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魔法少女アリウムフルール!!外伝―魔法少女を見守る使用人のお話―

作者: 伊崎詩音

皆様、ご無沙汰しております。私、諸星 源太郎様のお屋敷でメイドを務めさせております。小宅(オヤケ) 美弥子(ミヤコ)と申します。

若輩ながら旦那様のお屋敷で10名ほどいるメイド達を指導する立場であり、真白お嬢様の専属使用人として、ここ4ヵ月ほどお世話をさせていただいております。


ふふっ、驚きましたか?はい、今日は僭越ながらわたくし美弥子から見ました真白様の日常をご覧いただければと思います。


私が専属とさせていただいています真白お嬢様のことはご存じかとは思いますが、もしご存じのない方がおりましたら、われらが作者である伊崎詩音の作品一覧から『魔法少女アリウムフルール!!―魔法少女を守る魔法少女の話―』をぜひご一読いただければと思います。


ザックリ、まずは100ページも読んでいただければ真白様がいかに可愛らしく、愛らしく、庇護欲をそそられる方かをご理解いただけるかと思いますので。


コホンッ、少々野暮な発言もさせていただきましたが私が普段お仕えする真白様は私にとってとてもとても大事な存在でございます。


ウェーブのかかった美しい赤髪、青味を帯びた宝石のようなグレーの瞳。白磁のような繊細で真っ白な肌。小柄で細い、小さな身体に子供らしい顔立ちは多くの方がまるでお人形のようだとお褒めになります。


ご本人は高校生にもなってお人形なんて言われたくないなんておっしゃっておりますけれど、それが真白様の魅力の一つでありますから、いつも優しく宥めることにしております。

それに可愛らしく美しい外見もそうですが、その中身。精神性や心の在り方も素晴らしい方だと私は思っております。


まず、真白様が最も真白様らしい部分としましては人を救うということを自身の命題にしているということでしょうか。

人を救う、と一重に言いましても多くの方法、手段、あり方。様々なものがございますが真白様が選ばれたのは『命を救うこと』。主に医療行為で人命を直接救うという手段を真白様はご選択されているようです。


ですが、真白様はまだ高校生。医療も何も覚えるのはこれからのお話だと思うのですが、不思議なことに真白様は既に一線級の医療の技術、知識をお持ちになっておられます。


これには現役の医師と看護師の方々も口をあんぐりと開けておりました。特に最近魔法庁支部に新設されたという医療班と呼ばれる治癒魔法を専門に行う部隊では、アリウムフルール、真白様を指導者として師事を仰ぐほど。


付け焼刃の知識だけのモノではなく、明らかに豊富な経験から含蓄された医療知識、医療技術、看護技術、緊急対応のレベルは病院でも医師の方が喜んで施設をお貸しするほどです。


以前、真白様のお友達であり、魔法少女として一緒に活動してらっしゃる碧様が大怪我を成された時は治癒魔法での応急処置だけではなく、実際に治療にも携わっております。

それらが一通り終わった後のリーダークラスの医師と看護師の方々との会話は専門用語が飛び交うもので、横に一緒にいた私ではお恥ずかしながらさっぱりわかりませんでした。


そんな真白様は他にも様々な不思議、謎に満ちた部分がございます。


最も大きな謎はやはりその生い立ちに関わる部分でございましょうか。何せ、ありとあらゆる手段を用いて真白様について調査を行っておりますが、生まれた場所、ご両親について、その医療と看護の技術はどこで手に入れたのか。


