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ベノムバイパー

村長の口から出された答えは、ユラギの想像していた通りの物だった。


「この村の金を集めたところで、あれほどの魔物の討伐費には全然足りないでしょう・・・。ほかの物で支払うにしてもさしたるものはございません。しかし、どうか助けて頂きたい!できうる限りの支払いと、足りない分は時間をかけて必ずお支払いいたします!」


村が切羽詰まっていることは、村長の声を聴かずともわかっていたし、答えを聞いて確信に変わった。

この村は特別大きいとは言えない。

村の近くまで深い森が広がっており、畑の大きさを考慮しても冬を越すための備蓄や生活に必要な量を賄えば、あとは税として取られて何も残らないだろうと簡単に予測できた。

ま、これも情報魔法の演算から割り出したのだけど。


「わかりました。本来であればお断りするしかない案件です。ましてやサブマスは注意する側で、前例を作ることとなるのは避けたいのですが「ベノムバイパー」ともなれば村だけでなく、街の治安すら脅かしかねません。それに今回は一冒険者の気まぐれでたまたま訪れて、たまたま討伐されたということでお願いしたいです。よろしいですね?」


責め立てられ、希望を失わされたかのように話を聞くしかできなかった村長は、最後は涙を流しユラギの手を取り感謝の言葉を述べ続けた。

しばらくして、泣くのを止めさせたユラギは「ベノムバイパー」の元に向かう。


深い森は多くの生き物を育むが、同時に厳しい生存競争の場となる。

虫をはじめとする小さな生き物から、動物もそれなりにいていいはずの森なのに、生き物の音がとても少ないように感じた。

ユラギは迷うことなく探知魔法を発動しあたりを調べるが、虫はいても動物の反応はほとんどない。そして、ユラギの目指す「ベノムバイパー」はこの先の山の麓から動いた様子はなかった。


「やっぱり「ベノムバイパー」から逃げるために遠くへと移動しているのね。すでにこの森の頂点は「ベノムバイパー」にとって代わられたみたいだし、早くどうにかしないとね・・・。」


ユラギは森の中を駆けて進む。近くまで来ると音を出さないように慎重にし進み、山の麓、ちょうど崖となっている岩場に空いた洞窟を見つめた。

あの中に「ベノムバイパー」いることは間違いないだろう。念のために、ユラギは探知魔法を発動させて居場所を知るとユラギは力いっぱい、地面を蹴り飛ばし横に大きく飛びはねた。


すると、ユラギの居た場所の地面がえぐれ傍にあった木の半分がかじり取られ倒れてしまった。

ユラギは力いっぱい飛び跳ねた勢いで右肩を地面にぶつけ、痛みをこらえながら襲い掛かってきた敵を見つめる。


「ベノムバイパー」


大きな瞳はこちらを見定めるように鋭く、その巨体は人や牛を丸呑みに出来そうなほど大きく、口から吐き出された今しがたえぐられた木の幹には毒と思われる体液がべっとりとついていた。

思っていたよりも大きく、これほど大きな敵と対峙したことはなく、画面では感じえない五感で理解する恐怖と緊張が頭や胸に溢れ出す。

自分が大きくふんぞり返っていたことを自覚した瞬間だった。


「これはちょっと自信が沸かないね。」


ユラギはすぐに精霊たちを呼び出した。恐怖を少しでも軽減したかったということもそうだが、何より攻撃のために。


「みんな!全力攻撃!!」


叫ぶように言い放った言葉に合わせて、四体の精霊たちは攻撃を開始した。

巨大な炎が蛇の頭部を包み、高圧の水の刃がベノムバイパーを切り刻もうと放たれる。

風が草木をはじめ辺りのものを舞い上げ、高速で回転することにより竜巻にも似た突風に巻き込まれた木は見る見るうちに削られ、それに合わせるように鋭く尖った石たちが勢い良くベノムバイパーに放たれた。

それぞれの攻撃が、互いに作用し合うように働きかけ、飛散した水と火が風を生み出し、逆巻く風が石を巻き込み、その巨体を飲み込む。


「これなら!」


精霊たちによる攻撃で姿の見えなくなったベノムバイパーは、攻撃止むとその巨体を大地に音を立てて崩した。黒く焦げ、体は傷だらけ、肉片も崩れ去り炭とかした物はそこら辺に散らばりもはや生き物とは見えない姿となっていた。


「いきなり呼び出したと思ったら、この状況ってどう言うことよー!!!」


「ごめんねー。でも、戦闘なんだから仕方ないでしょ。みんなには感謝してるよ!」


ユラギは4体の精霊たちに触れながら感謝をしめす。

文句を言ったり驚いていた精霊も皆笑い微笑ましい雰囲気となり、改めて黒こげになったベノムバイパーだったものを見るのだった・・・・・。

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