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街との関わり方

その日の夕方、頼んでおいたものを受け取りに、ギルドを訪れていた。

頼んでから今まで何してたかって?

もちろん家に帰ってました。


ユラギは必要な物を頼み終えた後は、街で食事を済ませて帰る道すがら雑貨を見て回り、帰りの帰路に就く。

軽く小物を買ったり、食料品を少し買って来た道をたどり帰ればウンディーネが噴水の淵に座って待っていた。


「もー!!!!どこに行ってたのよ!みんなを連れてきたのに、ユラギの姿がないから私に怒って当たってきたんだからね!!!!」


ウンディーネはユラギに「プンプン」文句を言ってきたが、本気で怒っているわけではなくユラギの姿を見つけて安堵し、それを隠そうとしてだった。


「ごめん、ごめん。色々と物入りだからね。街に買い物に行ってたのよ。せっかく引きこもるのを辞めようかと思ったんだから、生活もしっかりさせたいし。」


「確かに、そうよね。でも、私たちにも少しは構いなさいよね。今度こそみんなを連れてくるから、ここで待っててよね!!!!」


ウンディーネは噴水の周りをクルリと一回りすると庭の奥に行ってしまった。

そして、ユラギはしばらくかかるだろうと噴水のふちに腰を下ろすと買ってきたものを画面を見ながら確認している。

ユラギが買って来たのは、手軽に食べられるようにパンを主食に使った物で魚のフライを使った物や、野菜を使った物、お肉を使った物にフルーツを使った物など多種多様であった。

ユラギは、その中から小ぶりのフルーツサンドを取り出し口に運ぶ。口の中に広がるフルーツとシロップの甘さが鼻に抜けていく。酸味もわずかにあり甘ったるくないこのサンドは当たりだと考えていると、その流れで「クレープ」を思い出した。


「クレープ・・・。この世界にはないのかな?あと、生クリームとかもお店で売ってなかったし、いっそのこと作ってみるのも・・・・。」


そんなことを勝手に想像して、妄想を膨らませるユラギ。画面を開いてかかる材料を書き出して、それに伴う金額を調べてメモしていく。

最終的に「クレープ」一つあたりにかかる金額を算出して、次に手間賃や買ってくれるであろうぎりぎりの金額まで売値を引き上げて考えたり、妄想を膨らませていき不敵な笑みを浮かべていることには気が付いていないのであった。


「ユラギだー!!!!」

「本当に家から出てきてる!」

「これは、現実なのでしょうか!」


ユラギの前に突然、緑の髪に小さな竜巻を引き連れた少女に、赤色の癖毛に炎の肌を持つ少年、色のついた石飾りを耳に付け体の一部が岩の肌をしている少女が現れた。

皆、宙に浮いておりユラギの周りを飛び回りながら久しぶりに会えたことを喜んでいた。


「みんな久しぶり!心配かけてごめんね。」


「ホントだぜ!みんな心配してたんだからな。ずっと部屋から出てこないし、話しかけてもまともに返事返さないし。」


「ホント、ホント。私たちのことなんかどうでもよくなったのかって思ったし。」


「でも、元気にこうしてまた会えた。心配したけど、元気そうでよかった。」


ユラギは久しぶりに会っても、変わらない態度で接してくれるので今までの調子で話だし、昔と変わらない感覚に居心地の良さを思い返した。

この三人はウンディーネの連れてきた精霊たちだ。


緑の髪に小さな竜巻を引き連れた少女は、風を司っている【シルフ】

赤色の癖毛に炎の肌を持つ少年は、火を司っている【ヴルカン】

色のついた石飾りを耳に付け、体の一部が岩の肌をしている少女は、地を司っている【ノーム】


それぞれ、自然界に存在している力を司っていて精霊たちの中では中位に位置している。ウンディーネを含めてこの四人は成長途中であり、これから上位精霊となる可能性を秘めている。

彼らはユラギとこの庭で出会い、仲を深め今に至る。

出会いこそ長くはないが、互いに尊重し合い契約を交わしてくれたことは今思い返してもありがたかった。


ユラギは精霊たちと会話をしながら屋敷に向かう。

精霊たちも集まった影響からか、庭に植えた種や苗たちが元気よく成長しているのが分かる。いや、成長しすぎじゃない?