聞きたいこと、知りたいこと、沢山ございますが私も含め、ご事情を知っている理解している者は殆ど根掘り葉掘り聞くことはありません。

真白様が何も語らないということは、語りたくないということ。それをむやみやたらに掘り返せば、真白様はきっと私たちの前から姿を消してしまうことでしょう。


それはお互いに大きな損失です。真白様の身を案ずる側として、大人の一人として私とてプライドというものがあります。


真白様達、千草様や墨亜様。他の魔法少女の皆様方も心身ともに強く逞しくあろうとも少女は少女。

子供を守るのは大人の役目です。どんなご都合があろうとも、私は真白様に仕え、お守りすると決めたのです。


さて、私のお話はそろそろ終わりにしましょう。そろそろ準備をしなければなりませんからね。










時刻は明朝の5時。時期によってはまだ夜とも言える時間から、私達使用人の仕事は始まります。


「おはようございます。お父さん」


「おはよう美弥子」


父であり、職場の上司でもある小宅 十三に短く挨拶をして、周囲にいる使用人たちにも通り過ぎざまに挨拶をしていきます。

私たちが集まっているのは普段は千草様、真白様、墨亜様がお使いになられている別棟トレーニングルームです。


ここで、私たちも魔法少女に負けず劣らず。いえ、魔法少女たちに変身さえされなければ皆様を圧倒することが出来るだけの技術を実はここで磨いているのです。


「何度も言うが、身体をほぐすのを怠るな。有事の際、身体が動きませんでしたでは話にならないからな」


「わかってます」


動きやすい運動用の服装をして、私と並んでストレッチをする父の十三との会話も普段の丁寧な口調は鳴りを潜めて砕けたものです。

周囲には使用人しかいませんし、ここにいる使用人たちはかれこれ10年近く寝食を共にする家族のようなものです。


故にこの時間帯はみなフランクに砕けた口調と態度で会話を楽しんでいます。


「よし、身体は温まったな。各自、打ち合いの稽古を始めるように」


父の一声で、使用人の皆がストレッチをやめて、各々が好きな武器を手に持つ。

父は木刀、私は槍、他にも短刀、無手、身の丈ほどの棒等など様々な種類の武器を手に、使用人たちが打ち合いの稽古を始めた。


これは私達の生まれ故郷にあった道場で習っていた武術だ。ここにいる全員ではないが少なくとも半数は元々そこの門下生だったのが、街が魔獣で滅ぼされた時流れ着いてこのお屋敷でまとめて雇用してもらったのが、ここの使用人たちのルーツ。


元々はボディガードとして雇われたのだけど、段々と諸星の事業が軌道に乗り、身辺警護以外のお世話もするようになってから私達はボディガード兼、使用人として働いているのだ。


「ふぅ、私も歳だな。身体が以前のようには動かんよ」


「冗談言わないでください。普通の60代はそんな機敏に動きません」


しばらく父と稽古をして、頃合いを見てから稽古を止める。私たちの仕事はボディガードも含まれていますが、それ以外の仕事も多くある以上はそれだけに割くわけにもいきません。

時間内に効率よく、心身を鍛えいつでも動けるようにするのが朝の稽古の目的です。


余裕の表情で汗を拭う父を恨めしく思いながら私もスポーツドリンクを一口口に含みます。この父、もう60を超えているのに私に一本も有効な一撃をもらうことはありません。


まるで風に舞う木の葉を追いかけているような気分で非常に腹立たしいですが、それを表情に出せば何を言われるのかわかりませんから、絶対に顔に出しません。


「私なんてまだまだ。あの方の剣はもっと鋭くもっと速く、もっと正確だった」


「まぁ、高嶺師範は今だからこそ怪物級の方だったと思いますね」


遠くを見つめながらそうぼやく父に、私も同意をする。

私たちが通っていた道場。高嶺道場は全国的にも有名な道場で、多くの門下生を持つ現代にしてはかなり珍しい道場だった。


家族で経営している道場で、数百年単位で受け継がれてきた高嶺流という古武術を継承する由緒あるその道場はありとあらゆる武術、武道を門下生に指導するという凄い道場だったのだ。


