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第152話 見え始めた真実

 一先ず先へ進むための道が塞がれてしまっているので、何か手掛かりがないか辺りを探索することにした。


 敵の気配はないので、各々で気になる部屋に入って調べてみる。研究所の中枢に来たせいか濁った液体の中に薄気味悪い生物や腕、目といった体の一部もある。


 実際こういうの見るとハブがまるごと液体につけられてるのと全然変わって見えるな。なんか気持ち悪くなってきそうだから、あまり見ないようにしよう。


 俺が入ってきた場所はまあいかにも研究されていたような機材とコンピューターがあるのだが、そのコンピューターの前には意味ありげな数枚の資料が置かれていた。


「『E細胞の投与実験。一人目男性、年齢十代。体が拒絶反応を起こして死亡。虚弱体質という前提があったので、それが結果に影響か。

 二人目女性、年齢二十代。途中まで驚異的な“進化”を見せたが、その途中で体がもたずに死亡。完全な進化には至らず。

 三人目男性、年齢二十代。最後まで無事予定通りの進化を遂げる。もともと肥満型であった体系が細身に変わっている。体のエネルギーをかなり消費すると考えられる。次に活かせる大事なデータとなる』ってか.......ここまで極悪な奴はほんとに知らねぇな」


 これはまだ資料の一部だ。しかし、これ以上この実験レポートを読む気はない。たったこれだけでも心が果てしなく怒りに満ちていることを俺自身がわかってしまっているから。


 とはいえ、全く成果が得られなかったわけではない。

 この資料によるとどうやらここでの実験は他にもなにかありそうだということ。それは三人目の被験者のレポートだ。


 それが粗悪品だからかもしれないが、もしここの研究所が政府が秘密裏に作っているARリキッドと同じだとすれば、体の変化が著しく変わるような結果にはならないという。


 それに一番気になるのは“E細胞”という何かの略称だ。普通ならば「アストラル」から来る“A”とでも付きそうだし、加えて投与しているのは液体ではなく「細胞」。


 まさしくマッドサイエンティストがやってそうな狂ったような研究所ってことは確からしい。狂った実験レポートの数々だ。


 俺は一旦そこを出て他の場所に向かってみることにした。辺りを見回していると「仮眠室」という場所があった。


 そこには行ってみると二段ベッドの形で人一人の通路を残してカプセル型のベッドがずらりと並んでいる。


 そして、その仮眠室にも死体が転がっていた。見たところ死因は体を銃弾でハチの巣のされたってところだろう。


 まだ時間があまり立っていないのか、辺りから濃い血のニオイが漂ってくる。咄嗟に華を抑えながら何か扉の手掛かりがないか探していく。


 すると、カプセルベッドの中で研究員の一人の首にネームプレートがかけられていた。レベルは3。個々のレベルは確か歩いて探索してる時に見かけて同じレベル3であった。


 ということは、このネームプレートを使えば扉を開けられる可能性があるってことなのか?


「......ん?」


 その時、ふとその研究員の死体のそばで手書きで書かれたような紙が置いてあった。その内容を読んでみると大方死ぬ間際の愚痴であったが、気になる文章もあった。その部分を読み上げるとこうだ。


『研究所が作り出した防衛部隊が一斉に蜂起しやがった! なぜだ!? 一体誰がお前らに力を与えてやったと思っている?

 そいつらの目的は明らかだ。E細胞の独占。前々から怪しげな動きがあったと思ったがやはりこれだったらしい。

 しかし、なぜ今なんだ!? まだこのE細胞で作れた思考の生物兵器は一体しかいないんだぞ? まさかその生物兵器でお前らと戦わせようとでも考えていたとでもいうのか?

 お前らは大事な道具だ! そんなことするはずがない!

 しかし、動いたということは私の権限よりもさらに上の者が動かしたとしか思えない。だとしたら......カーロストのクソジジイ! あいつしかいない!』


 これ以上はあまり有益な情報はなかった。しかし、カーロスト......こいつの名前はどこかで聞いたことあるな。


 どこだっけ? 確かここに乗り込む前に黒丸製薬会社のことを調べて......ってそうだ! カーロストってその製薬会社の社長だった人だ!


 俺は咄嗟にスマホを取り出して黒丸会社のホームページを開いてみる。すると、そこに堂々と金髪に白髪交じりの一見好々爺の人物が映っていた。


 この研究員の言葉からすれば、このカーロストって人がもともと研究所を守るためにいた武装集団をE細胞独占を名目に勝手に動かしたってことか。


 とはいえ。独断的な行動でそこまで唯一のその集団を動かせるものなのか? そもそもその武装集団が律儀に守っていたというのも怪しい。


 まあ、何らかの方法で従わせていたんだろうけど、にしても俺達が突入してくる少し前ぐらいの出来事だよな?

 だって、その武装集団らしき人物は結構見かけたし。それにほとんどが異能より銃を使っていたことも気になるが。


 俺が参考にしているのはヤガミの情報だ。所長も言ってたようにここが違法ARリキッドを作り出している現場であることは確かなのだろう。


 しかし、それだとここまで異能者に出会わないのはおかしい。ヤガミも異能を使えるようになった人がいたと言っていた。


 けど、その考え自体がそもそも間違っていたら? それを確かめるためにも一度来架ちゃんに通信したいけど、ここからって届くかな......? ここってかなり深いんじゃない?


『来架ちゃん、今いいか?』


『――――ガガガガガ......バババババッ......ドガアアアアァァァァン! ......大丈夫ですよ! なんですか?』


『今、明らかに銃撃戦と爆発音が聞こえてきたんだけど?』


 届いたのはいいものの、おもくそ戦闘中じゃん。何を思って大丈夫なのか。


『本当に大丈夫?』


『こういうの慣れてるんで』


 慣れてるんだ。まあ、前に来架ちゃんと組んだ時も言葉に出してるセリフと頭の中に言ってるセリフが全く違うっていう器用なことしてたし、いけるのか? 手短に行こう。


『聞きたいことは単純だ。そっちに敵が流れ込んできたと思うけど、その中で能力を使ってるのは何人いる?』


『え? えーっと、確認しただと四、五人くらいですかね。どれも能力的には弱い部類でしたけど』


『それって何人中の割合?』


『何人......私が交戦してきた人数をどんぶり勘定で表すとざっと三十人以上ですね』


『ありがとう。俺達は今研究所までの中枢まで来てる。まだもう少し粘っててくれ』


『ラジャーです。私にかかればバババンと......ひゃわわわあ!』


『ら、来架ちゃん!?』


 今、切れる直前で爆発音聞いたんだけど大丈夫なの!? 確認なんて行けるはずないから、無事であることを信じるしかないんだけど。


 にしても、来架ちゃんの情報から一つ確証に近い考えが浮かんだ。

 それは特務が掴んだ違法ARリキッドを作っているという事実が誤りであったことだ。

 特務の人達は皆し優秀だ。だから、恐らくその情報を掴まされたと考えるのが自然だ。


 そう考えるのはやはり武装集団の数に対しての違法ホルダーの少なさ。

 異能を使えるようになれば、異能の方が圧倒的に使い勝手がいいし、何より能力によっては銃以上の威力で広範囲に攻撃できる。加えて、身体能力も上がる。


 それを捨ててまで銃にこだわる必要はないし、いざとなれば武器は自分で作成できる。だから、基本特務(おれたち)は無手であるのだ。普通の社会に溶け込むように。


 だからこそ、俺が思うのはこの研究所の本当の目的はARリキッドの違法製造ではないということ。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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