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はじまり

久しぶりに小説を投稿しようと思います。気まぐれで続かない可能性も多いですが、読んでいただける奇特な方がいれば幸いです。

広い部屋に私は一人。

私以外誰も居ないこの部屋には、自分で作った魔法水晶版と大きなベット。ソファーとテーブルしかない。

大きく作られている窓は常にカーテンを閉め、薄暗い部屋にされている。

私は一人引きこもり、関わることを控えている。


私の家はどちらかと言えは広い。

中級貴族が持つ屋敷くらいの大きさだろうか?

ま、私が使っているのは屋敷に数ある部屋の一室なのだけれど・・・・・。


「少しだけ、外を覗いてみたけど。やっぱり荒れ放題だな~。」


太陽を見上げその眩しさに私は手で顔を隠す。

私の名前は「ユラギ」。冒険者ですが、引きこもりです。






なぜ私がこのような生活を送るようになったのかを説明すると、とても長い話になるので少しずつ話をしてくこう。




私は昔この世界とは別の世界に住んでいた。そこで私はごく普通に暮らし、職に就き、精一杯の努力をして生活をしていた「つもり」だった。


「ねぇ、あいつ生意気じゃない?私たちと同期のくせして張り切り過ぎてるっていうか、うざい。」

「あ、分かる。俺たちとペースが合わないっていうか、仕事を早くこなしてくれて助かるけど、周りが見えてないっていうか、空気が読めてないみたいな!」

「うー、頑張っていることは分かってるから後輩のことを先輩の私がどうこう言うのもあれだけど、確かにもう少し周りを見て考えてほしいわね。」

「仕事をこなしてるし、大きな問題はないけど、言葉使いとか接し方とか、敬う気持ちが足りないと俺は思うな、この前なんか「あれやってください」、「これやってください」。「頼んでたやつ終わってますか?」「まだですか・・・。」とか、後輩のくせに頼みすぎだろって!!」


思い返しただけで、胸を痛める私は愚か者だろうか?

私は空気が読めていなかったこと、配慮が足りなかったことを酷く辛く感じてしまった。昔、私のことを「真面目過ぎる」と言った者がいた。「もっと考えて動けよ!」こう言われたりもした。

「あなたは空想の青い鳥を探しているのかしら?」と遠回しに理想をけなされもした。


【私はどうしたらいいの?どうしたらよかったの?】


自分の中に視界を狭めるような感情と言葉があふれ出し、私はすべてを拒絶した。

どこまで行こうと、どこまで努力しようと、私を見つめ考えの内を見ようとはされない。だから、私はすべてを見ることを辞め、壁の中に隠れた。


差し伸べられた手を拒絶し、閉じこもった私を訪ねてくる者はおらず、私は一人小さな部屋のベットの上で最後の時を迎え、神の身前へ行くことができた。白い部屋、何もなくただ静かで、私が落ち着く闇が一切ない部屋。

そんな怯える私の前に突然現れた「神」を名乗る発光体。それは、私が死んだことを告げた。

そして、神が死んだことを証明するために見せたのはベットの上で干からびた私の体だった。


「臨時ニュースです。【近所から悪臭がする!】と言う通報があり○○市○○のアパートの一室を警察が訪れたところ、女性のミイラが発見されました。専門家の話によりますと、ミイラと言うよりも「即身仏のようだ」との見解を示し、宗教的な観点から自殺を試みたものではないかとの可能性を示唆されています。また警察の調べによりますと・・・・。」




「お前のすべては、私の中で生きている。私は神。生きとし生けるものすべての父であり母。そのものが生きる時間も感情も、すべて私の中にある。それゆえ、私はお前が不憫で仕方がない。努力は人の何倍もして、人のことを第一に考え手助けし、仕事を円滑に回るように立ち回り、忙しい中でも気を使って行動していた。人とは時に虚しく、愚かな生き物だ。お前自身の心が弱かったことも原因だが、まあ、それがお前の生まれ落ちた世界だ。それは仕方がない。ただ、私はお前に伝えたい。お前はこの世界と噛み合わなかっただけだ。」


