84Dead『メリット』
望は痛み耐えながら
「殺してくれない?」
と頼んだ。
和子は
「何で?」
と聞いた。
望は
「いや、だって痛いししんどいし……てか俺の目的知ってるんだったら死んでもいいんじゃないの? もしくはそこら辺にいるゾンビに噛ませるとか」
と提案してみたが
「そんなことをしたら私が殺さないといけないし噛まれるかもしれないでしょ?」
と言った。
望は
「だったらさ!! ゾンビがいたら俺を餌にすればいいさ!! な! それなら簡単だろ!! 俺を餌にしている間にゾンビを倒すっていう方法もある!! な! 簡単だろ!」
と慌てながら望は和子に提案した。
すると和子は
「あのさ……私も人間なんだよ……知っている人が死ぬってことを恐ろしく思うのは普通だと思うよ? 君だってこんな世界になる前に知り合いが次の日事故で死んだとか聞かされると変に心が痛んだりしない? たとえ話したことが無くてもいつも見ていた人をもう見ることが無いって分かっただけでも人間って心苦しくなる生き物なんだよ……」
と言った。
望は
「……俺の爺さんが行方不明になった際は俺も妹もなんとも思ってなかったんだがそれは違うんだろうか?」
と聞くと
「あなたに問いかけた私が馬鹿でした……まあ君はどうであれ普通はそうなの……あなたのいつもやっているバカが見れなくなるってだけで何か寂しい気持ちにもなるし苦しく思うの……そして人が死ぬ姿は普通見たくないの」
と素直なことを言った。
望は
「っまああ……そう言うことなら俺自身が勝手に死のうとすればいいだけか……」
と言ったが和子は
「まあ私はそれを阻止するけどね」
と言った。
望は
「さっきの言葉通りで?」
と聞くと
「まあそうだね……私自身がそうしたいだけってことかな……まあ全員を救おうとは思わないけどね……まず自分第一に考えないといけないし……相手のために自分が死ぬのはよっぽど大切な人が死にそうな時ぐらいかな……取り敢えず仲間と言うカテゴリーにいる以上皆君の命は守ると思うよ……いくら呆れようが困り果てようがアレックスさんもレベッカさんもアンジェリスちゃんも剣子ちゃんも私も仲間だと思ってるから……」
と言った。
望は
「ワオ……それは地獄だ……」
と真っ青になって答える。
そして
「あ、剣子ちゃん」
と剣子が目の前に立っていた。
剣子は
「何だ……肩が血まみれだぞ?」
と望に聞いた。
すると和子は
「クリーチャーに食われそうだったから遠くから撃ってその衝撃で躱させたんだけなんだけど……咄嗟の判断としては良かったって私は思っているよ!」
と自信満々に言った。
望は
「良かねえよ!! 俺は肩がとてつもなく痛いよ!! どうにかしてほしいぐらい痛いよ!!」
と涙目になりながら言った。
和子は
「あ! そういえばベイエーンちゃんがいたんだけど逃しちゃった!! ごめんね!」
と言うと
「そうか……だが仕方ない……こいつもいたんだろ? こんなお荷物がいたんじゃ上手くいかない方が可能性としては高い……和子は悪くないよ」
と慰める。
望はそれを聞いて
「おい!! 何で俺のせいになるんだよ!! ふざけんじゃねえよ!!」
と文句を言った。
そして
「まあ取り敢えずレベッカさんとアンジェリスと合流しよう」
「うん、分かった」
「おい聞けよ!! 無視するんじゃねえよ!!」
と文句を言った。
そして
「あ、剣子ちゃん! 希咲君がどうしてゾンビ化しようとしてるか教えてくれる?」
と聞いた。
剣子は
「和子……聞いたのか?」
と聞くと
「聞いたっていうか大声で叫んでたのが聞こえたっていうか……」
と言った。
剣子は歩きながら望がゾンビ化したい理由を話した。
和子は
「へえ、そういう考えに至ったからゾンビ化か……なるほどねえ」
と言って納得していた。
それを聞いて和子は
「まあ悪くないんじゃない? 私は邪魔するつもりだけど……てか希咲君……君が皆に提案したって聞いたけど……君にメリットないよね? どうして?」
と聞いた。
剣子は
「どっどういうことだ?」
と和子に聞いた。
和子は
「え? だってこいつ自分にメリットないとしないタイプでしょ? 今まで自分本位にしか動いてないし……言い訳だって凄かったし……だからこいつは自分にメリットがあったからクラスの皆に提案したんでしょ? それにもしゾンビ化するならクラスの皆に声を掛けた方が成功しにくいよ……だからこいつは未だにゾンビ化出来てないんだよ」
と言った。
それを聞いて望は
「ぐはあ!! 何でそんなに的確な答えを!」
と言った。
和子は
「で? 自分のゾンビ化の可能性を低めてまで何でみんなに提案したの?」
と淡々と聞かれた。
望は
「こっこ答えたくありませ――ん」
と言うと
「えい」
と言って和子は先程撃ち抜かれた肩の傷跡を押さえた。
「ぎあえああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「こうか!」
「うがうあぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!」
と悲鳴を上げて泣き喚く望
そして和子は
「さ! 答えて!! 今のは素直になるおまじない!!」
と言ってとてもいい笑顔で言った。
望は
「お……お前さてはドSだな」
と震えながら言った。
「えい!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
拷問はしばらく続いた。