94Dead『希望の光』
ボコオオ! ドゴオオ!!
「この恥さらしが!! お前どんだけ最低何だ!!!」
「同じ男として許せん!」
と剣子に蹴られて
アレックスにも蹴られていた。
望は
「いだいぢだああ!! いだああああいいよおおおおおお!!」
と泣きじゃくりながらその場で蹲っていた。
レベッカは
「さすがにドン引きだわ……どうせ反省もしてないんでしょ?」
とゴミを見るような目で望を見ていた。
和子は
「反省何て……こいつがするわけないですよ……レベッカさん……取り敢えず一通りボコボコにして縄で縛りあげて研究所の牢屋にぶち込みましょう」
と言った。
アンジェリスは
「飯は臭い飯を与えておけばいいでしょ、怪我も放置で……」
も賛同していた。
研究者たちは
「待て待て待て!! 確かにこの男は下種で屑で最低でゴミ同然の様な事をしていたが同じ人間だ!! 認めたくはないが……だからそんなことをしてしまえばこいつは死んでしまう! そうなると大なり小なり罪悪感が芽生えるぞ! それは止めておこう!」
と望にとって少し違和感の残る庇い方をしてくれた。
そして、それを聞いてアレックスも剣子も
「チ! まあいい」
「このくらいにしてやる」
と血まみれで傷だらけの状態と痣だらけの状態になった望は
「いだいいよおおおおお、いだいよおおおおおお」
と泣きながら言った。
和子は
「何が痛いだって? 君があの子にやったことに比べれば大したことないよ」
と怒りながら言った。
望は
「なんだよおおおお……どうなってるんだよおおお……」
と言って頭の中が混乱していた。
傷が勝手に完全治癒していた為、異世界で好き勝手出来ると勘違いを未だにしていた望にとって意味が分からない状況であった。
しかし、現に今ボコボコにされており自分にとって不利益な状況になっていた。
その場で痛みに苦しみながら横たわっていると
「ガウン!」
と俊敏性犬がやってきた。
それを見てアンジェリスは
「あれ? 俊敏性犬……どこに行ってたの?」
とキョトンとして聞いたが俊敏性犬は無視をして望の方へとやってきた。
そして
「ガアアア!!」
と口を大きく開けて望の指先を再び噛んだ。
「「「「!!!」」」」」
5人はその場で驚いた。
ゾンビ犬に噛まれるということはその場でゾンビになると同じようなことである為、今まで俊敏性犬は望を噛むことは無いと思っていたのにもかかわらず、噛み付いたのがあまりにも信じられなかった。
だが、アンジェリスは何かに気づいたのか
「ねえ、おかしくない」
と言った。
それを聞いてアレックスは
「ああ、まさか望が噛まれるなんて……」
と言ったが
「違う!! 望の様子よ!」
と言い返した。
それを聞いて研究者達も残りの4人も望を見ると
スーーーーーー!
と望の痣や傷がどんどんと治癒していった。
「!!!」
「まっまさか!!」
「そんな!」
「いったいこれは……」
「ゾンビ犬が……噛んで人を治癒させるなんて……」
と研究者たちは驚いた。
他の4人は
「コっこれが理由で噛んだのか……」
「確かに、こういう理由であれば希咲を噛む理由にはなるけど……」
「でもいつの間にこんな力を……」
「今まで噛まれることは死を意味すると思っていたが……」
と驚いていると
「でも、エルゲスターさんの言っていた耐性の話もあるからあり得なくないかもしれないよ」
とアンジェイリスは言った。
アレックスは
「だがこいつは一回ゾンビになったんだぞ! 死んだような物じゃないのか?」
と聞いた。
アンジェリスは
「死亡を確認された人が蘇生した例はいくつかあるわ……それに肉体は確かに死んだとしてもこの隕石に着いていたとされる細菌は人の細胞を復活させる作用があるわ……それに私のお父さんが開発させた薬も使われてるし、その上望が押してしまったボタンの電波などが影響で俊敏性犬自身の心が取り戻せたっていう可能性もあるんじゃない? 心が身体に影響を与える例だってある、そういう面を見ると俊敏性犬が体の中で何か異変を起こした結果抗体を作って特効薬として望の体を修復したのかもしれないよ!」
と言った。
研究者たちは
「そっそれは凄い!! 今すぐこの犬を研究しないと!」
と言って近づいた。
すると
「ガウン!」
と言って威嚇した。
それを見てアンジェリスは
「止めて! いくら望が治ったからと言ってまだなぞの部分が多いわ、噛まれても平気ではないという可能性も十分あるだから慎重にしないと自分が死ぬことになるわよ!」
と研究者たちに言った。
研究者達は
「確かに……焦りは禁物だ……」
「そうだな……ここは望君が起きて説得できる時にでも……」
と言う者や
「だが証明はされている! こいつが現に回復している! ならすぐにでも調べるべきだ!」
「そうだそうだ! 今の絶望的な状況を打破できるかも知れんのだぞ! 悠長なことを言っている場合か!」
と言う者で別れた。
すると初老の様な研究者は
「落ち着きたまえ……アンジェリス君と言ったかね? 君の言う通り可能性の話だ……望君が治ったとはいえ望君自身がゾンビ化していないという可能性だけでゾンビ化している可能性もあるわけだ……ここは望君を隔離して様子を見る方がいいだろう……」
と言った。
するとアンジェリスは
「いえ……隔離する必要はないわ」
と言った。
初老の研究者は
「それは一体……どういうことかね?」
と聞くとアンジェリスは
「牢屋にぶち込むのよ、こいつが行った罪が消えるわけではないわ」
と言った。
その後、起き上がらない望はどうやら痛みのショックで気絶していたようなので、寝ている間に牢屋へとぶち込まれてしまったのであった。