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絶対捜査戦のアストラルホルダー~新人特務官の事件録~  作者: 夜月紅輝
第5章 ギャルゲーみたいになったんだが
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第129話 姉妹ケンカ#4

 拳と剣が入り乱れる。互いが互いの速さを凌駕しようと武器を振るう。

 一撃でも入ればノックバックでも、即死してもおかしくない攻撃を無我夢中ではなく、明確な見切りでもって予測し動いていく。


 段々と防御することもしなくなり、多少のかすり傷や殴打であれば気にすることがなくなってきた。

 俺の攻撃は確かに入ってダメージを与えている。しかし、それはこちらも同じ。


 振り続けた拳も人間である以上僅かながらに速度が落ちていき、そして速さに慣れて避けられる。

 ヤガミよりも一発の威力は軽いが、あくまでヤガミの一撃で比べればだ。


 大男が一撃腹にもらっただけで気絶するような威力を俺の攻撃のほとんどを見切りながら隙あらば反撃してくる。


 厄介というほかない。さすが元特務官というべきか。しかし、ここで負けるわけにはいかない。


「白連針」


 氷月さんは左手をガトリングのような形の氷を纏うと俺達の横に立って、氷月姉に向かって氷を連続発射する。


 それに気づいた氷月姉は咄嗟に距離を取り、空中から剣を召喚し一斉射撃を開始した。


 氷月さんは飛んでくる剣に左手を向けていくつかの剣を撃ち落とすと撃ち落とせず残った一本の剣を避け、右手でその剣の柄を持つと氷月姉に向かって投げ返した。


 氷月姉は向かってきた剣を両手に持つ双剣で弾く。しかし、そこに動いた俺が弾かれた剣を手に取り思いっきり振りかざした。


「おらああああ!」


「ぐっ!」


 その一撃は受け止められる。そして、その状態から咄嗟に繰り出したサマーソルトキックも躱された。

 相変わらずの身のこなしだ。だいぶスタミナは削ったはずだが、やはり侮れない。


「無茶するっきゃねぇな!」


 俺は体にかける電圧を55パーセントまで上げた。ここまでで恐らく今回は限界だ。体がぶっ壊れそう。なら、壊れる前に仕掛けるのみ。


 手に持った剣を投げる。すると、先ほどの弾かれたことを気にしてか、氷月姉は避けることを選択したようだ。


 俺は氷月姉の注意が剣に向いてる間に動き出す。そして、高速で背後を取ると投げた剣を氷月姉の背後でキャッチした。


「っ!」


「はっ!」


 勢い任せに出した声と同時に高速で剣を横なぎに振るった。それに対し、氷月姉は双剣で受け止めるが、勢いを殺しきれずに吹き飛ばされる。


 しかし、氷月姉の圧倒的身体能力で鉄骨というもはや足場でもないところを手で掴みながら、バク転してさらに細い足場に着地したのだ。


 正直、あの動きは俺には真似できない。一応、ホルダーとなって人間やめてる俺以上にあの人の動きは人間を止めてやがる。


 それにしても、ここは想像以上に動きずらいな。なによりも足場が少ない。どうしてここに氷月さんを連れて来たのかわけがわからない。


 決着をつけるにしても、この場所は変えたい。そう思い氷月さんに「隙を作ってくれ」と通信で送る。


 すると、氷月さんは氷月姉に向かって正面から突っ込んでいった。そして、迎撃の剣を氷のガトリングガンで打ち払いながら接近。


「いい加減大人しくしなさい!」


 そして、左手のガトリングガンを大砲のように射出した。


「同じ手ばかりね」


 それを氷月姉はその場で跳躍して避ける。その瞬間、ガトリングガンは破片手榴弾のように氷の破片を飛散させていく。


「同じ手でいいのよ。お姉ちゃんは必ず先輩の接近を警戒して避けてくれるから」


「!」


 氷月姉の注意が氷月さんに向いたところで俺は一気に跳躍して氷月姉の近くにあるゴンドラの側面に捕まる。


 そして、氷月姉が跳躍したところでゴンドラを蹴飛ばして氷月姉に接近した。

 氷月姉は咄嗟に腕を振るおうとしたが、さすがに身動き取れない空中では先に動いた俺の方が早い。


 俺は氷月姉の両手首を掴むとさらに蹴られないように両足で氷月姉の両太ももに置くことで足の動きを制限した。


「いい加減戦いにくいんで移動させてもらう」


「このっ!」


 観覧車の側面に飛び出した俺達はそのまま地面に向かって落ちていく。

 正直、敵とはいえ女性を下にして落ちてることに抵抗があったが、そんな甘えを見せれば地面に着地する瞬間に俺が頭から叩きつけられて人生終了(ゲームオーバー)


