54Dead『懐かしき思いで 終幕』
希咲家は急遽呼び集められた。
大二郎の兄文二郎が
「で? 母さん、親父が失踪するような兆候はあったのか?」
と聞いた。
清菜は
「別におかしいことは無かったわ……仕事を止めてからは普通に私が誰か分からないくらいだったし……」
「いや!! それ明らかだよね!」
と文二郎は冷や汗をドバっと掻いた。
すると大二郎は
「完全に認知症だな……仕事を止めて張り合いが無くなったのが原因なんだろうか?」
「まあ確かにそれがターニングポイントだろうな……正直仕事辞めたぐらいでおかしくなるとは思ってなかったけど……」
と文二郎は言った。
紗千奈は
「もしかして、あれが原因かな? 社長さんと喧嘩」
と言った。
文二郎は
「ああ! 聞いた聞いた! 親父が社長の愛玩用の日本刀を作っていたくせに名前を訳分からん名前にしたのが原因だってな!」
と言って少し噴き出しそうになって文二郎は言った。
「だって! だって! マジギレズッパアアアンって!」
とクスクスと文二郎の妻成実も笑っていた。
紗千奈は
「ええ、まさかうちの子ども達に名前を決めさせてそれを売るだなんて……何を考えてるのかしらあの鬼畜爺は」
と悪口を言った。
それを聞いた成実も
「あああ!! それ分かる!! なんか私らの事やたら悪く言うよね!! 絶対ドSの根性があるわ!」
と同調した。
清菜も
「昔からあんな感じよね……何で結婚したのかしら……まあ結婚してなかったらあなたたちとあの鬼畜爺の悪口言えなかったろうけど……」
と同調する。
文二郎も大二郎も
「何なんだろうか……」
「今は親父の捜索の話をしてるのにいつの間にか親父の悪口大会になったぞ……」
と呆れていた。
すると清菜は
「そうだ! これからはあれのことを鬼畜刀って言いましょう!」
「そうね!! 刀のことをやたら自慢してくるくせに刀以外の事はからっきしだったし!」
「ジワる!」
と本人がいないことを良いことに言いたい放題だった。
文二郎も大二郎も
「おい……いつの間にか変なあだ名まで付けられたぞ……ここまでくるともはや悲しいな……」
「はいはい、3人共! 親父の悪口はともかく! 今は親父の安否を心配しようか?」
と止める。
すると清菜は
「良いわよ……もう捜索願も一応は出したし、それに安否よりマジギレズッパアアアンで人を斬っていないかが心配よ」
と言った。
それを聞いて紗千奈も成実も
「分かる!」
「それだけが心配!」
と言った。
そして
「まああの爺さん貯金はヤバい程あったからマスコミだとか大二郎の警察への力で何とか誤魔化せるだろうけど……もったいないしねえ」
と言った。
紗千奈と成実は
「子ども達の将来は守らないと」
「そうね、それだけはしないと」
と子どもの将来を心配する。
文二郎も大二郎も
「「そうですか……親父の心配はどうでもいいですか……」」
とついに諦めた。
そして
「まあ兄さん、問題が起きたら俺が揉み消すよ」
「それは頼む」
と言って2人も取り敢えず納得した。
すると
「すみません? ちょっといいですか?」
と地元の警官が門を叩いていた。
大二郎は
「何でしょうか?」
と聞くと
「いやあ、数日前に近くに会った武田さん家の船が一隻無くなっててね? ちょっと皆に質問してるんですよ」
と言った。
それを聞いて
「知らないですね……」
「ああ、こっちは親父が失踪してちょっと立て込んでまして」
と言った。
すると大二郎は念のため警察手帳を出した。
「!! これは失礼! それでは私はこれで!」
と言ってそのまま立ち去った。
すると清菜は
「そういえば船で思い出したけどあの鬼畜刀、何故か船の免許を取って孫とデートするだとか言ってたわ……」
「へえ、でも望は乗り物酔い激しいわよ」
「へえ、そうなんだ」
と言ってそこで話しが終わった。
こうしてもし大吉郎が問題を起こせば今までの経歴と大二郎のコネで問題を消すという方向のまま大吉郎の捜索は続いたが見つけられずいつしか打ち切られた。
---------------------------------------------------------------------
「おしまい」
「!!!」
「え!! おしまい!!」
「大吉郎!!」
「お前……」
「あわわわわ」
と他の皆はドン引いていた。