52Dead『懐かしき思いでⅡ』
大吉郎は警察に職質を軽く受けてすぐに解放された。
望と瑛代は
「まさか、お爺ちゃんが職質受けている間に帰れると思ったら証人として残されるなんて……」
「嘘言っても意味がなかったから全部正直に答えたら怒られるし……」
と言っていた。
大吉郎は
「いや、帰れるならお爺ちゃん見捨てたの? 怖いんじゃが……」
と真っ青になりながら孫たちを見た。
そして、
「だいぶ話が逸れたがお前たちにこの刀が出来るまで一緒にいてくれないか? お爺ちゃんの一生のお願い!」
と言った。
望は
「えええ……あと何分掛かるの?」
と聞いた。
瑛代も
「瑛代もそんなに時間とってみたいものではないかな……」
とゲンナリしていた。
大吉郎は
「そんなこと言わんでくれ!! 明日までには完成するんじゃ!」
と言った。
望も瑛代も
「あ! 明日! 長い!!」
「瑛代明日予定があるもん!」
と言って心底嫌そうにした。
大吉郎は
「くうう……やはり子供は思い通りにいかないなあ……」
と言って少し悔しそうだった。
すると大吉郎は
「じゃっじゃあ!! 今作っている刀の名前だけでも!! それだけでも名付けてくれ!! それで満足するから!! ワシ! 孫達の名付けた刀を作ることに満足するから!」
と言って必死に言った。
2人は
「でも俺、そんな刀の名前とかどんなものか知らないよ?」
「瑛代も知らない……どんなのが普通なの?」
と聞いた。
大吉郎は
「そんなのはお前達の付けたい名前でいいんじゃ! 子どもの自由な発想こそが素晴らしい人類の発展なんじゃから!」
と言った。
望は
「それって名付けて欲しいために今考えた理屈じゃないの?」
と聞いた。
大吉郎は
「そっそんなことは無い!! なら交換条件じゃ!! もし名前を決めてくれたらゲームを一つ買ってやる!」
「「お任せあれ!!」」
と2人は大吉郎の提案に即答した。
大吉郎は
「ク……」
と少し悔しそうだった。
そして
「お爺ちゃん……その刀って良く斬れるの?」
と望が聞いた。
大吉郎は
「そりゃもちろんじゃ! どんな物でも忽ち断ち切る刀なんじゃ! 素晴らしいじゃろ!」
と言った。
瑛代は
「マジギレなの?」
と聞いた。
それを聞いた大吉郎は
(マジギレ? 真剣ってことじゃろうか?)
と考えて
「そうじゃ! その通りじゃ!」
と言った。
望は
「じゃあ、その刀で斬ったらズッパアアアンって血しぶきが飛ぶの?」
と聞いた。
それを聞いて大吉郎は
「物騒な質問じゃな……まあ斬ったらそんな音はなるじゃろうな」
と言った。
2人は顔を見合わせてお互い頷いて
「「じゃあマジギレズッパアアアンで」」
と言った。
すると大吉郎は
「そっそれは……」
と言って震えていた。
そして
「良い名前じゃなああああああ!!」
と言って大喜びした。
それを聞いて
((こいつ……孫に名前を付けて貰えれば何でもいんじゃね?)
と思った。
そして
「さっそく作業に取り掛かる!」
と言って刀を再び打ち始めた。
それを見て2人は
「まあいいか……帰ろう」
「そうだね、帰ってゲームの続きしよう」
と言った。
望は
「お前は俺のクリアしたゲームをいつもしてるけど楽しいのか?」
と聞いた。
瑛代は
「うん、あれは普通ストーリー終ったあとが一番やり込みがあるんだよ?」
と言って2人は歩いて行った。
そして、数日後
2人は今だ帰省の最中だった。
いつものようにゲームをしていると
「聞いてくれ! 孫達よ!」
と言って大吉郎は家に飛び込むように現れた。
紗千奈は
「あら、おかえりなさい」
と言ったら
「うるさいぞ、この雌豚」
と言った。
紗千奈は
「全く、これだから男尊女卑野郎は……」
と小言を言った。
望と瑛代は
「何?」
「ゲームしてるんだけど……」
とやる気のなさそうに言った。
すると大吉郎は
「あの糞社長が! マジギレズッパアアアンを引き取らんと言ったんじゃ!! あり得んじゃろ!」
と言った。
それを聞いた望と瑛代の父親の大二郎は
(ああ……この男……もうダメだな)
と思った。
するとお婆ちゃんの清菜は
「あなた……何をトチ狂ったんですか? そんな名前の刀誰が欲しがるんですか? 常識的に考えてください」
と呆れたように言った。
すると大吉郎は
「何を言っとるんじゃ! この刀の名付け親は望と瑛代じゃぞ! そんな才能のある名前をバカにすることは望と瑛代をバカにすることじゃぞ!」
と言った。
清菜は
「はあ……」
と悟ったように溜息を吐いた。
紗千奈は
「この名前はどうして付けたの?」
と母親として名付けた理由を2人に聞いた。
すると2人は
「「お爺ちゃんに付けてって駄々捏ねられたから」」
と言った。
それを聞いて
(((孫馬鹿が……)))
と完全に呆れかえった。