96Dead『交渉のつもりが……』
望はキョトンとしながら
「えっと……俊敏性犬が俺を直したって言ってたけど……どうやって? あの犬実は天才犬で外科手術でも出来んの? それにしては傷が完璧に塞がってるんッスけど?」
と聞いた。
アンジェリスは
「それはね、望に噛み付いたの……そしたら望の傷が全部治った」
と言った。
それを聞いて望は
「……は? 何言ってんだ? それなら俺はゾンビ化してるだろ? だが俺はゾンビ化していない……そして死んでもいない……なら噛みついたってのは嘘になるはずだが?」
と言った。
和子は
「犬が外科手術出来る天才ではないかという可能性を出す癖にむしろあり得そうなそれについて否定するって君の頭の中はどうなってるの?」
と呆れたように言った。
望は
「な! いやいやいや!! だって!! いったい噛み付いてどうして俺の傷は治るんだ!! 意味が分かんねえよ!」
と反論した。
剣子は
「まあ、そこは調べないと分からんみたいだがな」
と言った。
望は
「はああ!!」
と言って納得がいかない様子であった。
アンジェリスは
「でもそれが事実だから私達はそれを調べる必要があるの……もちろん望の血も採って調べるんだけど一番根源である俊敏性犬も血を採る必要があるわ……いったい俊敏性犬の体の中で何が起こったのかを調べる為に……もしかしたらそれが人類を救う1つのファクターになる可能性かもしれないんだし」
と言った。
望は
「でもなんか人を救うことが出来るなんかがあるんじゃないのか? それ使えばいいんじゃねえの? えっと何だっけ? 俺が燃やしたかどうかで種が見つかった? そんなこと言ってたよな?」
と聞くとアンジェリスは
「確かに、聖草の種はあるしそれも研究材料の一つになるのは確定よ、だけどそれ1つだけっていうのはリスクはあるの……研究っていうのは検体が多い方がいいの……その方がこのゾンビ化を防ぐワクチンを作ることがやり易くなるの……だからあなたの血と俊敏性犬の血を採って調べる……それをやるには望の力が必要になるの……」
と言った。
望は
「はあ? 何で?」
と聞いた。
望にとってそんなのは勝手にとればいいんじゃないのかと思うようなことであった。
望の血も自分が寝ている間に勝手に採ればいいだけの話ではないのかと、
しかし、今回アンジェリスは望の助けが必要だというそれ自体が望にとって意味が分からない事であった。
それを聞いてアンジェリスも望の理解力の無さを悟ったのか
「あのね? 和子が触ろうとした時のこと忘れたの? 明らかに敵意を向けてたでしょ?」
「……はあ」
と聞きながら頷く。
「だから俊敏性犬はあなたの言うことなら聞くんじゃないかって話なの……もし、あなたの許可なく俊敏性犬から血を採ろうものなら噛まれてゾンビ化する可能性があるって事……あの子は元はゾンビ何だから何が起こるかすら分からないってことなの」
と言った。
望は
「ああ、まあそうだね……でも俺が大丈夫だったんだから大丈夫なんじゃないの?」
とやはり望は理解をしていなかった。
アンジェイリスは
「あのね! 少しでもリスクがあるならそれは安心とは言わないの! どうしてそれが分からないの! あなたはゾンビになっていいと思ってるんでしょうけど他の皆はそうじゃないの!」
と言った。
望は
「あれ? アンジェリスって俺がゾンビになるか死にたいかのどっちかを望んでるって知ってたっけ?」
といきなりどうでもいい事を気にしだす望にアンジェリスは
「ああああ!! もおおお!! どうして望は話を逸らすの!! バカああああ!! もおおお!! イライラするウウウウ!!」
と癇癪を起しだした。
和子は
「アンジェリスちゃん、逸らしてるんじゃなくてバカだからいきなり気になったことを突拍子もなく聞いてるんだよ、バカに理解をさせるのは困難だけ頑張ろう」
と励ます。
すると剣子は
バシン!!
「!!」
と床をしないで叩き望をビビらせて
「次どうでもいいことを聞いたらこの場でまたボコボコにする……安心しろ、俊敏性犬は連れてきてある、怪我をすれば噛んでもらえ……お前はゾンビになっても問題はないんだろ?」
と不敵に笑いながら言った。
望は
「いや、もうこいつは噛んでもゾンビにならない上に体の治療しか行わないから精神的に痛みのダメージが来る……」
バキイ!!
「ぎゃああああああ!!」
と剣子は牢屋の鉄格子を掴んでいた望の手を竹刀で殴りつけた。
そして、嫌な音が響き望の手は変な方向に曲がっており、更には酷く腫れていた。
望は
「ううぐううううがああああああ……」
と腕を押さえている。
すると
「ガウン!」
と近くにいたのか俊敏性犬が鉄格子から出ていた望の足に軽く
ガブ!
と噛みついた。
そして、見る見るうちに望の手は回復していった。
望は
「お! お前ええええ!! お前の存在価値はゾンビにすることだったのにいいいいい!! それじゃあお前はもう何の意味も持たねえじゃねえかあああ!! ふざけんじゃねえぞおおおお!! そんなんになってから噛みやがってえええ!! だったら最初のうちに噛んでおけよおおお!! ゾンビになれないじゃねえかああああ!」
泣きながら言った。
だが
バキイイ!
「ぎゃああばああはあああああああああ!!」
と涙を流しながら腕を押さえる。
鉄格子の間から剣子が望の腕を竹刀で叩きへし折った。
望は
「うがあああああああ……ぞれ……じないのいりょぐぢがう……」
と泣きながら言った。
剣子は
「フン、これは研究者が作った特殊な竹刀だ……普通の木刀よりも頑丈だぞ?」
と笑う。
望は
「わがっだあああああ……わがっだがだあああああ……ぎょうりょぐじまずううううう」
と泣きながらアンジェリスの言うことを聞くことにした。
アンジェリスは
「まあ、拷問で言うことを聞かすつもりではなく交渉として牢屋から出すって方向でお願いしたかったんだけど……あんたが余計なことを聞いた罰だと思いなさい……とはいえ協力してくれるしいつまでもここに放置するのもなんだし……出してあげるわ」
と言って鍵を開けて望を出した。
「ぐぞおおおおおお」
と泣きながら望は
「じゅんびんぜいいぬうううう……ぢをどらぜでやでええええ」
と取り敢えず言われた通りに俊敏性犬に指示をした。
俊敏性犬は
「ガウン!」
と鳴いてアンジェリスに血を採られた。