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第141話 作戦会議

「もしかしたら違うかもしれないですけどね。単純に取り扱いが危険な劇薬が収められてるとか。まあ、それはそれで問題かもしれませんが」


「だけど、このご時世3Dマッピングの精度は計り知れないからな。この映ってる地図が本当だとすれば、この銀行の金庫みたいな扉の形状はやはり怪しい」


 現状で怪しい情報がそれぐらいであるというのもそうなのだが......まあ、まだすべてを把握できたわけではないけど。


 すると、それに関して来架ちゃんが質問した。


「でも、ここを攻めたら漏れなく警備部隊が動いてきませんか? そもそもここがこれだけ厳重な扉の構造をしてあって、そこを出入り口にしてるのはおかしいと思います」


「確かに。別に入り口があってもおかしくない。バイ〇ハザード的に言えば、改造された下水道のどこかにある」


「いや、現実をバイオ〇ザードで例えられても......」


 でも、正直なくはないと思っちゃったよ。むしろ、戦う相手が製薬会社って聞いたところから「アン〇レラ社か!?」と思ってたし。


「なら、そこら一体の下水道を管理してるところから調べて......と行く予定でしたが、どうやら相手はそのつもりのようですよ」


 愛依ちゃんがカタカタと手早くタイピングして引き出したのは下水道の一部改変工事のデータであった。


 そのデータには下水道の改変に関する依頼が製薬会社からとなっている。どうやら本当にダウトのようだ。おまけに、バ〇オハザード感がますます増した。


「ですが、これ以上は調べるのは無理そうですね。実はさっきから製薬会社のトップシークレットをハッキングしようと頑張っていましたが、そこに関してはどうやら相手のセキュリティの方が上みたいです」


「それじゃあ、そこまでは実際に突入してみないとわからないってことか」


「そうなりますね」


 まあ、どの道施設を叩き潰すというのなら現地に向かうのは必然であったし、手探りももう今更って感じだ。


 そして、俺と愛依ちゃんの話を聞いていた結衣が話をまとめていく。


「一先ず、作戦的にはこう。今回、愛依ちゃんがサポート役に回って、私達三人が突入班。

 でも、少なからず施設と製薬会社とのつながりがある以上、下水の方へ回って下手に侵入すればバレる可能性がある」


「それじゃあ、俺達のうち誰かが製薬会社へと侵入して電力を落としていくとかするのか?」


「そうなる。ただバイオハ〇ードと違って相手の人間は普通に生きてるし、ゾンビ以上に理知的に行動する。

 だから、製薬会社を攻撃したことを施設側が察知するだろうから、その間にパスワードがあればハッキングして侵入する」


「製薬会社の電力をバーンと落として、相手が『なんだ! なんだ!』って思っているその内に抜けるってことですね?」


「そう。施設の資金源は少なからず製薬会社のお金がかかわってる。だから、製薬会社が攻撃されることは研究が出来なくなるということと同じだから、絶対に守りに行くはず」


 相変わらずバイオハザ〇ドで例えるんだな。まあ、いいけど。

 だけど、その作戦は一理あると思うが......正直、あまり俺は納得できる作戦ではない。

 そんな俺の気持ちを愛依ちゃんが代弁してくれた。


「それってリスクが高くないですか?

