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最終話 また進むべき一歩のために

「よし、お前ら西月宮区でファンタズマ二体による殺傷事件があった。たまたまその場にいた警察官がすぐに連絡してくれたが、事態は緊迫してる。早急に迎え」


「「了解しました」」


 俺と結衣は所長の言葉に敬礼で答えるとすぐさま準備に取り掛かる。そして、事務所を出ていくと免許取り立ての車に乗ってすぐさま現場に向かっていく。


 すると、助手席に座る結衣が不意に聞いてきた。


「体の方は大丈夫?」


「大丈夫だって。もうあの事件から半年も経ったんだぞ? 自己治癒能力も高まってるこの体ならとっくに大丈夫」


「そ、なら良かった」


 そう言って結衣は車窓から見える景色に目を移した。

 先ほども言ったが、あれだけ大きな事件があったというのに時は瞬く間に過ぎていき気が付けばもう半年。


 そして、結衣が見る景色には大分復興した事件現場があった。どこもそこも人やトラクター、ショベルカーが動いていてほんとお疲れ様ですと迷惑かけてごめんなさい。


 とはいえ、半年の割には所々に建物が見え始めてるのはここが開発都市ということもあり、周囲からの援助金が多かったというのが挙げられる。


 加えて、白くなった黒丸製薬からの物資供給もあったことで半年でもう八割方は元に戻っていると言えよう。


「私達が見てきた景色はどんどんと過去になっていくんだね」


「まあ、それが大人になるっていう奴なんじゃねぇの? とはいえ、大人がどんなのかわからないけど」


「私もわからない。でも、少なからず理一さんや金剛さん(おじいちゃん)は大人に見える」


「所長は? あの人も一応大人と呼ばれる年齢だけど」


「所長はなんというか......基本愚痴を言いながら事務処理してるからな~」


「あ~まあ、それを見たらね」


 俺はその風景が頭の中に思い浮かぶが強く言うことは出来ない。なぜなら、所長がやっているのはいわゆる戦後処理というものなのだから。


 凶悪的なファンタズマを討伐したという功績を称えられたものの、上層部の方にその手柄を半分横取りされたような形になり、そのくせそれらの処理は押し付けられたとか。


 まあ、それは愚痴ぐらい言っても文句は言えませんよな~。

 その日から所長の目標が「トップになって肥えた豚どもに粛正を与える」というのはここ東京支部だけのシークレット情報である。


「凪斗はさ」


「ん?」


「自分でヒーローになれたと思う?」


 結衣が車窓に視線を向けたままそう聞いてきた......いや、車窓に反射した俺を見てるな。にしても、またどういった思い付きでそんな質問を?


「どうだろうな。正直、あんまりなれた気はしない。最後の戦いだって親父の力がなかったらどうにもならなかったわけだし」


「私は......凪斗はなれていたと思う」


「......」


「凪斗はいつも危険の最前線で戦っていた。私達が危険になった時もすぐさま駆けつけて来た。それがどれだけ私達の希望となっていたかわからないでしょ?」


「そん時は大抵目の前のことにかかりっきりだったからな」


「凪斗は、うん、確かにヒーローだった。少なくとも、私にとっては。ずっと昔から」


「......そっか」


 なんとなくむず痒い気持ちになった。またそれと同時にとても嬉しかった。

 誰かを助けられてる実感が湧いてくるし、それがまた結衣だったからというのもあるかもしれない。


 俺は自分でも不甲斐ない場面が多かった気がする。思い返せば反省点ばかりだ。あの時、もっと上手く動けていただろうと思うばかり。


 それでも、そんな俺でも誰かの助けになれていたとしたらこれほどまでに嬉しいことはない。


「到着だ」


 俺は現場近くに車を止めると降りていく。そして、気合を入れるように少しネクタイをきつく締めると結衣に告げる。


「まだまだ憧れのヒーローには程遠いが、今日もまた一歩でも多く進めるために頑張りますか」


「うん。行こ」


 そして、俺達は走り出した。

 閻魔を倒した後もまだどこかでゲートは繋がっていてファンタズマが跋扈し、守るべき一般人を傷つけている。


 そんなファンタズマの脅威から人々を守るのが俺達、特殊任務警察官―――略して“特務官”の仕事。

 俺達の仕事はまだまだ終わりを見せることなく続いていく。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


これにて完結です。

今度は異世界ジャンルで新しいのを始めますが、読んでくださると嬉しいです。

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