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絶対捜査戦のアストラルホルダー~新人特務官の事件録~  作者: 夜月紅輝
第5章 ギャルゲーみたいになったんだが
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第112話 求めていたもの

――――氷月愛依 視点――――


 あれ? 自分は一体何をしてるんだろう? どうしてこんな行動を取ってしまっているのだろう?

 自分自身に答えを求めても全く何も生まれない。でも、体は全く別のように求めてる。

 そして、今は私......なんて言った?


 私は私自身の言おどろきを動が理解できなかった。しかし、その認識をハッキリさせるように体はしっかりと動いていく。

 わざわざ離れた天渡さんの手を掴んで自分自身の頭に乗せている。

 まるでもっと撫でてほしいように。温もりをもとめるように。


 まるで自分が自分じゃないように否定の言葉を考えるたびに行動は真逆に動いていく。

 なら? 考えを肯定すればいいんじゃないか? と思ったりするけど、それをしたところで結局変わらない。

 なぜわかるかと問われればそれは自分自身の体だからというほかない。


 激しく心臓が動いていく。まるで全力疾走したようにドキドキと鼓動をハッキリと感じる。

 暖かい。とても暖かく感じる。天渡さんの手のひらから温もりがじんわりと伝わってくる。

 意外と撫で方が優しい。だからこそ、思ったより気持ちをゆだねたくなってしまう。


 天渡さんは私の言葉に驚きを示したものの、何も聞き返さずにやってくれている。

 さっきもそうだったが恥ずかしいのか目を逸らして、しかし必死に口元を抑えて隠そうとしている姿が可愛らしく感じる。


 ああまただ。また自分は自分が変わってきていることに気が付いてしまった。

 ずっと一人でそれでも大丈夫だと気張っていたのに、もう二度とあんな思いをしなくてもいいように強くいたのに。


 私はまた“信頼”という温もりを求めてしまっている。


「氷月さん......泣いてる?」


「......え?」


 天渡さんが目を丸くさせてこちらを見る。その言葉にそっと頬に手を触れさせてみた。

 すると、頬が濡れている。いつの間にか溢れ出ていた涙が一筋の川を作っていた。

 いつの間に流れていたのか、どうやったら泣き止むのか自分でもわからない。


 ただひたすらに涙が溢れ続け、自分の意思とは関係なくとめどなく流れ続ける。

 それはまるで自分が長年せき止めていた思いが決壊したように。

 いや、きっとそうだ。そうなのかもしれない。自分は絆されたのだ。こんな天渡さん(おとこ)に。


 本来だったら私に来るはずだったARリキッドがひょんなことから天渡さんに渡って、天渡さんが先に特務にメンバー入りして。


 その当時、ある一つの目的に夢中だった自分はそのことに怒り憎んで、ようやくメンバー入りが決定した時にはそれらの感情を晴らそうと戦いを挑んだ。


 訓練も受けていないずぶな素人が自分に勝てるはずがないとそう思っていたら、自分はその侮りを突かれたのか負けた。


 そのことが悔しくてまた恨んだ。その時からメンバーとはいえ軽く敵視するようになって、とある大規模事件のためにバディとなって組むことになったけど、それでも自分は息を合わせるようにすることはなかった。


