第150話 目指せ最深部#1
十字路の一つの通路からやって来た俺達は残りの三つからの通路から現れた恐らく研究所側の武装集団に囲まれた。
一斉に銃口を向けるそんな中で結衣は巨大な両刃の鎌を持って俺の前に立つと俺をチラッと見る。この次に始めるというアイコンタクトであろう。
「動くな。全身に鉛玉をぶち込まれて死にたくはないだろう。次に余計な動きを見せたらたとえ子供でも撃つ。早く武器を落とせ」
武装集団の一人がそう告げる。しかし、結衣はその脅迫にも似た声色に臆することもなく、まるで誘うかのように左手をジャケットのポケットに突っ込んだ。
――――バババババババッ
その瞬間、三方向から一斉に銃弾の雨が降り注ぐ。すると、結衣はポケットから何も出さずに素早く両手で鎌を握ると巧みな指使いで鎌を高速回転させ始めた。
身体能力が上がっているせいもあるか後ろにいる俺まで風が送られてくるのを感じる。
そして、その鎌によってできた防御は三方向からの銃弾を次々と弾き返していく。
漫画とかで見たことある描写であったが、それをまさか現実で見るとは思わなかったが......一言で言えばすげーだ。
俺はもう近接攻撃がメインとなっているから今更武器を扱うとしたところで、時間もかかるしそんな時間を敵は待ってくれない。
だから、普通に武器を使える人をすごいと思っていたけど、今や結衣の鎌なんて手のひらで動かしているようなものだ。まるで超能力みたいで一体どうやって回しているのか。
普通に考えても全ての銃弾を弾き返すには一定してまるで円形の盾があるように見えるほど回転させなければいけないはずだ。
加えて、銃弾に当たった衝撃でもぶれないその強さはもはや技量だけで相手の攻撃を完全に封じている。
「カチッカチッ......しまった弾が!」「嘘だろ......あれだけ撃って無傷で防ぐなんて......」「ホルダーは本気でバケモノか!?」「早くリロードしろ!」
たった一人の少女に攻撃を防がれてしまったことに武装集団は恐れ慄いたのか声を震え上がらせて、小刻みに揺れる手でリロードをしようとしている。
「凪斗、今」
「OK。任せとけ」
結衣がバックするのと交代するように前に出た俺は両手に電撃を溜め込んで両腕を広げる。
「それじゃあ、しばらく寝ときな」
俺は両腕から電撃を一気に介抱して感電させていく。死にはしないが気絶するギリギリの調整を行って流し込んでいく。
武装集団は基本五人で固まっているので、一人が感電すれば五人が感電し、さらに両端の通路から感電した集団から俺達の正面にいる集団へと一瞬にして感電していく。
全身をビクビクと痙攣させながら床に膝をつけて次々に倒れていく。ちょっと死屍累々にも見えなくないが、大丈夫全員生きてます。
「よし、制圧完了」
「これで次に進める」
俺と結衣はマップを頼りにレベル2のある場所へと向かって走っていく。
しかし、現在俺達が持っているのはネームプレートはレベル1だ。どこかでレベル2以上のネームプレートを探すかアップグレードするしかない。
一応、他にも手段がないわけじゃない。残り少ないハッキング装置だ。それを通行規制がかかっている電子パネルにくっつければハッキングしてくれる可能性がある。
しかし、それを早々に使ってしまうと後半で詰む可能性もなくはない。結衣が機械に強いとはいえ、結衣にも扱える限界はあるだろう。
「ガウガウ!」「シャー!」「ウィーン」
そうこう考えてるうちに犬型と蛇型のファンタズマが複数、そしてドローンが三体と接敵してしまった。
追われるのは面倒だし戦うか? いや、それで時間を食われたら思う壺だ。ここはゲームと違ってやり直しは聞かないし、相手は待ってもくれない。
なら、極力戦闘はなしは妥当な手段であろう。っと、言ってる場合でもなさそうだな!