「本当にただの人間の身で、魔獣を倒したのはきっとあの方たちくらいでしょうから」


「そのおかげで我々は命拾いをしたのだ。この見様見真似の半端な剣でも誰かのためになるなら、私は一生をもってこの流派を伝えていこうと思う」


「耳にタコができるほど聞いた言葉ですね」


そして、10年前。その師範とその家族や友人達はたった8人程度の人数で、街に襲い掛かって来た魔獣の群れに立ち向かった。

魔法少女なんて一人もいない。本当にただの人間が、たった8人で100はいたであろう魔獣の群れに立ち向かい、逃げ遅れた1000人の住民たちの命を救ったのだ。


今でもあの光景は鮮烈に覚えている。剣の一振り、槍の一突き、拳の一撃。たった8人が魔獣の体を切り裂き、貫き、吹き飛ばしていたことを。

今ではただの眉唾で、うそぶいていると嘲笑われる話だが、私たちはあの背中をしっかりと覚えている。


表舞台に立つことのなかった名もなき英雄たちの姿を私たちは片時も忘れてはいけない。見様見真似であっても、決して届くことはなくても、私たちは受け継いだ流派を絶やすことなく、人のために使うと誓ったのだ。


「全員、休憩したら各々の仕事に就くように」


打ち合い稽古の時間の時間が終わるといよいよ使用人としての仕事の時間だ。各自でシャワーを浴びたりして汗を流した後にそれぞれ仕事用の制服に着替えて、仕事を始める。

私の場合は真白様の朝の準備のための準備が一番最初の仕事。


真白様は大変朝が弱く、放っておくとお昼頃まで寝ている。平日であってもそうなので、必ず朝の7時前にはお部屋に向かって準備を強行しないといけないのです。


特に大変なのは髪のセットでして、真白様の髪の毛は大変美しいのですが天然のウェーブのかかった髪はそれはもう難敵なのです。乾燥した冬の時期でこれなのですから、梅雨の時期からは大変です。

実際、秋雨のシーズンは湿気でぐしゃぐしゃに広がっているので、櫛を通すの一つですら苦労するほど。


幸い、真白様はお身体が小さいので私一人でもベッドから抱え起こすことは容易ですので、最悪お起きにならなくても何とかなります。


「真白様、美弥子でございます。朝でございますよ」


真白様の髪を梳くための一通りの道具をキャリーに載せ、部屋を訪れる。コンコンとノックした後に声をかけるものの、今までこの段階で返事があったことは朝では一回もない。


代わりに返事とドアを開けてくれるのは真白様のペット、もとい使い魔のパッシオ様です。


「きゅーい」


「おはようございます、パッシオ様。今日もありがとうございます」


伸ばした尻尾を器用に使ってドアノブを回したパッシオ様は、挨拶の鳴き声を返したあと、真白様の寝ているベッドへと駆け上る。

そこにはいつも通り、布団に頭まですっぽり入って膨れ上がっている光景が広がっています。


パッシオ様はその上で飛び跳ねて、起きるように催促をしているようですが、身体が小さいので真白様はビクともしません。

大きくなれば良いとは思うのですが、パッシオ様はこういう時甘いのでそこまではしてくださいません。


ですので、ここから先は私のお仕事となります。


「真白様、朝でございますよ」


「んー……」


ゆさゆさと身体を揺らしながら声をかけると唸るような声ともぞもぞと身体を動かして私に背を向けます。

長い間眠っていたいのは分かりますが、何事もし過ぎが身体に毒。今日はお休みとはいえ規則正しく起きていただきましょう。


「さ、朝でございますよ。起きないと怒られてしまいますからね」


「やーだー」


掛かっている羽毛布団を無理やり剥ぎ取り、冬の肌寒さに触れてもらう。といってもお屋敷の中は完全空調。さほど寒くはないのですけれど、ぬくぬくの布団の中とでは流石に温度差があります。


起きるのが嫌で目を瞑ったまま手を伸ばして布団を探す真白様ですが、既に羽毛布団は遥か足元の方で畳まれています。


「さ、おはようございます真白様」


「美弥子のいじわるぅ……」


可愛らしく駄々をこねますが、そうは問屋が卸さないというもの。使用人の中には真白様のおねだりに屈して余分におやつをあげたり、コッソリ嫌いな食べ物を抜いたりする者もいましたが、発見次第奥様にお説教をしていただいております。使用人もです。


