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第163話 光ある所に影は差す

――――二斬結衣 視点――――


「人がファンタズマに......」


「二年前はファンタズマを操る存在が現れただけでも大騒ぎだってのに、ついにはそんな時代になっちまったんか」


 愛依と理一さんが礼弥(兄さん)から聞いた言葉に各々感想を述べる。

 その一方で、兄さんは机に表示されている地図を見て説明を続けていく。


「もちろん、最初は目撃者の気が動転しての可能性があった発言であったから信ぴょう性は薄かったけどね。でも、次に南の方で、その次には西の方で同じような証言が多数出てきたんだ」


「しまいにはうちの来架が人がファンタズマに変化するところを目撃したんだからな」


 所長の言葉に来架がコクリと頷くとその当時のことを話していく。


「私も驚きました。目撃したのは丁度ファンタズマになる前の男性でのどを掻き毟るように苦しみの声を上げたかと思うと突然形がボコボコと変化して、あっという間に人型のファンタズマとなりました」


「そのファンタズマはどうしたの?」


「暴れる前に速やかに処理しました。元が人であるだけに良心が痛みましたが.......」


「仕方ないことじゃよ。ワシらの仕事はファンタズマから人々の生活を守ること。ファンタズマとなり果て、人を傷つけた事例があるのだから来架ちゃんの判断は正しい」


「それで、その人の身元とかは調べたの?」


「ファンタズマとなった肉体は灰になって消えてしまいましたが、その人が持っていた遺留品が残っていたのでそこから調べてみればごく普通の人でした。過去にも黒丸製薬に関わった人物ではありません」


 来架の言葉に所長は考えるようにあごに手を付けると思いついた考えを告げる。


「となれば、第三者が人を何かでファンタズマに変えた.......もしくは、黒丸製薬の販売していた薬品にファンタズマの種となる何かがあったのか」


「うっわ、こえぇ。でも、その後者であれば、とっくの前に俺達ファンタズマになってね? 多少なりとも黒丸の薬を使ってたりしてるだろうし」


「そっちで考えれば、もしかしたら抵抗力とかがあったのかもしれないな。薬のカプセルに入れるほどの代物だから小さく、それに胃酸に耐えれるほどのだからな。

 いくら風邪を引いてる時であろうと胃酸にそうそう勝てるものなどない。まあ、ファンタズマという異界から現れた生物を人間の基準で測るもんじゃないだろうけどな」


「それなら、前者の方は? そっちならよっぽどファンタズマになる可能性は高いと思うんですが」


「それに事例はある」


 私の言葉に全員が私の方を見る。そして、全員が顔を暗くさせた。その根拠の元になるのが二年前の黒丸製薬の地下施設爆破であるからだ。


 あの爆発によって地下施設にあった数々の証拠は闇に葬られた。

 特にあの施設で見た鬼のようなファンタズマとは違う、人の皮を剥いだような筋肉のかたまりのファンタズマはきっと人がファンタズマになった慣れの果てであろう。


 それに何より首謀者のカーロストが人間をファンタズマにするということを言っていた。ただその首謀者が......


「カーロストはもういない。あの時、巨人ファンタズマに薙ぎ払われてたし、仮に生きていたとしても歩けるような体じゃなく、爆破に巻き込まれてどっちにしろ死んだと思う」


「そうだな......となれば、あいつに関わる誰かがあいつの意思を引き継いだというのか?」


「可能性はなくはないじゃろうな。なによりあのカーロストという男は手広く人脈を伸ばしていたようじゃし」


「それになぁ、何を使ってってのがさっぱしだし――――」


「それなら、わかってるわよ」


 所長、金剛さん(おじいちゃん)、理一さんの話に割って入ったのは加里奈さんであった。

 加里奈さんの突然の言葉に思わずこの場の空気は固まる。なぜならそれは知っていて隠されていたということになるから。


「実のところ守秘義務が働いてたんだけど、あなた達だし言っちゃうわね」


「守秘義務だと......? 国民を守る以上の秘密があったとは驚きだな」


「そんな怒らないでよぉ~。だから、こうして良心の呵責に耐え切れなかった私が言うわけだからさ」


「んまぁ、確かに。結局、加里奈も仕方なかったってことだろ?」


「そうそう、りっちゃんわかってるぅ~! ってことで、言っちゃうとその正体はワームよ」


「「「「「「ワーム?」」」」」」


 全員の声が一つに揃う。ここまで揃ったのは珍しい。とはいえ、事が事なのでここで茶化すのはやめよう。


 すると、加里奈さんはスマホを取り出して操作していくと画面を上向きにして一つのホログラムを映し出した。


 そのホログラムには目がない口が大きく開いた芋虫のようなものが映し出されていた。これが人をファンタズマにしているワームなのか。


「これが今巷で話題になっている事件の犯人。体長一、二センチほどの大きさで、肉を素早く食いちぎるような鋭い歯を持っているのが特徴。

 こいつが心臓まで素早く到達すると言わば、蝶へと変わるように心臓で繭を作り体をドロドロに溶かすの」


「それじゃあ、そのサナギから羽化した姿がファンタズマということか」


「そゆこと」


「それじゃあ、異界から現れたゴーストのような姿は?」


「あれは死んだ人に入り込んでその(うつわ)に残る霊魂を肉体へと変えてってのが今の仮設。まあ、科学者なのに随分とオカルトじみたことを言ってると思うけどね。

 でも、別の説としてはあの姿はこのワームが何も媒体にせずに羽化した状態というのもある。そして、そのゴーストは他種にワーム(子孫)を植え付けてそのゴーストは自滅。

 代わりに、それが肉体を得た姿が今の私達がいうファンタズマ」


 その言葉に全員が言葉を失う。仮説とはいえ、元がワーム......いわば寄生虫のような存在であったなんて。


 カーロストは人類にこの寄生虫を植え付けようとしていたってこと!? あの男の狙いは半人半ファンタズマらしかったけど、そんなの出来るはずもない。


 いや、そもそもあんな奴の思考を理解できる方がおかしい。あいつはただのバイオテロリストだ。それ以上でも以下でもない。


「よくそこまでのことを知っているな」


 所長の声色が少しだけ変化した。まるで加里奈さんを訝しむように。その反応はあまりにも意外であった。


 なぜなら所長と加里奈さんは同期で今でも親交がある人物の一人であったはず。確かに、随分と詳しいことを知ってるとは思ったけど......。


「所長、ここで疑心暗鬼になってはダメです。その言い方だとまるで加里奈さんがスパイであると言ってるようなものです」


「あ、あぁ、確かにそうだな。すまんな、加里奈。妙なことを口走って」


「いいわよぉ、別に。今がこんな時代じゃ誰がファンタズマになるかもわからないし。それにそういう乱れた時こそ心も乱しやすいというもの。

 特にあなた達は二年前の黒丸製薬の事件を重く捉えてるんだから、今は今できることに集中しちゃいなさい。仲間を信じて、ね?」


 加里奈さんは朗らかにほほ笑む。その笑顔に私達はこの二年間ずっと支えられてきたんだ。加里奈さんを疑うべきじゃない。


 私達は加里奈さんの顔を見ながら頷くとすぐさまファンタズマが発生しやすい条件やその共通性について議論し始めた。


 しかし、そう時間は経たずにこの関係性が崩れるカウントダウンは始まっていた。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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