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絶対捜査戦のアストラルホルダー~新人特務官の事件録~  作者: 夜月紅輝
第5章 ギャルゲーみたいになったんだが
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第125話 巨大な一撃

「俺と戦う気になってくれて嬉しいねぇ。まだ、その力も全力ってわけじゃねぇんだろ? アルガンドだってまだ使ってないみたいだしな」


「やっぱり気づいてたか」


 ヤガミは一気に飛び出すと俺に間合いを詰めてくる。俺は俺で体に雷を纏わせてヤガミの迎撃に備えた。


「なんでてめぇはその力を渋ってんだ? それを使っていればさっきみてぇに吹っ飛ばされることはなかったんじゃねぇのか?」


 接近したヤガミがまるで腕が何本もあるかのように残像を作り出しながら激しく拳を振るう。

 俺はそれを冷静に見極め、できる限り流して相手の隙を伺いながら返答する。


「確かに、その通りだな。俺は使えないのじゃなく、自分の意思で使わないだけだ」


「舐めてんのか!」


 ヤガミの鋭い上段蹴りがやってきた。まるでアッパーカットでもしてくるような鋭さの蹴りだ。

 体を反らしてなんとかスレスレで躱せたが、もし当たっていたら確実に顎粉砕コースだな。


 ヤガミはそのまま蹴り上げた足を振り下ろす。かかと落としへの連続攻撃だろう。

 だが、その攻撃を横に避けて力強く握った拳で思いっきり裏拳してやった。


 とはいえ、いくらこっちが雷で身体能力を底上げしていようとも、もともとが体の限界50パーセントを超えているヤガミには容易に止められたが。


 だが、もし勝ることがあるとすれば、それは戦闘技術。

 ヤガミの戦闘スタイルは鋭く狂暴。まるで野生動物のようなものだ。しかし、その獰猛な野生動物でもあってそれを御しているのは人間だ。


「なっ!」


 俺は思いっきりヤガミの両足を蹴り払う。その瞬間、ヤガミの体が天地逆転した。


「いいか、よく聞け。使わねぇのは、威力のさじ加減ができなくなってきたからだよ」


 ヤガミは咄嗟の反応で地面に片手をつき、その状態から回し蹴りで応戦する。

 それを俺は片手で受け止めると思いっきりヤガミの胴体を蹴り飛ばした。


「がはっ」


 ヤガミは吐血しながら地面で水切りして転がっていく。だが、ある程度速度が遅くなると体勢を整えるように立ち直した。


「はあはあ、さじ加減ができねぇだと?」


「こう見えても俺は上昇志向なんでね。強くなるための努力は怠らないんだよ。それで、お前がいうアルガンドの修業をしている時に先生に止められたんだよ。あまり対人戦で使うなって」


 俺は氷月さんとのやり取りがあった最中も金剛さん(先生)との修業は一度たりとも行わなかった。

 増々ハードな内容になっていく中で、俺がアルガンドの強化訓練の時にあることを思いついた。

 