渋々といった様子で起き上がり、目を擦りながらドレッサーの前まで移動します。根は真面目ですので、ここまでくれば問題ありません。


「さ、まずは顔を洗いましょう」


キャリーに用意していた桶にぬるま湯を張り、真白様が顔を洗えるようにする。のんびりとした動作でお湯を掬い、パシャパシャと顔を洗うとすかさず私が用意したタオルでお顔を拭きます。


ついゴシゴシとしがちですが、アレは肌を傷つけてしまい肌荒れなどの原因などにもなってしまいます。真白様の真っ白なお肌にはそれは大変目立ってしまいますし、白い肌というのはどうしても外的刺激に弱い傾向があります。


最近では真白様もそばかすに悩まれていて、私達でも出来る限りの対応はしておりますがこればかりは体質というのもあり、限界があります。時折肩を落としているのを目にすると申し訳のない気持ちになります。


「ん、おはよう美弥子さん」


「はい、おはようございます。良く眠れましたか?」


「うん」


顔を洗ってしまえば、真白様も頭が冴えるようで普段通りの様子になります。あのまま甘えん坊の真白様でもよいのですが、それではぐうたらになってしまいますから、ここはやはり心を鬼にしなくてはなりません。


顔を洗い終えると朝のスキンケアのお時間になります。化粧水をしみこませたパックを真白様のお顔に張り付け、しばらくそのままでいてもらいます。

朝は肌が特に乾燥しているので、こういった朝のケアこそが一番重要なのです。


「うーん、やっぱり変な顔」


「そればかりはどうしようもありませんね。あまり誰かに見られたくないものだとは私も思います」


パックともなると、目出し帽のように目や鼻、口だけを出している者になるのでどうしても滑稽というか変な風に写ってしまいます。

鏡を見ながらそう呟く真白様に言った通り、あまり他人に見せたい光景ではないですね。


特に異性ともなれば見せたくないものです。この辺り、パッシオ様は大変よくわかっておられるようで、最近では部屋の外にお散歩に出ていることが多いですね。


あれが人間の男性であれば、真白様を付きっ切りで守ってくださる理想的なナイトなのですが、贅沢は言えません。


パックをしている間に髪の方を整えてしまいましょう。まずは毛先の方をブラシで梳いていきます。髪の絡まりというのは毛先ですので、毛先を先にやるとスムーズに梳くことができるんですよ。


「♪~」


真白様はこの髪を梳く感触がお好きなようで、この時はとても上機嫌です。パックをしてしまっているのでわかりにくいのが残念ですが、珍しくする鼻歌がそのご機嫌のよさを示してらしてます。


私もその様子を見て嬉しくなります。最初の頃は警戒心の方が強かった真白様がこうしてなにも気にすることなくいられる環境にすることが出来たというのが、とてもうれしいことですね。


「今日のご飯はー?」


「かぼちゃのスープだそうですよ。そろそろ冬至ですから冬至カボチャを使ったメニューを考えてるみたいです」


「あー、もうそんな時期かー。ってことは誕生日かぁ早いなぁ」


何気なく漏らした真白様ですが、思わず一瞬手が止まりそうになりますがここは悟られぬように平静を装います。

誕生日、というのは貴重な情報です。真白様の警戒心が緩んだところを狙うようで申し訳ありませんが、それだけで闇雲に探していた情報がかなり絞られることになります。


それでも膨大な数のデータはあるはずですが。


「そういえば冬至の頃がお誕生日なのでしたね。料理長に美味しいものを作っていただきましょうか」


そういえば、なんて如何にも以前に少し話を聞いていた風を装う。誕生日といえば世間的に見ても大事なお祝い事。特に子供の頃に両親から祝ってもらった思い出は懐かしく、心に潤いを与えるもの。