すでに種を植えた所には何枚も葉を出し蕾まで付けているやつもあれば、苗で植えたものは実をつけたり、美しく花を咲かせたりとついさっき植えたとは思えない成長ぶりだ。

庭が激変していくのを横目に、屋敷に入ればユラギは買ってきたものをキッチンに片づけて、精霊たちにも指示を出していく。


「ヴルカン。お風呂に入りたいから、ウンディーネと一緒にお風呂場に行ってお湯を貯めてきてくれない?」


「え~!めんどくさいんだけど!!」

「え~!俺の火は湯沸かしのために使うものじゃないぞ!!!」


などと文句を言っている二人であるが、ユラギが再び「お願い!」と言うと、結局久しぶりに頼られてうれしいのか風呂場に飛んでいく。


「シルフには地下室の空気の入れ替えをお願いしていい?埃とかは魔法できれいにできたけど、空気までは入れ替えられてないのよ。お願いね。」


「わかったわ。」


「ノーム。私がみんなの居ないうちに色々といじっちゃったんだけど、庭の魔力の流れとか問題になりそうなところを修正してきてほしいの。あと、念のために侵入者用のまじないを込めた石とかも新しく置いてくれない?」


「わかりました。庭に関しては任せてもらって大丈夫。でも、設置するまじないの石はどんなのにする?ガーディアンみたいなやつも出来るし、飛び道具を発射するものも、近づいた時に発動する設置型の魔法タイプとか色々あるけれど。」


「そうね、トラップの種類に関してはノームに任せる。でも、庭に対して邪魔にならないように考慮してほしいな!」


「景観を崩さないように効率的な物を設置しろってことでいいかしら?」


「うん!お願いね。」


ユラギが昔の生活(転生前)の様に暮らすための準備をして、空の端がオレンジ色に変わるまで精霊たちと久しぶりに交流を深めていた。




その頃手紙を渡したギルドでは・・・。


「ユラギ・・・。ユラギ・・・。報告書・・・。誰だったかね?」


生産ギルドのサブマスの「ルーデン」は、ふくよかな体を持った女性であった。おばさん気質のためか、無駄に厳しく、面倒見がよく、明るい女性であった。受付嬢の持ってきた手紙の差出人の名前を必死に思い出そうとしたが思い出せないでいた。

それもそのはず、10年ほど前に数回しか会ったことのない相手を名前だけで思い出すことなど、よほど記憶力のいい人でなければすぐにできないだろう。

ルーデンは、思い出せないまま手紙を開く。


「あ”あ”あ”あ”!!!!!!」


その時、生産ギルド内に奇声が響き隣の商業ギルドでもその声は聞き取れるほどであった。

「なんだ、なんだ!?」と一階では居合わせたものだちが騒ぎ、職員が「どうしたのか?」と二回のサブマスのいる部屋に駆け上がろうとしたその時・・・・。


「「ドーーン!!!」」


机が大きくたたかれ、扉に近づいた職員は突然の大きな音に心臓をバクバクさせた。


「情報屋かーーーー!!!!!!」


姿は見えない、しかし声は丸聞こえ。

聞こえてくる声からして、サブマスのルーデンであることは違いないがこれほど荒ぶっていることは見たことも聞いたこともなかった。


「サブマス・・・。どうかされたんです・・・か?」


一人の職員が扉をそっと開き、恐る恐る声をかけると部屋の中は荒らされたように散らかっており、書類はひらひらと宙を舞い、机には手形を二つこさえられていた。


「な、なんでもないよ。少し驚いただけさ。それより、私には急用ができちまったから今から情報屋のところに行ってくる。部屋はこのままでいいから、今すぐに隣にいる商業ギルドのギルマスを呼んできておくれ。アイツも一緒に連れてくから。ほら!ぼさっとしない。さっさと行動を起こす!!」


活を入れられ、呆けた職員はゆわれた通りに行動を起こすため、部屋を出ていく。


「さて、私も準備をしないとね。まずは部屋の片づけをっと。それから、この報告書を【複製(コピー)】これも、領主に届けないとね。はぁぁぁぁ、やっと姿を現したと思ったらこんな情報をもって来るなんて・・・・。」


ルーデンは職員がいなくなると、散らかしてしまった部屋を片付けるために魔法を使った。指先が光だし指を振るたびにバラバラになった書類が、落ちた本が元の場所に戻っていく。

そして、報告書に今一度目を落としそれを複製した。この報告書には極めて重要なことが書かれていたからである。

自分の名と印で封を占めて、この町の領主に届けるように準備をする。


一通りのことを片付けると、ドアを叩く音がなり招き入れる。

入ってきたのは商業ギルドのサブマス「ルカナ」である。ルカナは、いきなり呼び出されたにもかかわらず、呼びに来た職員でさえも何のために呼んだのか分からないと、要領を得られず少しイラついた様子で入ってきた。


