62Dead『短い間』
ジェイスは和子を庇ってシスターゾンビに噛まれてしまった。
「うぐう!! ぎぎいいい!!」
と呻きながら噛まれた肩を押さえていた。
和子は
「そんな……どうしてゾンビがロッカーの中に……気づかなかった私のせいだ……」
と真っ青になって自分を責めていた。
剣子は
「いや和子は悪くない! 私達だって気づけなかった……すみません……ジェイスさん……」
と涙を流して謝っていた。
レベッカとアレックスは
「ジェイス……冷たいようだけど……噛まれてしまった以上あなたを殺さないといけないわ……」
「ああ、今の段階でゾンビ化を防ぐ術はない……俺達はお前を助けることが出来ない……だからお前の尊厳だけは守りたい……」
と言った。
ジェイスは
「ああ……お願いするよ……お前らとは仲良く出来ると思っていたんだが……こんなに短い間しか一緒にいられないなんて……こんな世界だからこそ出逢えたってのに……こんな世界のだからこんなに短い時間しか一緒に入れないだなんて……糞……皮肉しか言えねえよ……」
と涙を零して言った。
だが笑いながら
「それでも……こんな世界になって逃げるだけの人しか見なかったのに……映画のように助けてくれる人がいた事だけ分かったことが……この短い間だけで俺も人を庇って死ねた事……あんたを守れたことが今まで生きた人生の中で一番価値があった……って俺は思うよ……」
と自分の人生に希望を持とうとした。
それを聞いて和子は
「ごめん……本当のごめん……」
と泣いて手を握った。
ジェイスは
「和子……謝るなよ……ありがとうって言ってくれよ……やりたくてやったことだとしてもありがとうって言われたいもんだよ……最後なんだからわがまま聞いてくれるか?」
と言った。
和子はその言葉を聞いて無理矢理笑顔を作った。
ものすごく顔が引き攣ったような笑顔をでジェイスを見て
「ありが……とう…」
と言った。
ジェイスは満足そうにして
「良かった……グバア!!」
と血を吐き出してアレックスに向かって
「殺してくれ……あいつらにだけはないたくないから……」
と弱々しく言った。
アレックスは
「ああ……」
と言って銃口をジェイスに向けようとした。
すると
「待って……アレックスさん……私のせいでジェイスさんは噛まれたの……だから私が責任を取る……」
と言った。
「!!」
と剣子はビックリしたような表情をした。
ジェイスは
「和子……そうか……分かった……お願いするよ……」
と言った。
和子は銃口を向けて
バアアン!!
とジェイスを撃った。
ジェイスは数秒痙攣してそのまま動かなくなった。
和子はしばらく震えて
「……ううううう……ああああああああ……」
と涙を流しながら膝をつく。
それを見てレベッカは
「バカね……無理しなきゃいいのに……責任なんて追わなくていいのに……」
と言って和子を抱きしめた。
和子は
「つらいよ……でも……しなきゃって……思ったんだもん……後悔したとしてもあらなきゃいけないといけないって……」
と涙を拭って言った。
和子は無理矢理立ち上がり
「行こう……希咲君を探さないと……これ以上犠牲者を出さない為にも……」
と言った。
剣子は
(まさかこれを狙ったのか……もしそうなら絶対に償わせる……)
と考えながら歩き出した。
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その頃トイレに行きたかっただけの望は
「?? ここを……どうだっけ?」
と道が右だけにしか行けない曲がり角で行くか行くまいか悩んでいた。
それを見かねた神父は
「いい加減にしろ!! もういい!! 何処にいただけ言え! 私がそこへ向かう!!」
と言った。
望は
「え……入口に入ったところ……」
とつい答えてしまった。
それを聞いて神父は
「きっ貴様!! それならそうと言え!! お前が迷ったせいでナンシーが死んでるかも……」
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「!!」
「!」
いきなりけたたましい鳴き声がした。
「何だこれは……何なんだこの鳴き声……」
「フフフ」
「? 何だ? どうした?」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
と笑いだした。
そして望は笑いながら
(まさか! この声はクリーチャー型ゾンビ! 学校にいたあのゾンビか! 素晴らしい!! これならば俺は!!)
「ついになれる!! ついに逝ける!!」
と嬉しそうに言った。
神父は
「まっまさか……貴様……私を嵌めたのか……」
と冷や汗を掻いた。
そして神父は
「ふざけるな!! 貴様!! よくも!! お前の精でナンシーが!! うああああああああああああああ!!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
笑う望に神父は掴みかかろうとした。
ガシ!!
「え!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……へ?」
神父の体に何かが巻き付きそして
「あああ……ああ!! ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
とそのまま引っ張られて行ってしまった。
望は
「え! えええええ!!」
ガブグシャガアアブウ!!
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! ウア゛ア゛ア゛ア゛!!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
と悲鳴が上がった。
望は
「え……え……ずるい」
と言った。