真白様の漏らしたこれまでの生活の端々から察するに、おそらくお祝い事を祝ってもらったことなどほとんど無いはずです。そういうのも含めて、ぜひ聞いておきたい情報。

ささやかでも、温かく、心に残るような誕生日にしなければ。


密やかに決意の炎を灯しながら、私は真白様の髪を梳いていきます。だいぶスムーズに櫛が通るようになってきました。ここまでくれば問題もないですね。


「じゃあお餅」


「わかっておりますよ。食材の調達の都合があるので、日付を改めて教えていただいていいですか?」


美味しいもの、というと真白様は真っ先にお餅、と答える。相変わらずお餅が好きな方です。あと半月もすればお正月なのでこれでもかと食べられるのですが、本人にとっては季節は関係なく、好きなものを好きな時に食べたいということなんだと思います。


このお屋敷にやって来た当初は、このような可愛いわがままの一つもおしゃってくれませんでしたから、このような変化も私としてもうれしい限りなのです。


「12月22日だよ」


「12月22日ですね。かしこまりました」


そして、しれっと再確認のためという形を装って誕生日をしっかり聞き出した私は心の中でガッツポーズをします。あとで奥様に報告しなくては……。


そんな私のテンションの盛り上がりを静かに静かに抑えつつ、ブラシをキャリーの上に置き、真白様がつけているパックを外します。

前髪をあげさせていただいて、乳液などを塗り込んでしっかりとスキンケアを終えます。


いつも思いますが、真白様のほっぺは驚異的な柔らかさです。いつまでも触っていたくなるようなもちもちすべすべのお肌には憧れ半分、気持ちよさ半分といったところでしょうか。

若さもあるのでしょうが、真白様の体質も大きく関係していそうですね。


そうして私が真白様のほっぺを触っていますと不思議そうな表情をしてからすりすりと私の手にほっぺを擦り付けてきます。

あぁぁぁ、凶悪的ともいえる可愛らしさでどうにかなってしまいそうです。


これは真白様の甘えるときの癖で、もっと撫でての動作なのですがこれはいけません。可愛いが過ぎます。


「美弥子さん?」


「失礼しました。真白様が可愛らしくてつい」


「えー、そんなことないと思うけどなー」


そんなことがあるのです!!


心の中で絶叫しますが、心の中だけです。墨亜様も千草様も子供らしい可愛らしさといいますか、愛らしい一面がそれぞれございますが、真白様のそれは群を抜いております。

いやマジで耐えられない助けてほしい。


私がお仕えしている人があまりにも可愛くてつらい。最近は同僚たちにお嬢様限界オタクとからかわれますがそれで何が悪いと返したら引かれました、解せぬ。


「さて、お着替えをしましたら朝食に向かいましょう」


「はーい」


スキンケアを終えると、あとはお着替えを残すのみです。高校生ともなればお化粧をするのも当然かもしれませんが、真白様に関して言えばお化粧はしても目元や口元のメイクの身で十分。


それもパーティーやお客様がいる場合に限られます。元々非常に可愛らしいお顔でございますし、お化粧をしなくてもお肌が十分に白く綺麗というのがあります。

真白様は気にしておられますが、そばかすも一つのチャームポイントだと私は思っております。

もちろん、対策は講じますが。


「今日はこちらのコーディネートにしましょう。お外に出る場合はお声掛けくださいね」


「わかった」


今日の真白様のお召し物は薄いピンクのハイネックセーターに花柄のロングスカート。靴は黒のスニーカーです。

お外に出られる場合はここに山吹色のダウンジャケットを着ていただこうと思います。


冬ですが、明るく可愛らしい格好でいていただくのが良いと思うのです。


「どう?似合ってる?」


「似合っておりますよ」


ドレッサーのまえでくるくると回って似合っているかを確認するその様子も可愛らしいです。

にこにこと笑う姿も最近は当たり前のように見られるようになり、本当に良かったと思っております。


魔法少女という立場、お生まれの都合などなど、その身の上はまだまだ不安が残る部分ではありますがそれを真白様が気にすることなく過ごせるように努力を続けなくてはなりません。