神にそう言われたとき、私は今まで否定され続けてきたすべてが肯定された気がした。

肩の荷が落ち、胸を縛り付けていた鎖が外れ、爽やか風が吹き抜ける感覚が駆け巡る。

全てが報われ許された。その感情が心を満たした時、私は感謝の気持ちでいっぱいになったがすべては闇へと消えていった。


「お前にふさわしい世界を用意した。新たな人生を歩め。」


突然現れた扉がゆっくりと開き私を吸い込もうと空気を飲み込む。

手を足を使いもがき逃げようとするが、今の私にそんなものはなくなすすべなく吸い込まれていった。

そして、気が付いたときにはこの屋敷と今の肉体があったと言う訳である・・・。


「髪も肌も白くて、目に至っては青と緑のオッドアイ。挙句の果てに魔法まで使えて、街の郊外の人も寄り付かないこんなところのさびれた屋敷で引きこもっていれば、私はいつまでたっても一人だな・・・・。」


ユラギはため息をつきながらカーテンに手をかける。私の肌を焼かんとばかりに強烈な日差しが部屋へと入り込み、ユラギは思わず目を隠す。


「目がー!目がー!なんてね、でもホントまぶし。」


ユラギは床に転がりふざけ終わると、窓を開け空気を入れ替える。

画面で外を見てたけど、自分の目で見るとやっぱり違う。視覚だけでなく他の感覚も相まって気持ちから変わっていくのを感じる。


「こんなに外って気持ちよかったっけ?」


ユラギは自分の使っていた【情報魔法】以外の魔法を使う。世間で普通の使われている便利魔法、俗に【生活魔法】と呼ばれるものだ。


「範囲を指定、この屋敷。生活魔法実行!」


ユラギの魔法発動を皮切りに屋敷がぼんやりと光だし少し霞んだ後、綺麗に改装されたかのような屋敷が姿を見せた。

ひび割れ、シミを作り、カビまで生えていた屋敷の壁は美しく変わり、ほこりの積もった部屋の数々は貴族の家と言えるだけの美しい物に変わっていた。


「問題はなさそうね。画面表示。屋敷は全部きれいになったみたいね。状態保存をかけていたから家具の腐食もないし、クローゼットの服もきれいだね。」


ユラギはそのまま服を着替え水色のワンピースを着る。若草色の藁帽子をかぶり外に出る。

屋敷自体はとても美しく高値が付きそうな見た目に変わったが、屋敷の周りにある庭はジャングルのままである。

あくまでも生活魔法は簡単なことしかできない。ゴミを消す、清潔にする、水を出す、火を起こすなど。

仮に庭にも生活魔法をかけようものなら、ゴミが無くなり清潔になった雑草が生えるジャングルができるだけである。

だから、あえて無駄なことはしなかった。


ユラギは次の魔法を発動する。

風の魔法でサイクロンと呼ばれるものだ。これは竜巻を作り出す上級魔法であるが、ユラギはこれを極々小さく最小限の魔力で実行した。

魔法の構築過程で必要量に魔力が達しないで魔法を発動すると現象を引き起こせないが、ユラギは情報魔法を用いて元々あった【サイクロン】の魔法式を改変して別のものを生み出した。しかしこの魔法式でも、魔力のコントロールが必要なため上級魔法の扱いは変わらない。


ユラギが生み出した小さな竜巻は庭を駆け巡りジャングルを形成していた植物たちを切り割き、細切れにされると隠れていた花壇や枯れた噴水、腐葉土になりかけている落ち葉など庭とは思えない自然の地面が目に映る。

見るに堪えなかったユラギは、すぐに【生活魔法】をかけ切られた草木のゴミや邪魔な物たちを消し去った。


「これで下地は整ったわね。あとは、、、画面表示。この庭に植える植物をどうしようかしら?うーん、バラは必須よね。あとは噴水も直さないとだし、、、。きれいにしたからには屋敷に守りも必要よね!別に取られるものはないけどw」


ユラギは楽しそうに画面を見ながら庭をいじりだす。画面を見て色とりどりのバラの美しさに花壇を再現する。


「確か昔もらった報酬にマジカルフラワーの種が。そうそう、これこれ。あとはベリー系の苗もある!庭先で食べられる物を育てるのもいいわよね!いっそのこと家庭菜園も兼て植えてこう!」


