第180話 現れる希望
――――二斬結衣 視点――――
私達の戦いに参戦してくれた刃那さんとヤガミ。これにて、閻魔とは五対一になるわけだけど、それがどれほど通用するか。
しかし、そんなことを考えている暇はない。私に今ある使命はきっと戻ってくるであろう凪斗のために時間を稼ぐこと。そのことを分かったように刃那さんも声をかけて来る。
「それで、私達はきっとどうせ来るであろう凪斗君のために少しでも閻魔の体力を削れたら御の字ってとこ?」
「そうですね。所長は『どうせ何言った所でここに来るだろうし、加里奈がそうするし』って移動中言ってましたからね。少しでも回復させるためとはいえ、随分な嘘でしたけど」
「となれば、先輩のためにも私達全員生きてなきゃダメですね」
「今度こそ凪斗さんにバチっとバトンを渡す番です」
「ハッ、凪斗、凪斗ってうるせぇな。俺がぶっ殺してそれで終わりだ」
全員の士気は高まっている。これも凪斗が繋げてくれた縁なのだろう。まさか敵であったヤガミも味方になってくれると思っていなかったけど、こっちにとっては好都合。一矢報いてやる。
すると、そんな私達の様子を見て閻魔は嘲笑うようにして告げる。
「そんな有象無象が集まった所でオレには勝てない。最凶である俺がさらに最強のホルダーの肉体を手に入れたんだからな!」
「寝言は寝て言え。俺にぶっ殺されてお前は終わりだ!」
ヤガミが走り出す。それに合わせて私、愛依、刃那さんが続いていき、後方からは来架がアンチマテリアルライフルを地面に伏せながらセットしていた。
「おらぇ! まずは一発食らいやがれ!」
ヤガミが常人よりも遥かに引き出された身体能力で駆け抜け、閻魔へと肉薄すると右拳を鋭く突き出した。
「軽いな」
しかし、その拳は閻魔に左手一本で受け止められ、そのまま閻魔に逆の手で殴られて吹き飛ばされていく。
だが、その間に空中に無数に展開させた剣と地面を凍てつかせる氷が閻魔を地面と空から板挟みにした。
「氷獄」
「剣流閃」
空からは剣が降り注ぎ、地面からは針のように氷が隆起する。氷月姉妹の合わせ技である。しかし、その攻撃が始まった時には閻魔はその範囲から抜け出して、逆に私達に接近してきた。
そして、正面の私に接近すると右手を手刀の形にして胴体を貫くように突き出してきた。それを私はゆーちゃんといーちゃんに分かれると閻魔の左右に分かれる。
私の能力は二人に別れようと全く同じの人物であるため考えがバラバラになることはない。故に、閻魔を通り抜けた私達はそのまま両手に持った鎌の柄を振り抜く。
「おっと危ない危ない」
だけど、その鎌は閻魔の左右の手でガッチリと掴まれて動かせない。でも、私達の攻撃はそれだけじゃない。後からすぐさま氷月姉妹の鋼の剣と氷の剣が閻魔の首を切り落とさんと迫る。
「さすがに腕が足りないな。なら、増やせばいいだけか」
「「!?」」
その瞬間、閻魔の肩甲骨から真っ黒い第二の腕が生えてきて、それぞれの腕が刃那さんと愛依の斬撃を受け止めていく。
これで私達の攻撃は通らない。でも、私達の数はまだ二人いる。
二人の攻撃が第二の腕によって止められてから数秒も満たないうちにドンッという音が聞こえてきた。その音に合わせて閻魔を逃さないように武器に力を込める。
そして、閻魔に近づいてくるは戦車すら貫くと言われる最強の銃の一つと呼ばれるそれはもはや視認できないスピードで空気の間を螺旋回転しながら閻魔に向かっていく。
「ふんっ!」
その銃弾が見えてるかのように閻魔はさらに真っ黒い第三の腕を生やして銃弾を受け止めようと挟み込んだ。しかし、その圧倒的貫通力は閻魔の手を貫通して、そのまま胸の中心に風穴を開ける。
「全員底から離れろ!」
瞬間、ヤガミの怒号が聞こえてきた。そして、私達が離れると銃の衝撃でノックバックした閻魔にヤガミが近づき、追撃とばかりに顔面に強力な一撃を叩きこんだ。