 たとえ女性であろうと油断なく攻撃する。もうこれは俺が特務に入ってからずっと覚悟していたことの一つだ。


「このっ! 放せ!」


「悪いけど無理っ!」


 氷月姉は何とかこの状況を打破しようともがく。だが、先ほどの俺よりも強くなっている力で固定されてるため身動きが取れないでいる。


 そして、十数秒で地上が近づいてきた。恐らく、氷月姉が動くとしたらこのタイミングあたりだろう。

 その前に一切の躊躇いを持つ前に仕掛ける。


 俺は咄嗟に両足を引くとそのまま両足揃えて氷月姉の腹部へと蹴り込んだ。


「かはっ」


 氷月姉はさらに加速して地上に落ち、背中から地面に叩きつけられる。周囲がひび割れ、わずかに凹む。


 そこにさらに追撃とばかりに氷月姉の腹部に向かって落下速度を合わせた拳を振るった。

 しかし、その攻撃は横に転がって躱され、凹んだ地面はさらに凹み、周囲に砂埃が舞う。


 視界が悪くて周囲が見えない。マギで探知したいところだが、正直そんなのに注意を向けていたら一発で殺される。


「ぐっ!」


 背後から剣が通り過ぎてわき腹が斬られた。傷は浅いけど、このままじゃまずい。


「あ"っ!」


 動き出した瞬間、左足が斬られた。くそ、もう手遅れだ。恐らく、周囲は剣で囲まれている。

 加えて、いつまでも砂煙が消えないのは恐らく氷月姉が意図的にこの状況を作り出しているのだろう。


 なら、周囲の煙に前意識を向けろ。わずかな空気の揺らぎからくる方向を予測し、動け。


 その直後、俺の側面から剣が飛んでくる。それを目の端で捉えて咄嗟に躱す。次は左斜め後ろ。次は右。次は左斜め前からの右斜め後ろ。


 目が回るような勢いで周囲を確認し、次々に飛んでくる剣を紙一重で躱していく。段々と数も二本、三本は飛んでくるようになってて、遊んでるのか知らんが全部飛んでくるのは時間の問題だ。


「こんなの確か最初にホルダーになった時もやったな!」


「そう、興味深い話ね」


 俺の言葉にどこからともなく返答する声。その直後に全方向が大きく揺らいだ。

 予想通り俺を囲むようにして剣が向かってくる。加えて、真上は何もない。恐らく罠だろう。

 なら、ここは身をかがめて―――


「戦いに才能のある子は深読みしてくれて助かるわ」


「なっ!」


 俺の動きを完全に読んだように、かがもうとした俺に対して全方向から来た県は突然動きを停止した。

 そして、背後から気配がして振り返ってみると止まった剣の一本を大剣に変化させて斬りかかる。


 周囲の剣も真上がなにもないのも罠か! 二重フェイクを仕掛けられてた! それに動きを制限された俺は完全に出遅れた!


 いくら早く動き出せても、相手がその動きを読んだタイミングで攻撃されれば意味がない! それが今だ!


「私の存在を忘れないでくださいよ!」


 その瞬間、真上から俺と氷月姉の間に一本の氷の剣が降ってくる。

 それを咄嗟に背後に飛んで避けた氷月姉に対して、俺はその剣を握って切り上げるように振るった。


「何をっ!?」


 しかし、振り切る直前で俺は剣を放した。それを警戒した氷月姉は一瞬動きが止まる。その一瞬が欲しかった。


「さっきの言葉、そっくりそのままお返しするよ」


 俺は全てのマギを右手に集中させると全力の右ストレートを放った。そして、その拳は氷月姉の直前で巨人の手のように巨大化する。


「巨雷拳!」


「あ"あ"あ"あ"あ"!」


 俺の拳は氷月姉の大剣を粉砕し、そのまま全身に殴りつけた。その衝撃と同時に雷による感電をモロに食らった氷月姉は砂煙の奥へと吹き飛ばされる。


 そして、煙が晴れると倒れた状態の氷月姉が見つかった。すると、すぐ近くに氷月さんが近づいてくる。


「終わりましたね。あと、遅れてすみません。降りるのに時間かかりまして」


「やっぱり、高いところ苦手なんじゃん」


 やっとのことで氷月姉を倒した。もうこのまま休みたいところだが――――


「倒されてしまったか」


 不意に背後から声が聞こえてくる。相変わらず声がかけられるまで全く気配を感じない。

 まあ、このままじゃ終わらないよな。

読んでくださりありがとうございます(*'ω'*)

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