ユラギは自分の持っている「インベントリ」から使えそうなものを次々に出して、花壇に植えていく。


この【インベントリ】とは、【情報魔法】の中に含まれる各種能力の一つであり、使い手の魔力量によって「意思のない物」をしまっておける力である。

ユラギの場合、他の世界から来た時の特典によりかなりの魔力量を所持している。そのせいもあって、実際のところ身近に使うものから家や屋敷までもその中に入れてあるのだ。

本人はすでに何が入っているかなど忘れており、毎回画面を見て「こんなものも入れてたっけ!」と驚くことがしょっちゅうある。


ユラギは花壇を埋め尽くすように出したものを植えていった。

ラズ、ブルー、ブラック、ストロ、クランをはじめとするベリー系のオンパレード。

バラも色とりどりの色が咲くように、赤や黄色、普通にはない青や紫、金や銀の色まで苗を植えた。


「あとは、、、。精霊召喚:ウンディーネ!」


枯れた噴水の前に呼び出された精霊は、ユラギの顔を見ると嬉しそうに笑顔を作りしゃべりだす。


「ユラギじゃない!こんな枯れた噴水なんかに呼び出した馬鹿な人間はだれかと思ったら。ユラギじゃなかったらあたり一帯水浸しにして洗い流してやるとこだったわ!、、、、外に出る気になったのね。」


「ええ。いい加減、部屋の中に居続けるのも辛くなってきたしね。そろそろご飯も無くなってきたし。」


「その気になれば部屋からでも食事を手に入れたでしょうに、、、ユラギなら。でも、私を呼んでくれて嬉しかったわ。ありがとう!」


ウンディーネは水の体でユラギに抱き着く。冷い水だが、着ている服が濡れることはない。決して掴めない柔らかいスライムのような体をユラギは優しく抱き返し、感謝の気持ちを示す。


ウンディーネは、ユラギがこの世界に来た時からの知り合いである。

神が用意した屋敷とあってこの屋敷は、街に住む人間たちには認識されにくいようで元々精霊たちがこの屋敷に住み着いていた。

ちょうどウンディーネともこの噴水で出会った。


「昔はみんな一緒に過ごしていたのに。引きこもりしがちのユラギに愛想つかしてみんな出て行っちゃったのよね。精霊は本来自由なものだからいくら友達のユラギが心配でも、別のところへ行きたくなる気持ちもわかるけど。まあ、私もその一人だしね。」


「みんなには心配をかけたね。ごめん、、、。」


「いいのよ、ユラギ。精霊と人間じゃ価値観が違って当たり前だもの。今こうして、また会えただけでうれしいわ。本当に。」


感情に浸るウンディーネをユラギは「ありがとう」と言った後放してもらう。思うところは私にもあるがいつまでもこうしてはいられない。


「とりあえず、頼みを聞いてもらえる?この噴水を目みたいに直してほしいの。それと、この庭の水路の管理とか!」


「えー、呼び出した理由ってそう言うこと!?もう、友達のよしみで普通ならかなえてあげないけど、そのお願い聞いてあげてもいいわ!ただし一つ条件がある

の!ユラギ!今までみたいに引きこもることをやめること!これからはしっかりと外に出て体を動かしたりここに顔を出すこと!私に管理だけ任せて、また引きこもられちゃったら、私が馬鹿みたいじゃない。私は忠実な犬じゃないんだから!」


「わかった、、、、。」


「今!わかったって言ったわね!!約束よ!絶対なんだから!」


「はぁ。わかった!わかりました!もう引きこもらないようにします。しっかり外に出て生活していくから、庭のことよろしね。」


「うん、了解よ!」


ユラギの庭は屋敷に続く途中にあるこの噴水を起点に、水路が庭を走っている。

昔はその水路から植物たちが水を吸い上げ、水かけをしなくても問題なかった。

また、水路には水生生物たちがたくさんいて、小魚をめでる楽しみもあった。

それらが引きこもっているうちに亡くなってしまったが、こうして今日!復活を遂げた!

まだ、小魚はいないけど水は昔のように流れている。


「これで、一か月もすれば昔の庭に戻るね。」


「あー、それは無理ね。だって、自然を象徴する私を含めた四人の精霊がこの庭を管理していたのよ?だからこそ、前の庭はとても美しく綺麗だったのよ。私が戻ってきただけじゃ完璧には戻るわけないじゃない。」


ユラギは軽く落ち込む。

浅はかな自分は、どれだけすごいものを持っていたのかと、どれだけ恵まれていたのかと今更ながら理解した。

そして、自分の愚かさにテンションがダウン、、、、。


「ま、まずい。だ、大丈夫よ!みんな、ユラギのこと大好きだし、ひと声かければ来てくれるわよ!そうだ、私が今連れてくるから!」


ウンディーネは噴水の中に消えていった。

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