第158話 GP-666撃破戦#2
天井から光る巨大な閃光は衝撃波と天井のがれきを伴って雨のように地上に降り注ぐ。
間一髪間に合った。とはいえ、この施設に大きな損傷を与えてしまったことには変わらない。
ターミナルの方は!?.......どうやら無事のようだ。大きな損害があった箇所は見当たらない。
それにしても、あのロボット割に早いチャージでとんでもねぇ威力の砲弾を撃ちやがる。
それにあいつのボディはやっぱり固い。しかも、頭に近いほどかなり。それにゆーちゃん、いーちゃんのような鋭さを持った刃でもなければあいつのボディを傷つけることはできない。
「けど、ロボット......それも人型であるならばどうしても作らざるを得ない欠点があるよな」
昇降台に戻った俺はロボットを見ながら呟く。ロボットの方もどうやらようやくこっちをターゲットにしたようで顔をこちらに向けている。
恐らくあのロボットの命令では「ターミナルの破壊」が最優先事項となっていたのだろう。しかし、それが俺達によって阻止された。
優秀なAIが搭載されているが故に、ターミナル破壊が出来なかった先ほどのことを学習して俺達を先に排除した方が目的を達成できると踏んだのだろう。
「凪斗、これからどうするんだ?」
「凪斗さんの一撃でターミナルこそ破壊を阻止できましたが、肝心の相手にはまともにダメージが与えられてないです」
「大丈夫。その作戦を今から通信で教えるからとにかくチャンスを増やすように立ちまわってくれ」
そして、チョーカーを通してザッと内容を話していく。その作戦を聞いた二人は目線をこちらに向けてコクリと頷くとそれぞれ挟み込むように動き始めた。
まず仕掛けたのはゆーちゃんの方だ。ゆーちゃんは「こっちだ!」と注意を向けるように声を出しながら、ロボットの左手に回るように跳躍する。
それに対して、ロボットは当然反撃の構えを見せる。制空権がそちらにあることを完全に理解しているように近づくことはせず、左手からミニガンの銃口を出し銃撃の構えを見せる。
だが当然、撃たせるわけにはいかない。そこで俺がこの場からロボットに一気に直進するように跳躍する。
その軌道に合わせるようにロボットが右手を向けてくるが、その右サイドから同じようなタイミングでいーちゃんが飛んでくる。
そして、いーちゃんが俺に向けられた右腕の関節に鎌の先を突き立てながら下に向け、その間に俺は右手から電撃を飛ばしながらロボットの左手につなげていく。
それから、自分の懐から小さな金属の破片を取り出すとそれにも電気を通して強力な電磁石へと変化させて、ロボットの手から伸びた銃口に向かって投げ飛ばした。
それが銃口に直撃するとロボットがゆーちゃんに撃とうとした瞬間に一気に暴発。左手の一部を破壊した。
しかし、これもあくまで作戦の一部。そして、爆発にも臆せず突っ込んだゆーちゃんは同じように右腕の関節に鎌を突き立てる。
二人が鎌を手放してロボットから離れていくと俺はそのままロボットに向かって跳んで捕まり、振り落とされないように両足で頭をガッチリ組んで、肩に座る。
「うおおおおおぉぉぉぉ!」
だが、ロボットもすぐに俺を振り落とそうとグルグルと高速回転。凄い回転だ。遠心力で吹き飛ばされかねない。
それに関節に突き立てた鎌を抜けてしまうかもしれない。だったら、根性で耐えながら両腕についている鎌に向かって高圧電流を思いっきり流し込む!
