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第182話 最終決戦#2

 俺自身の発生させた電気エネルギーの暴発をゼロ距離で閻魔に食らわせてやった。これでだいぶダメージを与えることが出来たと思うが......完全に仕留めたという手ごたえは感じない。


 一旦、その場から離れて黒煙湧きたつその場所を観察した。すると、その煙の中で揺らめき動く存在を確認する。恐らく、閻魔であろう。


 煙から出てきた閻魔はボロボロであった。全身がススで汚れていて、所々には感電と爆発による火傷。とりあえず、大きな一発を与えたってところか。


「クソ.......なぜだ? ニ年前ではお前は俺の速度を目で捉えるだけでやっとだったはず......」


「二年さえあれば人は成長すんだよ......と言いたいが、それだけでお前に勝てるほどうぬぼれちゃいない。

 この強さはお前の部下であるカーロストがくれたものなんだぜ?」


「なに?」


「あいつはお前へと献上品として俺の能力を最大まで引き出したうえで捕らえて渡そうとした。だが、その過程であいつは俺に力を与えてしまった。

 ホルダーになるということは一度は自身の潜在能力の百パーセントを引き出すということだ。それをあいつは俺にもう一度やらせた。それだけだ」


「能力のキャパシティが上がったということか......クソ役立たずめ」


「それだけじゃない......が、これ以上話してやるつもりもないんでね。お前をこのターンで仕留めてやる」


 俺は一瞬にしてその場から消えると閻魔へと肉薄していく。そして、大きく振りかぶった拳をストレートに振るっていった。


 それに対し、閻魔は俺の目の前で右手を向けて、さらにワープ穴を作り出す。恐らく、俺の拳をワープに通して顔の横辺りにでも出すのだろう。カウンターってな。


 そして、俺が怯んだうちに残りの五本の腕で捕らえて殴る。だが、お前の部下の尻ぬぐいはそう簡単にできるもんじゃないぜ!


――――パリィンッ


「な!?―――――ぐふっ!」


「おらあああああ!」


 俺の拳がワープ穴に触れた瞬間、ワープ穴は粉々に砕け散り、そしてそのまま拳は閻魔の顔にぶっ刺さる。


 拳に感じる感触。それをできるだけ維持するようにしつつ、思いっきり振り抜いた。

 吹き飛んでいった閻魔は地面に残る瓦礫の山に次々と突っ込んでいき、そのまま通り過ぎてもなお勢いは止まらない。


 俺は閻魔に追いつくように走り出す。きっと雷が尾を引いて動いているように見えてるだろうな、皆からは。まあ、自身が光になるでもなければ、まず一番の速度だと俺も思う。


 そして、閻魔の背後へ回り込むと両手に雷エネルギーを溜め込んでそのまま拳を握る。それから、閻魔の迫りくる背中めがけて力を溜め込んだ両拳を叩きつける。


「がっ......!」


 閻魔に拳が触れた瞬間、閻魔の胴体を通り抜けて横に雷が伸びていく。それと同時に閻魔は大きく体をのけぞらせていき、再び反対向きに吹き飛んでいく。


「食らいやがれ――――神壊雷」


 俺は右手を上空へと突き上げて雷を飛ばしていく。すると、空を覆う曇天が雷雲となり、青白い光を明滅させ、激しい音を轟かせる。


 そして、俺は閻魔に狙いをめがけて右手を振り下ろす。その瞬間、空からは一番の光の輝きと轟き音をさせ一瞬にして落ちてきた雷が閻魔へと直撃した。


「がああああああ!」


 雷の圧力で地面に叩き伏せられた閻魔は撃たれた雷に激しい声を振りまいていく。

 さすがにこの雷の威力だと消失してもおかしくない......が、雷が終わったその場所には体から煙を出しながらも肉体を残す閻魔の姿があった。


 閻魔のファンタズマとしての自己回復力が凄まじい。恐らく、この雷をもう一度放った所で結果は変わらないだろうな。もう少しダメージを削る必要がある。クソ、なんてタフさだ。


 閻魔はピクリと指を反応させるとその指を立てて地面を抉るように握っていく。そして、両手を地面につき体を起こすと四つん這いになり、さらに片足を立てて立ち上がる。


「おかしい.......」


 閻魔は何かを呟いた。そして、六本ある全ての手で頭を抱えると再び錯乱したように言葉を重ねる。


「おかしい.......おかしい、おかしいおかしいおかしい! オレは最強のファンタズマだ! この世界に君臨すべし存在だ! なのに、なぜ! オレがこれほどまでに押されている!?

 やはり天渡か!? 天渡の血か!? ずっと、ずっとずっと前からオレを邪魔するのはやはり天へと渡る道を守る門番か!?」


 閻魔が奇妙なことを口走っている。“ずっと前”? それほどまでに強調するということは恐らく親父と戦った以前の話になるが......それはおかしい。


 だって、閻魔は時空科学研究所の事故によってやって来た異界のバケモノであるはず。その言い方だともともとはこの世界にいたということになってしまう。


「なぜだ! なぜだなぜだなぜだ! どうしていつまでもお前、お前達はオレの邪魔をする!? だから、お前の血を取り込んで終わらせたと思ったのに!? なぜ、まだその血は生きているんだ!?」


 その瞬間、閻魔はふと止まり突然静かになる。そして今度は盛大に笑い始めた。


「ハハハ! 何を怯えていたんだオレは! だったら、あるもの全てを壊すか食らえばいいだけだ! これまでとなんら変わりない! そして、それを成し遂げた時こそオレは世界の頂点に立つ!」


 地面が大きく揺れ始めた。地震かと思ったが違う。この揺れは閻魔自身が作り出した振動。そしてその瞬間から、閻魔の様子が変化し始めた。


 全身が割れるようにヒビが入り、その日々から赤い光が漏れ出している。もうこれは嫌な予感しかしないよな。ゲームで言えばボスの形態変化。


 だが、こんな所で律儀に待ってやれる殊勝な心は持ってないんでね。その無防備な隙に全身全霊を―――――くっ、地面の揺れと壁のように覆いかぶさる風で近づけない。この感じは不味い。


「ハハハ! 壊して食って! それだけで済むなら今すぐに終わらせてやる!」


「......!?」


 その瞬間、閻魔が大きくなり始めたとともに真下の地面が大きく揺れ、やがてある程度の大きさを保ったまま浮き始めた。


 地面だけじゃない。半壊した家や横倒しになっているビルなどが重力を無視して動き始める。

 俺はその地面の一部に乗ったまま宙にどんどんと上がっていく。その一方で、閻魔は自身の体を見る見るうちに大きくしていった。


 やがて、閻魔はある程度の所で止まった。と言っても、大きさは約七十メートルほどあって、俺達がいる浮いた地面も約五十メートル付近だ。


 閻魔は全身を青黒くし胴体を地面から生やしたような感じになっており、六本の腕は長く太く鞭のようにしなっていた。


 顔はもはや親父の面影も感じさせず、巨大な一つ目に口があるだけで、胸のあたりには巨大な赤いコアのようなものがある。


 恐らく、あの場所が弱点......ってさすがにゲーム脳過ぎか。でも、恐らくあの場所を叩ければ一番いい気がするが......あそこまでどうやって近づくんだ?


 丁度俺達のいる位置の正面ぐらいに赤いコアがでかでかと目に入ってくる。けど、それまでの距離にはざっと三十メートルほどの距離がある。さすがに一歩の蹴りで届く距離じゃない。


「さあ、本当の戦いを始めようか......!」


 閻魔はニヤリと大きな口を歪めて、巨大な瞳をこちらに向けながらそう告げた。

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