「真白お姉ちゃんおはよー」


「おはよう墨亜」


お着替えも終わり、朝食のために食堂へと移動します。お屋敷は大きく立派ですが、こうした移動の手間があるのは庶民生まれの私としては少し面倒に考えてしまうこともありますね。


ひっそりとお屋敷管理の手間について考えていると墨亜様が真白様を見つけ、トテトテと駆け寄って来て挨拶を交わしております。


お二人は5歳ほど離れておりますが、身長はさほど変わりません。むしろ墨亜様は成長期ですから今後は真白様より墨亜様の方が大きくなられることでしょう。

真白様も、やせ細ったころに比べれば随分ふっくらとなさりまして、もしかしたら身長が伸びることがあるかもしれませんが、大きくなりやすいのは墨亜様の方になるかと思いますんね。


「今日のごはんなにかな?」


「かぼちゃのスープだって」


「わぁ、墨亜おかわりしよー」


おしゃべりをしながら廊下を進むお二人の興味はもっぱら朝ごはんのメニューについてのようです。花より団子ということでしょうか。

まだまだ異性に関する興味はないようで、真白様に至ってはちゃんとお話しできる男性が少ないのでそのあたりも少し心配なところではあります。


「二人ともおはよう」


「あ、千草おねえちゃんおはよー」


「おはよ」


食堂の少し前で千草様とも合流して、これでこのお屋敷住まわれている諸星家のご子息は勢ぞろいとなります。

といっても、千草様は養子、真白様も養子候補なので、正確にご子息となると墨亜様だけになりますが、そんなことはどうでもいいとは旦那様、奥様共通の認識でございます。


少なくとも、お嬢様達には確かに姉妹としての絆がすでにございます。それをわざわざ引き裂くようなことをわざわざするはずもございません。

そのようなことをする輩がいたら私の槍で串刺しにして差し上げましょう。


「今朝も冷えるな」


「千草は寒がり過ぎなのよ」


「お前みたいに寒さが得意じゃないんだ。初夏生まれをなんだよこっちは」


寒い寒いと漏らす千草様に真白様が軽口を言ってはお互いのことでおしゃべりをしています。

歳も一緒とあって、お二人は特に仲が良いと言えますね。墨亜様も仲がもちろんよろしいですが、どうしてもついていけない会話があったりすることもあるようなので、5歳という歳の差は大きいのでしょう。


「墨亜も同じくらいの誕生日だよ」


「初夏生まれは言い訳にもならないわね」


「うるさいなぁ」


女子が三人集まればなんとやらというもので、騒がしくしながら食堂に入っていくのはもう馴染みの光景でもあります。


千草様、墨亜様、それぞれに専属している同僚たちもこれにはついつい笑顔をこぼしています。

今では信じられませんが、真白様が来るまでは千草様と墨亜様の仲もあまり良好ではなく、使用人たちの間でも頭を抱えるほどでしたから。


こうして三人で笑っている光景は夢にまで見た光景の一つでもあるのです。


「きゅいきゅーい」


「あ、パッシィ。どこ行ってたの?」


食堂に着く直前にパッシオ様も合流しいよいよ全員集合でございます。いつも通り、真白様の肩に乗っている姿もまた見慣れた光景になりました。


さて、配膳の準備をしましょう。お嬢様達を愛でていたいのは山々ですが、私たちはお仕事でここにいますからね。

同僚たちに目配せをして、テキパキとお仕事を始めます。素早く、それでいて音を立てずに移動するのは難しいのですよ?