「ルカナ」と「ルーデン」は昔なじみの友人で会った。それこそ、ルカナはルーデンの下で仕事を習い商業ギルドに推薦までしてもらい、今の地位まで上り詰めたと言ういきさつがある。

言ってしまえば、恩人だ。しかし、商業ギルドでサブマスとして仕事をやっていくうちに、その気質も変わってしまったようで少しせっかちになっていた。


「ちょっと、ルーデン!どういうことなん?いきなし呼び出して!こっちやって立場ってものがあるんやで。それに、要件もなしに勝手に席開けられるほど商業ってものはのんびりしたものやないんよ。」


「急に呼び出したことは謝るわ。でもね、それは仕方ないことなのよ。これに目を通しなさい。その報告書は今日届けられたものよ。しかも、「情報屋本人」から。」


「なんやねん!この報告書!!!こんなことホンマに起きるんか?てか、情報屋本人って!」


「ええ、なんでこの報告書を自分で届けに来たのか?今まで、住んでいる場所も誰も知らない、姿を現さずただひたすらに依頼された情報を集めるだけだったのに・・・・。で、今回の報告書の内容も含めて確認しに行ってみようと思うの、情報屋の家に。」


ルーデンは立ち上がり、ルカナと一緒に部屋を出て外に待機させた馬車に乗り込む。


「ホンマなん!それ!!私も行く!でも、どこに住んでるのか知ってるの?」


「魔法で調べてあるわ。情報屋からの報告書に探査魔法をかけて程度の場所はつかめてる。でも、魔法だけだと正確なところまで調べられなかったのよ。何か、魔法を弾くような結界でも張っているようなの。だから、正確な場所は人を使ったの。」


「あー、昔私に聞いてきた森の屋敷のこと?あんなところに捨てられた屋敷が昔あったってだけしか、記録には残ってなったけど。」


「そう、だから私は、冒険者ギルドに依頼を出して現地調査をしてもらったの。するとどうだったと思う?古く、朽ち果てた屋敷の跡があるだけだと思ったんだけど、報告では蔦に覆われた壁の向こうに入ろうとした途端強い力で弾かれ中に入ることはできなったそうよ。」


「ちゅうことは、まさに当たりやな!」


馬車は街を抜けて郊外へと進んで行く。大きな道をそれ小道に入り、馬車では進めない細い道を見つけた。

しかし、この道はまだ作られて新しいように見て取れる。

周りの草木が切られて間もない。

ルーデンは「ここだ!」と確信をもって道を進む。


人二人分ほどの幅しかないこの道を進むのは、護衛の三人とルーデン、ルカナ。

護衛の者はともかく、普段建物の中にいる二人は中々にしんどい道のりだ。

少しの休憩をはさみつつしばらく進むと、蔦に覆われた立派な壁が姿を現した。遠目からでは壁自体が森に紛れて見つけることすら難しい。道があったからこそ迷わずにここまでこれた。


早速、門を開こうと手をかける護衛の者たちは「バチッ!」と何かに弾かれる痛みを受けた。

仕方がなく、剣を抜き鉄格子に巻き付いている蔦を切り落とし庭だけでも確認しようと振りかざした。

蔦は弾かれることなく、だんだんと少なくっていき中の様子が見れるようになった。


「女の子?」


護衛の発した一言に、ルーデンやルカナも切り開いた隙間から中の様子を見ようとした。しかし、護衛が見たのは建物の中で動くユラギの姿であり、庭を見ている二人は見つけられず、教えられてやっとユラギの姿を目にした。


「あの子が情報屋?」


「全然、そんな風には見えへんけどね?」


二人は疑問を抱いたが、次の瞬間体重をかけすぎたのか鉄格子の門が鉄のこすれる音を立てて、蔦をブチブチと切りながら開かれ二人は庭になだれ込んだ。

不思議と結界によって弾かれることはなかった。

護衛たちも中に入ろうと試みているが、彼らは中に入れない様子で何度も弾かれている。


「「何ここ?」」


二人が思ったことは、同じだった。

不思議な結界もそうだが、庭もまだ整備の仕切れていない不格好なもの。

何より、オブジェとは思えないような岩の塊がそこら中においてあった。

二人は、このままユラギと接触するため屋敷に向かうことを護衛たちに話し、待機を命じた。

そして、二人が庭にひかれた道を進みだす姿をじーと見つめる「ノーム」。

ユラギは、この侵入者に気が付いているのだろうか?


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