ドローンに下側に搭載されている。小さい機関銃が俺達へと銃口を向けている。そして、容赦なく射撃を開始しやがった。
鋭いいくつもの弾道が地面に向かって降り注ぐ。咄嗟に飛んで避けたが、ドローンだけはどうやら倒さないとまずいようだ。
圧倒的な飛行能力と機動性でピッタリと感覚を保って銃口を向けてくる。きっと優れたAIも搭載されてるだろうし、今のを学習して調整されたらハチの巣だ。
俺は走りながらリュックを前に背負うとその中からスタングレネードを取り出した。
これを使えばファンタズマから距離を取ることは可能だ。渋っていたが使うしかない。
とはいえ、それではドローンに対してあまり有効ではない。電磁パルス的な武器があれば別だけど、それだと余計な問題も生みかねないしな。
しかし、スタングレネードは光と音を生み出す兵器だ。そして、その光は相手の視力を奪うもの。さすがにドローンに対して効果が薄くても、ほんのコンマ数秒俺を見失ってくれればありがたい。
「結衣、俺に策がある。耳を塞いでてくれ」
「わかった」
結衣は俺の言葉に二つ返事。そんだけ信用されてることはかなり嬉しいなっと!
俺はスタングレネードを後ろに投げてすぐに耳を塞ぐ。その直後、塞いでても聞こえる破裂音と背後から発生した光源によって影が伸びていくのが見えた。
そして、俺は走りながら真上に跳躍し、背後に振り向くと右手を差し伸べて電撃を放つ。機械にとって過剰な電機は致命的だ。壊れろ。
俺が床に着地した時には背後から三つの爆発音が聞こえた。恐らくドローンであろう。加えて、背後にいたファンタズマどももいない。
ほんと銃や爆発物に耐性あるくせに動物の形になったせいで目と耳という弱点を増やしてるんだからおかしな話だよな。
――――ドッドッド
ん? 何の音だ? 俺の心音......じゃないことは俺自身が一番分かってる。そして、聞こえてくるのは背後からだ。
――――ドッドッドッド
少しだけ速くなった? それに聞こえてるということは俺達を追いかけてるということになるよな。
とはいえ、身体強化で走力が上がった俺達に追いつくなんてそれこそ一般人じゃあり得ない。
――――ドッドッドッドッド
それじゃあ、背後から聞こえてくるこの音は.....?
そう思って振り向くとまるで皮を剥いで筋肉丸出しになった巨大な人型の生物がいた。見る限りバイオテロでできたそれだ。ってか、ほんとにタイ〇ントじゃん!
あれもまさかファンタズマなのか? だとしたら、一体何をモデルとしているのか。
いや、それよりもざっと見て二メートル五十センチほどありそうな奴が追いかけて来ているが何よりも問題だ。
すると、そのファンタズマは上半身を前に傾けて右肩を突き出す。まるでラグビー選手のタックル......ってまんまそれだ!
どうする避ける!? それとも距離を取る!? どちらにせよ、早く決めないと正面からレベル2の扉が迫ってくる。
レベル2に行けるネームプレート持ってないし、他にここから突破できる方法は......一つだけある!
「凪斗、ここままじゃ......」
「結衣、少し耳を貸してくれ」
そして、俺は結衣にざっくりと作戦を伝えていく。とまあ、もとより作戦ともいえるか怪しいものだが。
しかし、その言葉に結衣は全く怯む様子もなく「やろう」と断言した。こういう時にほんとにその言葉は心強いな。
俺と結衣はレベル2の扉が見えてきてもギリギリまで走っていく。その間もだんだんと速度を上げて肉だるまファンタズマは追いかけてきた。
そして、俺達がレベル2のドアの直線まで来た瞬間、一斉に両端の壁に寄った。
そのファンタズマは加速していたため急な軌道変更はできずに、レベル2のドアにタックル。分厚い鉄の扉をぶっ飛ばした。
目の前に俺達がいなくなったそのファンタズマが背後に振り向くと同時に俺達は横から抜ける。それによって、再び追われることにはなったが、一時の危機は去った。さて、次はどうするか。
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