赤鬼が争った形跡のない場所の壁に二斬を座らせるとすぐさま立ち上がった。

 それから、手袋から事務所に位置情報を送ると二斬に声をかける。


「二斬、もう大丈夫だ。これで仲間がやってくる。ただもう少しかかりそうなんだ。それまで頑張ってくれ」


「待って」


 二斬は俺のズボンを掴んだ。そして、二斬の目は潤んでいた。

 月光に照らされてキラキラと輝くその目が少しグッときたと思っている場合ではないか。

 きっと俺が赤鬼と戦うことを防ごうとしているのだろう。

 それが二斬の願いだから。


「行っちゃダメ」


「........」


 切実な表情に震えた声。

 二斬の中に溜まっている不安や恐怖をごちゃごちゃに混ぜたような言葉が二斬りの想いの全てを物語っていた。

 そんな顔されたら一緒にいてあげたいと思ってしまう。不安を拭いたいと思ってしまう。

 しかし現実的な話、応援が来るまでの間誰かが赤鬼を引き付けて時間を貸せ長ければならない。

 そして、当然二斬は無理なので、俺が行くしかない。


「二斬、心配するな.......とは言わないけど、俺もお前に守られてばっかじゃ立つ瀬ないからさ。少しだけカッコつけさせてくれよ、()()


「.......!」


 目を見開いた二斬は何も答えなかった。ただそっとズボンを掴む手を放した。

 二斬がどういう気持ちを抱いたのか俺にはよくわからない。けど、信じてくれたような気はする。

 俺は礼弥さんから渡された回復薬と言われた緑の液体を二斬に渡すと少しだねネクタイを緩める。


「ふっー、よし。やるか」


「凪斗」


「ん?」


「相手は上級。まともに攻撃を受けてはいけない。けど、相手は動きがあまり速くないからよく見れば避けれる。それから、赤鬼はあの時の鳥類と同じ能力を持つ。気を付けて」


「おう。ありがとな」


 二斬からとってもいい情報をもらった。

 にしても、まさかまさかの俺の初戦での相手が上級からとか。確かあれだろ? 2トントラックなら簡単に破壊できんだろ?

 そいつが俺のすぐそこに。勢いで一発殴ったからキレてるだろうな。

 この世界に入った瞬間、俺の人生の難易度設定ハードにしちまったかもな。


「ガアアア! ナンダ! イマノハ!」


 お、気づいていない。これはチャーンス。


 赤鬼は両拳を頭上に上げながら勢いよく瓦礫を吹き飛ばしていく。

 そして、辺りを見回すようにキョロキョロと首を振る。

 その姿を手袋のマーキングで確認しながら機械を影に距離を詰めていく。

 そこで手当たり次第に投げやすそうな瓦礫を一つ拾うと準備OK.

 さて、所長に"事務所最速"という名誉をもらった足を孫文に活かしますかな。


 俺は赤鬼の死角の位置に入るとその瓦礫を頭に向かって投げた。

 そして投げた瞬間、俺は投げた場所とは逆サイドに走り込む。


「ガ? ナン――――――ダァ!?」


「ヒット! はいいもののかってぇな」


 瓦礫は赤鬼の頭に当たり投げられた方に首を振った。

 そこは丁度死角になっており、最速を活かして走ってきた俺はそのまま跳躍して首筋に蹴り込んだ。

 しかし、その攻撃での成果は上半身を軽く動かしただけ。固すぎてまともにダメージが入っている感覚がしない。

 なら、次!


 俺は赤鬼を蹴って距離を取ると再び隠れる。

 赤鬼は「ドコイッタ!」と叫びイラ立ったようにそこら辺の機械を壊していく。

 当然、まともに戦うわけがない。そもそも太刀打ちできる相手じゃないとわかってるからこう隠れている。

 

 赤鬼の様子を確認しながら、この場のマップを頭に叩き込む。

 少しでも不意を突かれないようにするためのものだ。慎重に越したことはない。

 この場所に赤鬼が近づいて来るな。


 機械の影から覗き見る。しかし、そこには赤鬼の姿はなかった。

 もう一度手袋のマーキングを見る。マークは近づいている。つまり透明になっているということか。

 透明は確かに凄い能力だが、別に攻略情報がないわけじゃない。

 加えて、都合が良いことにこの場所は実に赤鬼の姿を見つけやすい。


 俺は気づかれないように動いていくと袋詰めにされた小麦粉を見つけた。

 そうここはもと小麦粉工場らしいのだ。原因不明の事故が多いらしく、それで途中閉鎖になった場所。

 二斬のアストラルの確認位置を探った時に気付いたのだ。


 赤鬼は厄介だ。とても厄介だ。だが、それはここでなければの話だがな!


「これでもくらいやがれ!」


 俺は少し破った袋を思いっきりマークの位置に投げつけた。

 それを赤鬼は殴ったのだろう。中身の小麦粉が一斉に舞って、わずかに赤鬼の姿が確認できる。

 すると、赤鬼はこっちに向かって進撃してきた。

 足元にある小麦も、体に纏わりついている小麦も無視しながら。


 俺はそれをチャンスだと捉えた。もっともしっかりと回避できる場所を探しておかないと俺も大ダメージだが。

 よし、あの柱の太さならギリギリ縮こまった俺を隠せる。


「オマエ、ウザイ!」


「ウザくて結構。爆発に気をつけろよ!」


 俺は柱に向かって走り出しながら、右手を赤鬼の方へと向ける。

 そして、指の先からたった10センチにも届かない電撃を飛ばすとその電撃は小麦粉に引火した。


――――――ドゴオオオオオオォォォォンッ!!


 瞬間、赤鬼を巻き込んでの大爆発を起こした。

 爆炎と爆風がこの工場内のほとんどを破壊し、燃やして、吹き飛ばす。

 その爆風は入り口から外へ、窓を突き破って外へと勢いよく噴き出していく。


 熱風で瞬間的に灼熱地獄のような暑さになり、徐々に煙が晴れた後で燃えている箇所はいくつかあった。

 焦げ臭いにおいが辺りを満たす。少し鼻が曲がりそうだ。

 そして、爆音に耳を塞いだがそれでもキーンという音が聞こえる。


 俺がやったのはいわゆる粉塵爆発ってやつだ。ある一定以上の密度の可燃性の粉塵があると火花で爆発するアレ。

 小麦粉をそのまま被ったんだから密度条件をクリアするにしても、引火するかは半信半疑だったが成功して良かった。


 そして、良かったのは俺もまた同じで柱の幅からはみ出ないようにくっついて丸くなっていたおかげで、爆発が当たらずに横に勢いよく吹き抜けていった。

 爆風の余波熱で軽く腕を火傷したが動かせるのなら問題ない。柱もと横幅あって助かった。

 そんじゃ、赤鬼さんの様子は―――――――


「オマエ、ゼッタイニユルサナイ!」


 全身真っ黒の黒鬼さんになっていた。しかも、まだ割とピンピンしてやがる。ははは、マジかよ。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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