 その事件の解決のためには息の合った行動が必要らしいが、自分は自分さえ強くなれば問題ないと思っていた。

 危険な任務? 死ぬかもしれない? それがどうした。そんなことは百も承知だ。それぐらい乗り越えられなきゃ強くなることなんてできない。


 だから、自分はどんな事件であろうと自分に必要な分だけ利用して、それで切り捨てる......はずだった。


 しかし、自分の思いとは裏腹に自分は天渡さんに少しずつ心を開いていった。

 天渡さんが献身的に仲良くしようと接してきたからだろうか、それとも自分自身が手に届く信頼(ぬくもり)を求めたからだろうか。


 どちらにせよ、結果が全てを物語っている。その結果は――――私の完敗であるということ。

 最近の自分の行動を不審に思わなかった日はない。

 話していると僅かに口調が明るくなって、事件の話にかかわらずどうでもいい会話にも返答するようになった。


 最初は同じ空間にいるから共同意識みたいなのが湧いたかと思ったけど、今はその気持ちが別だとわかる。

 ああ、自分は結局求めたのだ。一度裏切られ、それでも渇望したもの。


 何度でも言おう。自分はずっと“信頼”に飢えていたのだと。


 それが満たされたたった今、長年一人で気張っていた糸が緩み千切れ、涙となって思いが決壊した。

 その相手が最初こそ敵視していた相手とは何とも笑えない話だ。

 しかし、自分の思考以上に心がそう判断したのだ――――この人なら信頼できると。


「もう少し......雑でもいいのでお願いします」


「え.....わ、わかった」


 私の要求に天渡さんは驚きと恥ずかしさが混じったような顔で言われた通りに少し雑に撫でてくれた。

 といっても、若干の気遣いが含まれているようなそんな手つき。

 その手つきに嬉しさを感じ、そして天渡さんの表情に若干のイタズラ心が生まれてくる。


 ああ、自分はここまで落ちたか。いや、落とされてしまったという方が正しいのか。

 まあ、もうどっちでもいいか。どっちにしても、私はもう嬉しくなってしまっているのだから。


 すると、天渡さんは恥ずかしそうに私に告げてきた。


「あ、あのー、もう降りてもらっていい.....かな?」


「降りる?......!?!?」


 その言葉に私は自分の現在の体勢を見て思わず、顔が真っ赤になった。

 そう言えば、さっきからずっと天渡さんの顔が下に見えると思っていたら、馬乗りになっていたからか!

 そ、それじゃあ、さっきから弱さから出た甘えは全部馬乗り(これ)の体勢でってこと!?


 な、なんていう醜態を! これじゃあ恋人同士がやるスキンシップ......いや、恋人同士でもないからただの痴女じゃないの!

 やめて、見ないで! 今とんでもなく顔が赤くなってるから!


 私は後ろにはねるように立ち上がるとそのまま両手で顔を覆った。

 こんな顔を真っ赤にした状態を見られるわけにはいかない。完全に自分の落ち度だとしても!

 指の隙間からチラッと天渡さんを見ると苦笑いしながら「まあまあ落ち着いて」と声をかけてきた。


 正直、あんな状況で甘えてたっていうのに落ち着けるわけがない。どこかに穴でも掘ってそのまま土葬されたい気分だ。

 それにこの胸のドキドキはその羞恥心だけじゃないと思うし.....。


 すると、天渡さんは衝撃の一言を告げた。


「大丈夫。アストラルで筋力が上がってるから、氷月さんの体重を重いとは思わないよ」


「......」


 それはどういう意味だろうか。裏を返せば、普通の状態だったら重いと感じたとでも言うのだろうか。

 その瞬間、スーッと熱が冷めていくのを感じる。まあ、うん、そりゃそうだよね。


「やっぱり、嫌いだああああ!」


「お、ちょっと待ってえええええ!」


 私は全力で吹雪を起こして天渡さんを氷漬けにしようとした。まあ、結果から言えば出来なかったけど。速すぎて躱された。うざい。


*****


 その後のことを簡単に振り返ると私と天渡さんは事件のあらましと容疑者を特務に報告して回収しに来てもらった。


 正直、最後のフードをしていた男に顔にあったカラスの刺青に関しては思うことがあったのだが、事件を解決して所長から休みをもらったのでその日でいいかと思いそうすることにした。

 ついでに言えば、他にも自分の過去についてなんとなく天渡さんに話したいと思ったから。


 私は自分の部屋にてベッドの上で寝転がっていた。お気に入りのネコちゃんクッションを抱きながらだ。

 9月に入ったとはいえ、まだ残暑厳しいのでクーラーはつけっぱなし。電気代に関しては.....今更だ、諦めてもらおう。


 それにしても、この家に住み始めてから割に濃い時間を過ごしてる気がする。まだ1か月も立っていないというのに。


 とはいえ、もう慣れたし特務に入ればそんなことばっかりだと覚悟していたので問題なし。

 今日も事件解決してゆっくり寝れそう......。


 そして、目を閉じるがすぐにパッと目が開く。それは閉じた瞬間に馬乗りのとき(あのとき)の光景が思い出されるからだ。


 もうやっと疲れを取れると思ったのに、寝ることにすら妨害してくるなんて......


「やっぱり嫌いだあああああ!」


 そう叫びながら足をばたつかせた。寝付いたのはいつかはわからない。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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