第147話 潜入完了#2
――――創錬来架 視点――――
会議室から飛び出した私はアサルトライフルを構えながら廊下を勢いよく走り出しました。
マップを見ても廊下に生体反応はありません。代わりにあるのはドローンと警護ロボット。
数が多いだけに突破は中々に困難そうですね。時間帯が夜であるからまだ研究員が少ないというのが救いでしょうか。
とはいえ、あれだけの数がいるといくらこそこそ隠れていても限界が来そうです。それにこれは三か所同時作戦であるからしてここだけ遅れるとかなり厄介なことになります。
『愛依さん、音出していい?』
『許可します。最短で突っ込んでください。ですが、特務が擁護できないような損害は出さないように』
『アイサー』
なら、ここはスタンちゃんですね。
リュックのサイドポケットに手を突っ込むと私は長細いグレネードを取り出しました。そのままのスタングレネードちゃんです。
ここはT字路の廊下なのでそれを栓を抜いて反対側に投げ込みます。
そしてすぐに、天井にジャンプするとスタングレネードと同時に取り出した金属のインゴットを錬成して手すりへと変えて、天井に差し込みました。
また踵からは仕込み刃を出して同じく天井に刺すことで天井と一体になります。これによって、音に反応した近くの警護ロボットがやってきました。
同じくしてドローンもやってきます。私は踵の刃を錬成してもとの仕込む前の状態に戻すと振り子運動でそのドローンを捕まえました。
後は逃げるが勝ちです。壁を蹴りながら前に進んでいき、手元では抱えたドローンを錬成で機能不全にしていきます。
廊下を抜けると二手の分かれ道、行きたい方向は右側。しかし、先ほどの音を聞いていたのか右側から人の反応がありますね。加えて、ロボットの反応も。
あれが普通のロボットであればペ〇パー13号君のように会話して楽しみたいところですが、今回は敵なので容赦はしません。
とはいえ、行きたい方向に人がいるのはどうにかしなきゃいけませんね。マップからわかる歩行スピードからして行動してるのがわかります。
あえてでしょうね。もしなんかあったとしてもロボットが人を守るように犯人に突撃するようプログラミングされてますから。
となれば、私は右側の曲がり角で待機します。狙いは人の排除及びロボットの機能不全。
ロボットは触れてしまえばこっちの勝ち。先に狙いたいところですが......まあ、仕方ありませんね。そーい、スタンちゃん!
スタングレネードが廊下に投げられた瞬間、激しい光と音で辺りを包み込んできます。
私は目と耳を塞いだので大丈夫ですが、研究員の方は悶絶したように叫びながらしりもちをついています。
衝撃のあたまり思わず座り込んじゃったみたいですね。ほんとごめんなさい。ですが、私にはやらないといけないことがあるのです。
廊下に飛び出した私はロボットのカメラに捉えられます。両目のクリッした部分がなんともチャーミング......っていけないいけない。つい欲望が駄々洩れに。
「ごめんね」
私は警報を鳴らされるよりも先に触れることに成功すると一メートル弱あったロボットの体が半分ほどのサイズの四角形へと変わりました。
私は再び動き出しながらマップを確認します。今の二階で相当の数がこっちに寄ってくるはずでしょうね。
しかし、人を無力化するには必ずなんらかのアクションは行わなければならなかったはずですし、仕方ないことと割り切りましょう。
それにこっちに寄ってくるのは何もドローンやロボットだけではありません。
『ごめん! 相手に監視カメラの権限奪い返された! 私よりも上手のハッカーがいる!』
『ってことは、もうこそこそしても意味ないわけですね』
愛依さんには悪いですが、正直こうなることは予想できていました。信用していないわけではなく、あくまで想定の一つということですけど。
しかし、バレたとなれば仕方ありませんね。半分まではほぼ温存してこれたことですし、いい方でしょう。今度は私のアサルトちゃんが火を吹く番です。
私はアサルトライフルを構えると走りながら正面に来るドローンやロボットを狙っていきます。
弾の節約として三点バーストでいいでしょう。私ののエイムにかかればそれで問題ないはずです。
私はサイトに少しのぞかせると人差し指をトリガーにセットして、一気に引き絞りました。
ダダダンと複数の弾が連続で射出されるとドローン、ロボットと正面から来る接敵物を打ち抜いていきました。
打ち抜かれたそれらは紫電を走らせながらその場で一斉に爆発。誘発も伴ってか割と大きな爆発になっちゃいました。
幸いマップで人が周囲にいないことを確認して撃ったので大きな被害は近くの壁にへこみを作って、窓ガラスを粉砕してしまったことでしょうか。
まあ、この会社の裏が抱えている闇に比べれば些細なことです......と思いましょう。後で請求来たら泣くしかないですね。
正面から来る黒い煙幕を通過すると私は道なりに走っていき階段に上がっていきます。
私がいるのは一階で目的地は三階なので、ここを通らなきゃなんですよね。
正直、どうして通気口からすぐ近くの場所に行かなかったのかと思うかもしれないですけど、なぜかここの会社の通気口二つあったんですよ!
言うなれば、最短の通気口と逆の通気口に入ったわけでして、しかも少し離れた場所に通気口があったんですよ!?
私は通気口に入った後にそのことを愛依さんに教えられました。なので、実は今は遠回りからなんとか最短ルートを通過してる次第なのです。
だから私は愛依さんが監視カメラの権限奪われたことに対して文句の一つも言えません。元から言うつもりもなかったですけど。
そういうわけで、本来だったらもう既に着いていたりするんですよね。時間は私のミスで少しだけ押すかもしれませんが、押さないように間に合わせます。
私は階段のところまでやってくると階段の手すり付近に止まりました。そして、そこから上を眺めるは階段と階段の間の隙間部分。
アサルトライフルが引っかからないように大事に抱えるとリュックを背負ってることも考慮しつつ、大きくしゃがみ......垂直跳び!
階段の隙間を通り抜けながら三階へと行く階段までやってくると手すりに掴まって軌道修正......よし、到着。
これでロボットはそう易々と階段を上がってくれませんし、ドローンに対してもかなり距離を取れました。
しかしまあ、ドローンと追いかけっこしましたが思っていた以上にかなり速かったですね。
ロボットとは違う空中高速移動でずっとピッタリ私の後ろをついていきますし、途中何度かタックルしてきた場面もありましたし。
ですが、三階まで来てしまえば後はこっちのものです。今の階段のショートカットで多少なりの距離は稼ぎましたし、今のうちにいそうで行きましょう。
『三階まで来ました。目標地点発見。これから突入します!』
『わかりました。健闘を祈っています。また何かあれば知らせてください』
『わかりました』
目的のセキュリティ管理室にたどり着くとマップからも生体反応がそれなりにあります。
私はすぐに入り口付近の壁にある電子パスワードにハッキング装置をつけて解除。
そして、管理室に突入しました。
「動かないでください!」
銃口を向けて私がそう叫ぶとそこに広がっていたのは――――一斉に銃口を向けた研究員とは思えない武装集団達の光景でした。
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