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絶対捜査戦のアストラルホルダー~新人特務官の事件録~  作者: 夜月紅輝
第2章 忘れたものと思い出すもの
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第24話 単独戦闘#3(結衣)

――――――【二斬 結衣】視点――――――


「ドコダ! ドコイッタ!?」


 赤鬼はイラ立った声で周囲の機械に八つ当たりしながらしらみ潰しに渡しを探していく。

 その姿を少し離れたレールの影に隠れている私は息を潜めて様子を伺っていた。

 ここに辿り着くまでは時間の問題。それまでになんとか勝機は見いだせないだろうか。


 まず現状で私のラヴァリエでの攻撃は通らない。腕とかを切断できれば違ったけど、それが出来ない。

 そして、こっちは一撃でも食らった終わりだと思う。それが直撃だったら尚更。

 なら、相手に攻撃して隠れてのヒット&アウェイで行くか。


 赤鬼が裁断機のような大型機械をぶん殴っていく。

 ガンッという音共に周囲に機械が飛び散ってきて、こちらの頭にまで振りかかってくる。

 ここに流れる独特な臭いや冷たい空気感に感覚が麻痺している気分だ。


 ヒット&アウェイは最初のうちはいいだろうが、赤鬼が暴れているうちに隠れることが出来なくなればどうするかが問題だ。

 赤鬼の機動力はこちらより上でパワーも上。だからこそ、厄介なのにその上突然消えるのだ。

 .......消える? もしかしてコイツ!


「ミツケタ」


「!」


 どうやら私は長考し過ぎらたしい。咄嗟にその場から跳躍する。

 すると、赤鬼は私のいた位置を思いっきり殴った。そこにあったレールを地面ごとひしゃげて。

 地面を転がりながらさらにその場から離れるように跳躍する。なんとか当たらずに済んだ。

 しかし、バレた。どうする?


 私は仕舞っていたラヴァリエを取り出すと近くにある機会を横なぎに斬って残骸を吹き飛ばした。

 それらの残骸を腕をクロスさせてガードしている。

 その間に隠れなければ。背が低いデメリットもこういう時は助かるから憎い。


 好きを見てすぐ近くの大きな機械の裏に隠れた。幸いこの工場のこの場所の地形は逐一確認しているから。

 それは兄さんが作ってくれた万能皮手袋。その一つの効果として私の任意で手袋から超音波を発してその戻ってくる時間で空間を調べているようだ。

 さらに、敵反応には自動マーキング機能も付いている。

 そして、出た情報は皮手袋から液晶ディスプレイが現れて立体的に見してくれる。触れたら回転もする。

 全く凄い兄を持ったものだ。そのおかげで今も生きながらえている。


 .......とこの話はこれぐらいにして、私はまだある赤鬼の死角を確認すると肉眼で姿を確認する。

 結局のところ、最後は人の目で確認しなければいけない。

 あくまでマーキング機能だし、戦いは肉体の仕事だ。

 そして、影から赤鬼の姿を見た。


「いない.......?」


 とっさに手袋から液晶ディスプレイを出してそのマーキング位置を見た。すると、そのマーキングはこちらに近づいて来ている。

 まずい! 直撃は避けなければ!


 私は咄嗟にその場を跳躍するとラヴァリエを盾にするように突き出した。

 その瞬間、ラヴァリエに何かが直撃した感触を感じたとともに勢いよく吹き飛ばされた。

 地面に叩きつけながら転がっていく。

 痛い.......衝撃が骨にまで伝わってくるようでまだ僅かに震えているような感覚がする。


 しかし、これでわかった。今も赤鬼はその姿を突然現した。ということは、赤鬼の能力は透明化だ。

 最初の襲ってきたオオカミも気配を消して突然現れた。

 気配を消せていても戦闘慣れした私達ではある程度の距離まで近づけばそれだけでわかる。だから、それ以外に認識を外せるとすればこれしかない。


 なるほど.......やはりか。やはりこいつのせいで凪斗はこの世界に足を踏み入れなければいけなくなったのか!

 あの時戦った中級種のインコが突然消えたのも十中八九こいつが能力を分け与えたからだ。

 凪斗がかかわらなくていい世界に関わらせたことを私は絶対に許さない!


「シトメソコナッタ。ツギハコロス」


「ここで八つ裂きにする!」


 赤鬼はまた近づいてやってくる。私は距離を取りながら手当たり次第に周囲の機械を破壊していく。

 そういえば、凪斗が勤務してから数日後こんな話をしていた。

 「インコのやつは攻撃時に攻撃に専念するためにわずかに空間が歪んだ」と。

 それはつまりは透明化したとはいえ、それは背景と一体化しているだけで存在はしているということ。

 なら――――――


 私が破壊した機械は多少被っていた砂埃がその勢いで舞っていく。

 しかし、その砂埃は突然一斉に二つに分かれ、勢いのまま流されていった。

 

 ――――――赤鬼の居場所はあぶりだせるということ!


