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ワームの討伐

2人からの情報を聞きつつ、どのような対策をとるか考えているユラギであったがその姿は、これっぽっちも感じさせないグータラぶりであった。

屋敷の部屋の一室に置かれた、人一人が横になっても余裕のあるソファー。すでにベットに近い大きさの物に、ブランケットをかけながら寝そべり情報魔法の画面を開いて報告にあった魔物を調べさせつつ紅茶をすする。


「ユラギー!寝ながら紅茶を飲むのは行儀が悪いわよー。一応サブマスになったんだから、しっかりしないよダメなんだからね!」


シルフがうるさく言っているが、いつものことなのでユラギは生返事を返すばかり。

そんな二人のやり取りを、あきれた様子で見るヴルカンは窓の外で作業をしているウンディーネとノームの元に自分も行こうか考えていたが、適当にあしらわれるシルフがキレてユラギに魔法を放とうとしたので止めざるえない状況になっていた。


「おい、いい加減ユラギもしっかりしろよ!こいつも、、、どうどう。こんなに怒っちまってるわけだしさ。」


「私は別にサボってるわけじゃないわよ?この二体の魔物をどうやって効率よく倒させるか考えてたの。」


ユラギは画面をクルリと回転させると、二体の魔物を見せた。

「ベノムバイパー」と「グランドワーム」だ。

二体ともニョロニョロした生き物で、どちらも攻撃を与えるのが難しい。

今、この街にいる冒険者たちの中にはそれなりの実力者もいるが荷が重い魔物たちだ。


「そんなの簡単だぜ!俺とユラギが力を合わせれば、蛇も虫もあっという間にまるこげだぜ!」


「何言ってるの!私とユラギで細切れの、みじん切りよ!」


2人は、自分たちが活躍することを考えて「自分こそが」と想像し小さなことで争いだしそうだった。


「盛り上がってるとこ悪いけど、私は今回、この魔物の討伐にあまり乗り気じゃないのよね。討伐は必要だけど、できればこの街の冒険者にやらせたいのよね~。」


2人ががっかりしてうなだれるのを横目で見つつ、インベントリから出した作り置きのクッキーを口に投げ込み、これ以上うるさくしないように黙らせる。


すでに私は、この街の中で知らない人はいないくらい名前が広がっちゃってるから力を見せつけるようなことをする必要はないのよね・・・。

むしろ、変に考えられたりよからぬことに話をもっていかれるほうが困るし。


ユラギは魔物たちの資料の下に秘かに開いていた画面を閉じて思う。

もしも、領主との関係に修復できない亀裂を生じさせたらどこの貴族が動くのかしら?と・・・・。


ユラギの考えは、ただの可能性であったが早急に二体の魔物討伐の指示を出さないといけなかった。

翌日にとうとう被害が出てしまったのだ。


報告が来たのは「ベノムバイパー」の被害だ。

街から少し離れた村に現れ、外で遊んでいた子供と水くみとしていた主婦が食べられてしまったそうだ。

村の被害は、そのほかに飼われていた家畜や馬が食われたそうだが、もう悠長に考えている暇はない。


報告を受けて半日としないうちに村に向かったユラギは、道中の変化にも注意して向かった。

ついでとばかりに、植物分布の確認をしたり「情報魔法」や「探知魔法」を使って生き物の分布、個体数の把握などのギルドにとって必要な情報をまとめて報告書を作成していく。そして、村へと急いだ。


「ベノムバイパーは自分で仕留めるしかない」と重い腰を上げたユラギは、さっそく被害のあった村に来た。


すっかり怯え切ったようで、外を出歩いている村人は一人もいない。

張りつめた空気が似つかわしくないこの村を覆い、怯える感情が村の様子から感じ取れた。物音まったく無いと言えるほど静かで、ゴーストタウンの様子であるがユラギは村に入り探知魔法で「ベノムバイパー」が居ないかを確かめた。


「今のところ居ないみたいね。でも、あの山の麓あたりにいるようね。この距離だと、「ベノムバイパー」の全速力で10分ってとこかしら?」


ユラギは歩き、無断ではあったが村の中を探索して回った。

大きく壊された牧場の柵や半分崩れた石造りの井戸、何かが這ったような地面の溝、そして森へと這った跡が草原の草をなぎ倒し続いていた。


「あなたは何者ですか?この村を見て回っている様子ですが。」


草原に残された後を見ていたユラギに話しかけてきたのは、細身の老人だった。

決して風格があるわけではない。しかし、丁寧な口調やユラギを見定めようとしている目からこの人物が只者ではないことはすぐにわかった。


「初めまして。私はユラギ。今回「ラゴリ」の冒険者ギルド支部のサブマスをしています。「ベノムバイパー」による被害が出たとのことでしたので、出向かせていただきました。勝手に村を歩いでしまいごめんなさい。」


「そうだったのですね。私はこの村の村長をしています「マブ」といいます。おっしゃられた通り、今ではベノムバイパーがこの村に現れて以来このありさま。外に出るものは少なく、いえ、必要最低限。それも、短時間のみ外出するようになってしまいました。ユラギさんは、冒険者でありサブマスとなったラゴリ屈指の実力者と聞いています。どうかこの村をお救いください!」


村長のマブが、いきなり地面に手を突き頭を下げ当としだしたのでユラギは慌てて止めさせた。

老人にそんなことをさせるのに気が引けたこともそうだが、このように被害が出るまで放置していたことに対して罪悪感がわずかながらにあったことは否めなかった。


ユラギはさっそくベノムバイパーの討伐するために村を出ようと考えたが、ふとサブマスとしての務めを思いだしてしまった。


「ところで村長。討伐するのはいいとして、これは一応冒険者ギルドへの依頼と言うことになると思うのだけれど・・・・。報酬の方はどういう風に考えてるのかしら?」


村長の必死の訴えでユラギをベノムバイパー討伐に向かわせることができると思ったが、突然そのようなことを言われて固まり冷や汗を一筋たらし、重い口を開けたのはわずかに間をおいてからであった。


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