朝食は聞いていた通り、かぼちゃのスープ。それにベーコンとサラダ、フレンチトーストといったメニューでした。

朝にしては量が多いように思われるかもしれませんが、このお屋敷では朝こそ量を多く食べるように日頃から心がけています。


朝食は一日の最初のエネルギー。頭と身体にエンジンをかけ、日中をしっかり活動するためには朝食こそががっつりしっかり食べるのが一番なのです。

ましてやお嬢様達は育ちざかりであり、身体が資本の魔法少女。それを管理する立場ともなれば世の中を支えることにも繋がります。


当初は真白様などは残されがちでしたが、最近は千草様と同じようにモリモリと食べるようになっております。墨亜様も負けじとたくさん食べてらっしゃるので栄養の面では万全を期していることでしょう。


何より、お屋敷に努めているシェフは腕利き揃い。栄養士まで雇っているのですから抜け目はないといったところです。


「おいしかったー!!ご馳走様!!」


「墨亜、ほっぺに食べかすが付いてるわよ。あぁ、もう服で拭こうとしないの」


三姉妹のお母さまであられます奥様、光様も食事の時間には一緒に摂るように以前から心がけていただいておりますし、多忙な源太郎様。お嬢様達のお父様に当たる旦那様も、多忙ながら可能な限りは食事は一緒に摂るように心がけてくださっております。


以前より明るくなった食事の光景もまた楽しいものです。


「真白はよく食べるようになったんじゃないか?」


「だってみんなが太れって」


「ガリガリよりは太ってた方が良いからな」


それぞれ会話も弾んでいますし、余所余所しさもありません。

新聞を広げながらコーヒーを嗜む旦那様の横では、同じように新聞を広げて紅茶を嗜む真白様がいて、決して似てはいないのですが不思議と親子なのだなと思わせると頃がございます。


千草様もハーブティの香りを楽しみながら、今日の予定を連絡しているのでしょうか?珍しくスマートフォンをせわしなく操作しておりますね。


まぁ、千草様は最近彼氏が出来たようですから、そちらでも忙しいのかもしれません。

姉妹の中で恋愛で一歩先を行っているのはやはり長女ということでしょうか。


「きゅー」


「あら、パッシオ様はおかわりですか?」


「きゅいきゅい」


器用に自分用の器を持って足元にやって来たパッシオ様はお代わりをご所望のようです。

パッシオ様も使い魔というのもあってか、非常によくお食べになられます。その小さなお身体のどこに入っているのか不思議なくらいなのですが、そのご飯が真白様をいざという時に守ってくださるエネルギーになるというのなら必要なものでしょう。


「どうぞ。たくさん食べてくださいね」


「きゅきゅ」


パッシオ様用の器に改めてご飯を用意するとまた器用に器をもって真白様の近くで食事をします。

不要不急のことでもない限り、パッシオ様は基本的にずっと真白様のそばを離れることはありません。


時折、彼?彼で多分良いのだと思うのですけれど、パッシオ様のことをナイトと称することがありますが、私的にはその表現が間違っているとは思ったことがございません。

ああして片時も離れずに守っている様子はさながらお姫様と騎士のような雰囲気すら感じることがございますので。


さて、この朝食が終わると私は私の使用人としての仕事がありますので、お昼時までは真白様からお呼びがかからない限りは一度離れることとなります。


専属と言いましても、朝のお世話と寝る前のお世話程度でございまして、それ以外は他の使用人たちと同じようにお屋敷の管理がお仕事ですから。


お昼の真白様でございますか?そうですね、日によって違いますが、お部屋で勉強なさっていることも多いですし、トレーニングルームで汗を流していることもほぼ毎日続けてらっしゃいます。


ただ、オーバーワークにならないよう、トレーニングでは父が。勉強ではパッシオ様や私が時間の様子を見ている感じです。

最近では年相応にゲームや漫画などを嗜むことも多くなってきていますね。お庭で父と庭園のお世話をしていることもあります。


案外、姉妹同士で遊ぶというのは少なく、自由な時間は割とそれぞれの時間を過ごしてらっしゃいますね。

まぁ、四六時中一緒にいる兄弟姉妹というのも早々いないでしょうから、これが不自然な形というわけでもないかと。


時折、気が向いた時やお互いが暇なときなどは一緒にゲームをしたり、楽器の演奏や歌唱をしていらっしゃることもあります。

あぁ見えて、千草様はギターが趣味ですので。真白様や墨亜様が歌って、千草様がギターを弾いている音が聞こえてくることがございます。


お屋敷での休日は、大体このような感じでしょうか。


夜になると旦那様が返ってくるときは姉妹そろって出迎えておりますね。旦那様は思春期の千草様や真白様に嫌われやしないかと気にしておりましたが、今のところはその兆候はございません。