「お前が完全に電気を防げるようになるだったら、ただの丸い金属になることだな!――――超放電!」
俺を中心に球体状の電撃結界が出来上がる。エンテイとの戦いから反省してもっと自分の能力をコントロールできるようにした結果だ。
範囲を限定的にしてさらに威力を高めたとっておきの一撃の一つだ。
それとここまでで俺の作戦を話しておくとこんな感じだ。
俺がまず着目したのはこのロボットが人型であるということ。
一見全身に鎧を纏って電撃も刃も通さない最強の鉾と盾を揃って持ったような存在だが、その盾である鎧が弱点を生み出してるといえる。
鎧というのはどうしての人が手足を動かすための可動域の確保が必要となる。首であったり、脇であったり、肘関節、手首もそうだ。
動かすためにはどうしても必要なその範囲は絶対に鎧で覆えない部分なのだ。つまりは人型を模したこのロボットにも同じような弱点があるということ。
それを踏まえての作戦がまずゆーちゃんが最初陽動として動き、いーちゃんの動きに合わせて俺も陽動として動く。
俺の方が速度としては上なので俺が先にロボットに届く。となれば、当然ロボットも俺に攻撃を合わせようとする。
しかし、すでに左腕はゆーちゃんのために使っているので、俺のすぐ後に迫ってくるいーちゃんに対して右腕は狙えない。
加えて、機械であるが故にこっちの行動の裏をかくという心理戦はロボットにできない。逆に俺達はロボットは効率を重視して動くということを知っている。
だから、俺の方がロボットに近かったが故にその右腕はいーちゃんに攻撃された。
の間に俺はロボットがわざわざ露出させた銃口に向かって攻撃して弾詰まりを引き起こさせ破壊する。
そして、ゆーちゃんがそのまま左腕に向かって攻撃する。その二人がともに関節に鎌の刃先を突き立てたのはさっきの鎧の弱点を教えたからだ。
それにその鎌の使い道はそれだけじゃない。俺が鎌に通電させることで金属部分である刃部分にも電流が流れていき、刺さっている刃先部分からロボットの防ぎきれない電撃が内側に流れ込んでいく。
結果、ロボットにとって大事な基盤が詰まっているだろう内側が高圧電流によってショート、破壊されていく。
俺の電撃を受けてもなおしばらく動き続けたロボットであったが、やがて浮遊するための機関が破壊されたのか落下し始めた。
背中から倒れていくロボットに俺は胴体で立つように移動すると僅かに浮いた両腕からそれぞれ鎌を回収。両手に持って振りかぶる。
「念には念を、だ」
その鎌を思いっきり横にスライスして狙った場所はロボットの首部分。そこもわずかながら隙間があるのだ。
そこに思いっきり刃を突き立てて切断し、ロボットの頭部を切り離す。そして、さらに両肩も切断して頭、両腕、胴体に分けると胴体を足場にして昇降台に戻ってくる。
さすがにあそこまで切り離せば何も動かすことは出来ないだろう。まあ、そもそも先に思いっきり内部を破壊したが。
「もう戻っていい......って戻ってたのか」
「うん、早く追わないとって思って制御盤を弄ってた。カーロストは逃がすと危険だから」
「そうだな」
結衣は制御盤をカタカタと動かすと昇降台を動かしていく。台がゆっくりと上に動き始めて少しすると――――突然爆発音を聞いて、台から大きな揺れを感じた。
『緊急。緊急。ターミナルに重大な損傷。これより緊急プログラムを発動させます。このプログラムは解除できません。
プログラムコード『explosion』。この施設は今から15分後に破壊されます。速やかに避難して下さい』
同じく突然のように聞こえてくる警告アナウンス。この施設が破壊される!? 何で急に!?
俺は咄嗟に台の端によって手すりに手をかけながら身を乗り出す。すると、下に見えたのはバラバラになったロボットの破片。
......まさかあのロボット、自爆しやがったのか!? でも、完全に内部を破壊して......いや、その想定が甘かったんだ。
カーロストはきっと万が一に破壊された時のための対策をしていた。俺はそれを見落とした。クソ!
「凪斗! どうする!?」
結衣がそう尋ねてくる。それはこの施設からの脱出もしくはカーロストを追うの二択であろう。
ここまで来てカーロストを逃せば後が取り返しにならないことになる。しかし、俺はちゃんと時間内に逃げれるのか?
いや、もっと考えろ。相手はこの施設を良く知っている人物。となれば、どこかに脱出用の道を知っててもおかしくない。奴を逃さないためにはその可能性にかけるしかない。
俺は覚悟を決めて結衣に告げた。
「俺はカーロストを追う。結衣だけでも逃げてくれ」
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