 もともとアルガンドとはアストラルによって操作できるマギを具現化した形だ。故に、言い換えるならばアルガンドというのは感情の集合体だ。


 感情によって戦闘力が変わる俺達にとっては強い意志はアルガンドを強化するために何よりも大事なことだ。


 しかし、感情をそのままに具現化してるならばいくら強い意志を持とうとその想いに限界が来るはずだ。


 人がずっと怒り続けていられないように。だが、発想を変えれば一瞬でも感情が籠ったアルガンドは強化がされるということ。


 その時、先生に言ってみたのだ「よくある。想いを拳に乗せるってのをやってみていいですか?」と。


「俺はできる限り早く氷月さんのところへ向かいてぇんだ。お前と戦ってやれても、それにかける時間はほとんどねぇ」


「だったらどうすんだ? 一撃で沈めるか? 今の良い一発だったが、まだ俺の体はピンピンしてやがるぜ?」


「最後だ」


「あぁ?」


「これで殴り合いも最後だってんだ。お前の顔面に拳をぶつけてそれで終わりだ」


「はっ! やってみろや!」


 ヤガミは四足獣のように両手を地面につけると不敵な笑みを浮かべた。その笑みが何を意味するのかはわからない。


 しかし、真意こそわからないが、わかることもあった。あいつに纏っていた空気がより狂暴性を増したのだ。


 俗にいう本気。完全なる臨戦態勢。となれば、こっちも全力で応対しなければ先にやられてしまうだろうな。


 俺は両手両足にアルガンドの籠手と脚甲をつけていく。先生みたいに全身をまだ鎧で身に着けないのが悲しいところだ。


「それがてめぇのアルガンドか」


「まだ未完成だがな」


 煽るような言葉はなし。油断は絶対にしないという表れか。もしかしたら、そっちの方が俺の作戦も成功するかもな。


「さあ、てめぇが最後と言ったんだ! せいぜい楽しませろよ!」


「恐らく期待には沿えねぇな!」


 ヤガミは四足のまま一気に飛び出した。先ほどよりも数倍速い。となれば、俺も全身への電圧を50パーセントまで上げるか。


 接近したヤガミが跳躍し、鋭く立てた爪で思いっきり引っ掻いてきた。いや、あれは引っ掻いたというよりも三本の斬撃が同時に来たという方が正しい。


 俺がアルガンドの籠手で防いだにもかかわらず傷が入った。

 すぐに距離を取ろうとするともう片方の手からフック攻撃がやってくる。この狙いは腕を回り込んでの顎打ちか。


 恐らくここで大きくのけ反って避けたら足技が防げない。なら、せめて勝ってる反射スピードでもってガードするしかない。


 俺は再び籠手を頭を守るように横に立てる。その瞬間、ニヤッとヤガミが笑った。


「アバラいったー!」


「ぐっ」


 今の攻撃はフェイクか。右胸にヤガミの前蹴りが深々と入っていき、同時に俺の骨はバキバキとへし折れてるのがわかる。


 しかし、あいつが前蹴りしたことでコースが開いた。こっちも蹴りを入れれば顔面に届く。


――――ゾクッ


 咄嗟に攻撃を仕掛けようとした瞬間、体に身の毛もよだつ寒気を感じた。これは――――罠!

 すぐにその場から後退して距離を取る。そして、呼吸でもって体力回復と痛みを和らげていく。


「よく気付いたな。もし飛び込んでも来ればカウンターをかましてやろうと思ったのに」


「飛び込んでたら死んでただろうな」


「で、いつになったら顔面に拳を入れるってぇ!?」


「もうすぐくれてやるよ!」


 ヤガミはこっちに向かって油断なく向かってくる。だとすれば、その油断のない今が最大の虚だ。


 油断がないということはある程度の俺の攻撃を予測しているという意味であるが、逆に言えばあまりにも想定外すぎることには判断が遅れるということだ。


 自分の目を疑うような出来事が起きたとき、その時人の思考は一瞬止まる。目の前の情報を一気に読み込みすぎたから。


「伝雷!」


「いいねぇ、そうこなくっちゃ!」


 俺は足元に雷を纏わせると一気に放電した。それによって、雷が俺を中心に花開くように伸びていき、ヤガミの足元を奪う。


 しかし、ヤガミは俺が雷を纏わせているということを理解してたために、跳躍だけで俺の感電地帯を避けていきやがった。


 ということは、それまたあいつの油断のない予測によるものだろう。あいつは動揺させて倒すようなタイプではない。だとすれば......


 俺は右手以外のアルガンドを消すとその分をマギとして右拳のアルガンドに集中させていく。


「なんだぁ!? その拳が秘策か? 何も変わらねぇじゃねぇか!」


 あいつの言葉による揺さぶりの中にあいつ自身の本心は見えてこない。油断のないあいつであれば、威力を集中させた攻撃の直撃は危険だと判断するだろう。


 となれば、あいつの行動は決まって一つに限られる。攻撃するフリのカウンター。


「俺の拳とどちらが強ぇか試してみようじゃねぇか!」


 ヤガミが右拳を強く握り跳躍の勢いのまま向かってくる。そして、その拳を大きく振り上げた。


 ここだ。この瞬間に、俺の感情をこの右拳に集中させる。感情を乗っける。滾れ、感情!


「巨雷拳!」


「はっ、真っ直ぐに攻撃してきやがってバカかてめぇ.....!?――――――っ!」


 俺の振り出した拳はヤガミの顔面を捉えようと真っ直ぐ伸びる。それをヤガミが躱していこうとしたその瞬間、俺の右拳は激しく膨張した。


 まるで俺の右拳が巨人の手になったようなその拳はヤガミの避ける先を完全に潰し、()()もろとも全身に攻撃を与えていく。


 その拳で吹き飛ばされたヤガミは攻撃の衝撃とともに感電し、身動き取れないままに地面へと転がっていく。


 そしてその時初めて、ヤガミは立ち上がることがなかった。

読んでくださりありがとうございます(*'ω'*)

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