後は朝と同じように食事をとり、家族団らんの時間を過ごしてから、自由時間をご就寝なされるまで各々過ごしております。


「ねぇ、美弥子さん」


「何でございますか?」


夜、ご就寝前のケアや明日の準備などを済ませている最中に不意に、真白様に声を掛けられる。

別に珍しいことでもないことなので何気なく返事をした私に、真白様はこう言葉を漏らした。


「美弥子さんは、私のことを忘れないよね」


「……何を言っておられるんですか。忘れるわけありませんよ」


ドキリと一瞬心臓が跳ねる。それが酷く不吉なモノに思えて、私は慌てて真白様のもとに駆け寄ると、視線を合わせながら答えました。

忘れるわけがございません。もう4ヵ月近くこうして仕えているのです。そしてこれからもそうしていこうとしている方のことを忘れようはずがありません。


「誰も、貴女のことを忘れることなんてしません。奥様も旦那様も、千草様も墨亜様もこの家にいる者たち全員が。それにご学友の方々や、朱莉様達も忘れませんよ。真白様はそれほどまでに皆さんの中心にいるのですから」


「……うん、そうだね。そうだよね」


思ったままのことを伝えると、不安そうに揺れていた瞳が落ち着く。何か、真白様の不安を煽るような出来事があったのだろうか。

私には心当たりはない。もしかするともっと幼いころのことを不意に思い出してしまっているのかもしれない。


思わず抱きしめ、大丈夫だと心身ともに精いっぱい伝える。少しでも、真白様の不安がこれで紛れるのであれば私に出来ることは何でもしよう。


「美弥子さん。もう一つお願いしていい?」


「何でございましょう?」


「……今日は一緒に寝てほしいなって」


ちょっと予想外のおねだりに私はキョトンとしてしまう。そういうお願いは初めてだ。初めてだが、あまりの嬉しさにギュッと抱きしめる力を強めてしまう。

真白様に苦しいよと文句を言われてから離すと、準備をしてからお部屋に再び来ることを伝えて、いったんお屋敷にある自室へと戻る。


粗相のないようにはしたつもりですが、今回ばかりは目を瞑ってほしいところですね。こればかりは譲れませんので。


「では、おやすみなさいませ」


「うん、おやすみ」


すぐに寝間着や必要なものを持ち真白様のお部屋に戻り、一緒のベッドに入る。


私の胸に潜って離れない真白様を優しく抱きしめ、私たちは目を瞑る。小さな主を胸に眠る夜は不思議と深く深く眠りにつくことが出来たのだった。



なお、後日このことが光様にバレ、光様と一週間真白様は一緒のベッドに寝ることになり、墨亜様からはズルいといわれ、千草様から呆れられ、旦那様は奥様を真白様に獲られて肩を落としておりました。


そんな、にぎやかででもどこか夢物語のような、そんな日常が今の私の日常なのです。



アリフル1周年ということで、短いですが筆を執らせていただきました。楽しんでいただけたら、とてもうれしく思います

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― 新着の感想 ―
[一言] 私も12月22日が誕生日なのさ(1966年)
[良い点] たまに素が漏れるほどの愛。 楽しかったです。 十三さんの年齢からいくと、美弥子さんの年齢は、真白の母といってもおかしくはないようです? 愛が溢れていてほっこりしました。 [気になる点]…
[良い点] 可愛いが過ぎるな [気になる点] ふと自分の子供の頃を思い出そうとしてアレってなる瞬間がないのかな? あるいはその発露が終盤のシーンなのかもしれないけれど [一言] 1周年おめでとうござい…
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