都市伝説:隠し屋
じゃっくを早く出したいですなぁ
時刻:2405年春/場所:アングロ皇国(旧アングロアメリカ)
「なぁ"隠し屋"って知ってるか?」
目的地へと向かう車の中、運転手の男が隣の仲間に話しかけた。
「隠し屋?なんだそりゃ」
出発してから一言も言葉を発しなかった運転手が突然口を開けたことを訝しみながら言葉を返す。
「いや俺もあんまり詳しくは知らないんだけどよ。金さえ払えばどんな相手からも隠してくれるんだってよ。しかも追ってるやつが諦めるまで絶対に見つからないように。会う方法と条件さえ知ってれば誰の依頼でも聞いてくれるらしい」
運転手は周りに気を配り運転しながら言った。
AIによる自動運転が一般化したからと言って事故が0というわけではない。
AIが突然故障し手動で運転することになるかもしれない。
今の自分たちの状況で事故は起こせない。決して。
「ハッ!地球人の間ではそんな都市伝説が流行ってんのか?居てくれたらいいねぇそんな奴が!俺達みたいなのからすると神様みたいなやつだ!」
あまりにも馬鹿げた、それでいて夢のような話をまじめな顔をして話す運転手を鼻で笑う。
「でどうやったら会えるんだ?その隠し屋って奴によ。」
目的地まで順調にいってあと20分。
運転手の話は一片たりとも信じていないが暇潰しにはなるだろうと狐ような大きな耳を運転手へ向ける。
「別に特別な方法でもないさ。ただ電話をかけるだけさ。電話をかけて依頼をするだけでいい」
「なんだよ面白くねえ。中途半端な話だな。10人の生贄が必要だとか、依頼したら魂を吸われるとかにした方が都市伝説って感じがしていいんじゃねえか?」
少しは面白いだろうかと期待していた運転手の話がお粗末なものだった為狐耳はがっくりしながら続ける
「それで?条件ってのはどんなのなんだ?まぁあんまり期待しちゃいないがよ」
仲間の食いつきが予想していたより良かったことに頬を緩ませながら運転手は答えた。
「こっちもありきたりさ。金だよ。最低でも30万マニー。普通に働いて贅沢せずに貯金して5年程度はかかる大金さ」
「ほんっとに面白くねえ話だな。期待してないとは言ったがここまでありきたりだと逆にびっくりするぜ」
大きくため息をつきながら狐耳は呟く。
「まぁいい時間つぶしにはなったぜ。そろそろ目的地だろ。気合い入れろよ?
これが成功すりゃその隠し屋なんて10回でも20回でも呼べるくらいの金持ちになれるんだからよ」
目的地...皇国金庫近くの駐車場に車を止める。
先に到着して準備をしていた仲間たちが後部座席へと乗り込んだ。
どうやら準備は万全のようだ。
「いいかお前ら落ち着いて計画通りにすりゃいい。
それじゃ行くぞ!銀行強盗の時間だ。」
たいていのセンサーを無効化するマスク、警備員の装備を突破するための強力なエネルギー弾マシンガンを装備した仲間たちが車を降りる中運転手はこの仕事を紹介してくれた友人との会話を思い出していた。
「いやいや分かる分かるよ?変な都市伝説だとか俺の妄想だとか思ってんだろ?でもマジなんだって!いいからこの電話番号だけは持っとけって!な?」
その友人はハイリスクハイリターンな仕事しか受けないのに何故か必ず生きて戻ってくるような奴だった。
何故いつも生き延びられるのか問い詰めた所教えてくれたのが”隠し屋”の存在だった。
「おい!なにボーっとしてんだ!ここまで来てビビってんのか?」
狐耳が眉をひそめて言う。
「いや、大丈夫さ。手に入れた金でどうしようかって妄想してたんだ。今行くよ」
車を降りポケットに手を入れる。
「さあ行こうか」
(まぁホントだったら儲けもんってことで)
電話番号のメモと先日買った使い捨ての携帯電話が確かにあることを確認し、仲間と共に銀行へと向かった。
誤字や物語の矛盾、その他気になる部分がありましたら報告していただければ幸いです。