 突入班が来架、結衣先輩、凪斗先輩の三人だとして、もし結衣先輩の読み通り動いたとすれば、施設側からホルダーが向かってくる可能性もある。さすがに一人では無茶です。

 かといって、製薬会社の方を二人にしたところで、ホルダーやファンタズマがいるとされる魔窟に一人で乗り込ませるのも正気ではないですね」


「でも、愛依ちゃんは同時進行でできないでしょ?」


「まあ、そうですけど......」


「大丈夫。その時には千葉県支部の特務に応援要請してもらえばいいし、そもそもある程度の陽動さえやってくれれば、後は愛依ちゃんと一緒にいてさえくれればいい」


「追っていくというのはなしなのか?」


「なくはないけど......相手側の意識が会社侵入者の撃退の方へと注意が向いてるうちに動くのと施設侵入者側に向いてるのでは動きやすさに大きく違いが出る。

 それに、恐らくだけどそんな秘密裏に研究しているとすれば、その破壊すべき研究施設はきっと入り口から遠い場所にある」


「つまり、陽動側が施設側のホルダーとバババッとやりあってるうちに、突入組が侵入したとして、その後に陽動側が追ってももうホルダーが戻ってきてるってことですか?」


「そうともいえるけど、そもそもホルダーの総数が違う。私達が運よく全員施設に入れても三人。

 対して、相手は未知数であってもARリキッドを作成してるという話だから数は倍以上と考えてもいい。

 なら、むやみな戦いは避ける方向で動いていくのが一番。私達は理一さんや善さんのように真正面から複数を相手できない」


「......わかりました。ちなみに、私はどこで待機を?」


「とりあえず、製薬会社の外の様子が肉眼で把握できる位置に。連絡はこのチョーカーから特殊回線でお願い」


「了解しました」


 結衣の話を聞いて愛依ちゃんは渋々了承した。顔的にはまだ納得いってないような顔だ。

 それにしても、随分と丸くなったものだ。あの時なら、「私がサポートも陽動もひとりでやってみせます」的なことを言ってただろうに。やはりあの事件が大きかったのだろうか。


「それで肝心な陽動は誰がやるんですか?」


「それは俺が――――」


「いいえ、私がやります」


 そう言って俺の声を遮ってきたのは来架ちゃんであった。

 俺がそっと手を上げようとしたのに対して、来架ちゃんは美しいフォームで手をビシッと伸ばしている。やる気満々の様子だ。


 すると、来架ちゃんは自分ができることをアピールしていく。


「こういう潜入・陽動なら何回かやったことがあるので問題ありません。それに、建物となれば金属が多いでしょうしどうにでもなります」


「それってどういう......」


「忘れたんですか? 私の能力は<錬金術師(アルケミスト)>ですよ。金属を私のイメージ通りに武器へと変えるならまだしも、金属の壁をババンと作るとなれば大したことはありません。

 加えて、研究施設のほとんどの人は施設に関与していない一般人。となれば、私が設置した金属の壁を破壊するなんてことはできませんよ」


「確かに......」


「それに恐らく施設側の方が何があるかわからない分、たくさんの危険がバァッと溢れていると思います。

 凪斗さんにはできればそっちに行って欲しいんです。これは凪斗先輩がこの中で一番強いのと同時に、私達の中でどんな逆境の中でも一番信用できる人だからです」


 来架ちゃんは寸分の疑いもなくこちらを見つめてくる。その視線に釣られてか、愛依ちゃんも結衣も同じような瞳で見つめてくる。


 一体いつの間にそれほどまでの信用を得たのであろうか。ともあれ、これほどまで期待されてることを知ったならば、それを無下にすることはできないだろう。


「わかった。俺が施設突入側に回る。そうなると、必然的に結衣は俺と同じ方になるがそれでもいいか?」


「いいよ。私は凪斗が一緒ならどこまでも頑張れるから」


「そっか」


 どうやら話はまとまったようだ。後は実際に現地に向かって様子を見てみるしかないといった感じだな。まあ、なるようになるだな。


 俺は手を勢いよく叩くと全員の気を惹いた。


「よし! 無事に作戦も決まったことだし、ここはいっちょ決起集会といこうじゃないか!」


「ほんとですか!?」


「うん、悪くない」


「いいですね~もちろん、先輩の奢りですよね?」


「残念ながら会場はここですよーだ。片付けとけよ、パソコン」


 そして、俺達のその日の夜は賑やかな夕食をした。

読んで下さりありがとうございます(^ω^)

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