それは大きく顔の左半面を陥没させるほどの威力で良くて顔の左側の骨は粉砕しているだろう。それに心臓は来架が確かに打ち込んだ。
しかし、私達の一撃を与えた僅かな喜びはすぐに絶望色へと染め上げられていく。
ヤガミの強力な追撃を受けた閻魔であったが、大地に食い込ませるほどのブレーキをかけて吹き飛ばされることを阻止。
「効いたぞ。今のはな」
そして、三本の右腕を合わせて作り出された大きな拳に炎を纏わせ、空間を殴る。その瞬間、ゴッとなりもしない音がするとともに衝撃波に乗った炎が私達を襲った。
避けることもままならないスピードで炎が全身を包み込んでいく。焼けるジリジリとした痛みはない。むしろ、激痛が走るように鋭い痛みが断続的に続いてく。
それから、衝撃波で体は簡単に吹き飛び、熱を感じる地面に打ち付けられながら転がっていく。げほっげほっ、もはや一撃で満身創痍。全身が火傷を負っている。
マギの防御でなんとか耐えれたけど、熱までは防げなかった。痛い......もう武器を握ってる時ですら常に痛みを感じるし、手に何かを持ってる感覚がまるでない。
「おいおい、まだ俺の本来の能力は見せてねぇぞ?」
「全員、周囲を警戒しなさい!」
刃那さんが声を張り上げてそう叫ぶ。その直後、私の正面に突然黒い空間ができ、僅かに蠢く。そして、そこから飛び出してきたのは閻魔の黒い腕であった。これは閻魔のワープ能力!
「ぐふっ!」
いつもなら避けれたかもしれない。でも、今は痛む全身に体の反応が遅れて閻魔の一撃が腹部に突き刺さった。
手の形が手刀出なかったのが不幸中の幸いか。しかし、その一撃は私の内臓を傷つけて、口から吐血させるなんてことを簡単にやってみせた。
その衝撃に体が吹き飛び、再び地面に転がっていく。その僅かな空中移動で見えたのは全員が一斉に攻撃をされているということ。
六本の腕が丁度それぞれ一人ずつ狙っていたらしい。空中で跳ねあがっていたり、地面に叩きつけられていたりと様々な形で仲間全員が攻撃を受けていた。
「こんなことも出来るぞ」
閻魔は六本の腕を正面にかざし、そこに巨大な火球を作り出すとともに、黒い輪を作り出していく。
そして、その火球を輪の中に放り込むと消え、次に現れたのは私が見ていた遥か高い空の上。
「隕石降らし」
空中に浮かぶ黒い輪から飛び出した火球は一気に爆発すると周囲に全体に炎の塊が地面に降り注いでいく。
その塊一つ一つが尾を引くように炎をなびかせながら、地面に着弾すると同時に再び爆発して地面を一時的にマグマのように一部を赤くさせて凹ませる。
ランダムに広範囲に降り注ぐそれは周囲をやたらめったら凹ませ爆発させて、この場所が火口付近であるかのように気温をグングンと上げていき、呼吸するだけでも辛くなってきた。
そして、その炎の塊が私の近くに着弾し爆風で再び吹き飛ばされていく。
全身の痛みを堪えつつ、地面に手を置きなんとか立ち上がろうと踏ん張っていく。しかし、どこかで着弾した際に地面に伝わる振動でバランスを崩し転倒。そこに真上からの炎の塊が。
当たるかと思った瞬間、その塊は天から降りそそいできた雷によって空中で砕け散り、私の両脇を通っていくように避けていった。
その雷で確信した。一体誰が来たのかを。そして、どこか諦めかけて抱いていた絶望感が払しょくされるように光に包み込まれていくのがわかった。
「凪斗......!」
次々と炎の塊が雷で撃ち落とされていき、それがまるで登場に対する派手な演出をするように辺りに火花が散っていく。
「ようやく来たか」
閻魔が不敵に笑い、淡々と告げた。それに対し、凪斗はシンプルに言い放つ。
「決着をつけに来た。親父......いや、閻魔!」
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