 私は砂埃がわかれた場所に向かって走っていく。

 先ほど動いてから感覚的に3秒というところ。すぐに反転して動き出してしまえば十分に間に合うが、それだと正面からタックルされた場合は防ぎようがない。

 だから、側面から攻撃する。


「そこ!」


「グッ!」


 私は反転するとすぐに左足で地面を蹴って右側にあった壊れていないレール部分に右足をかける。

 さらに、その右足でレールを蹴るとそのまま空中でラヴァリエをすくい上げるように振るった。

 しかし、ガギンッという音ともにすぐに弾かれてしまう。


 ダメか。単純な力も足りないし、アストラルの力もあまり引き出せていない。感情を押し殺してまでやって来たのがここで仇になぁった―――――――!


 攻撃したことで姿を現わした赤鬼はまだ空中にいた私の足を掴むと勢いよくぶん回した。

 私の体がブオォンと勢いよく投げられたのがわかる。

 この位置は場所的に鉄の柱がある場所―――――――背中にマギを集中強化!


「がはっ!」


 柱が勢いで曲がるほど強く叩きつけられた。

 いくら防御力を上げてもやはり練度が低いのかすさまじく痛い。背中に鈍痛みが走り続け、上手く下半身に力が入らない。


 赤鬼は隠れることもなく平然とその姿のまま殴り掛かって来る。

 下半身が痛みで上手く動かない以上、柱を蹴って避けるのは無理。なら、別のもので軌道を変える。


「そりゃっ!」


 私はラヴァリエを少し回転させるとその勢いのまま柱に引っ掛けた。

 そして、引っ掛けた個所を支点として柱をグルリと回る。その動きで赤鬼の拳を避けながら、赤鬼の首筋を無理やり蹴った。

 もちろん、痛い。けど、集中強化したおかげかまだ動けはする。


 赤鬼から離れると受け身に失敗して地面を転がっていく。しかし、すぐに体勢を立て直した。

 一応戦えている。とはいえ、攻撃が通じないようじゃジリ貧する。

 せめてもう一人いればラヴァリエにマギを集めて強化することが出来るけど........。


 私の能力で増やすことは出来る。けど、一人当たりの攻撃力はやや落ちる。

 それにコンビネーション攻撃だから、もとより防御を捨てて攻撃してくる相手とはとても相性が悪い。


「オマエ、ウザイ!」


「くっ!」


 赤鬼は大きく跳躍すると頭上に大きく手を挙げた。そして、私に向かってその二つの拳を地面に叩きつける。

 私は跳躍して難を逃れたが、その場所は地面プレートを割ったように隆起させていた。

 そして、その攻撃による発生した衝撃はこの工場を揺らしていき、もともと強度が低かった個所から倒壊。赤鬼の場所も倒壊した。


 周囲に砂埃が一斉に舞う。視界を覆い隠し、嗅覚を潰すようにホコリ臭さが漂っていく。

 私は吹き抜けになっている工場の二階の通路側に避難したとはいえ、ここまで広範囲だと――――――何か来る!


 私はその場から離れるように跳躍した。思わず赤鬼かと思ったら、それはただの倒壊した一部の瓦礫だった。なら、赤鬼はどこに?

 すぐに手袋で確認する。すぐ近くにいた。私の右側の柱越しに。謀られた!


「がはっ!」


 赤鬼は柱を壊しながら私を殴った。

 幸い、柱が邪魔をして直撃を待逃れたが、それでも柱ともども壁に思いっきり叩きつけられた。

 その勢いでラヴァリエを手放し、それは私の具現化の集中力が切れたことにより消滅していく。


 私は柱ともに壁を伝って地面へと落ちる。痛い、痛い痛い痛い。それに怖い。

 ああ、死ぬのかな。死んじゃうのかな。まだ全然何も出来ていないっていうのに。

 まだ私は凪斗に全然恩返しが出来ていないというのに。


 赤鬼がゆっくりと近づいて来る。能力を使わなくても殺せるらしい。

 確かに殺せる。自己治癒力を高めるにしても集中力がいるし、時間もいる。

 だけど、痛みと恐怖で集中力が湧かないし、一人だから時間も稼げない。

 ここで終わるのは嫌だな。


 赤鬼の手が伸びる。私の頭を握りつぶそうというのか。

 いや、あれだけやったんだ。簡単に殺しはしなさそうだな。

 死にたくない。死にたくないよぉ。まだ凪斗のそばにいたい。


 思わず涙がこぼれ、小さく呟いた。


「助けて、ヒーロー」


―――――――二斬を泣かす奴は許さねぇ!


 不意に頭に響いた声。幻聴かと思ったけど、目の前には凪斗(ヒーロー)がいた。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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