413Dead『威厳』
メアリーもアンジェリスに世話を任せたのが原因か両親を両親とも思ってもいなかったようだ。
「メアリー、学校の成績はどうだ? お前もレイビン家の」
「お姉ちゃん、今日はテストで100点取ったんだ!」
「そう! これも姉!! の私が見たお陰かなあ!」
と当てつけの様に2人は自分達を尊敬していないことを見せつけてきた。
このことに関しては母親も明らかにイライラしていた。
しかし、2人は止めようとはしなかった。
全てはアンジェリスが仕組んだことだと当然の様に分かっていた。
自分達がアンジェリスに対して行ったことに対しては反省していなかった。
2人にとって大したことではなかったのであった。
アンジェリスはそのことに対して謝られたとしても許すとかでなく諦めている為興味すら持っていなかった。
そして
「2人で明日は出かけようか! どうせあいつ等!! はいないんだし!」
と笑いながら言った。
ジョリザズは
「明日は学校だろ! 何を言ってるんだ!」
と親らしく怒鳴った。
だが
「……明日は動物園に行こうか!」
「うん!」
「聞いているのか!」
と明らかに無視されている。
2人はイライラしながら家にいることが多くなった。
しかし、耐えられなくなり仕事場で泊まりこむ事が多くなった。
そんな日々がずっと続いていた。
ある時
「菌?」
『ああ、そうだよ兄さん、菌を使えばこの世界は俺達レイビン家のもんだ、分かるか! 兄さん! これを使えば俺達の時代なんだよ! どこか良い非検体はいないか?』
とベルゲザズから電話だ。
弟は昔からジョリザズに対して従順で言う事を聞いていた。
ジョリザズにとってとても良い弟であった。
その為
「良いのがいる……一人な」
とほくそ笑んで答える。
そして、
2人のどちらかで良かった。
いきなり2人が感染すれば怪しまれるだろう、
ならば2人の内どちらかだ……
どちらでもいい、どっちだとしても2人に対して威厳を保てる。
自分が必死に娘を治す姿を見せれば!
母親は付きっ切りで一人を看病して調子や体調を管理すれば実験も進められる、
まさに一石二鳥だ。
開発と治療を同時に行える。
そして、美談にすれば自分の功績は高くなり自分と言う存在が認められる、
娘が助かった奇跡としてこの研究は誰からも取られることなく自分が進められる、
レイビン家の手で進められる。
そんな期待があった。
感染したのはメアリーだった。
アンジェリスは思ったよりショックは受けてなかったようだ。
しかし、それでも威厳は保てる、
少し悲しそうな顔をするアンジェリスを
ジョリザズは嬉しそうに見ていた。
そして、こう言った。
「安心しろ、お父さんがメアリーを必ず治す、必ずだ」
アンジェリスは睨むように見つめる。
だがそんなのもすぐに尊敬に変わる。
絶対に言う事を聞くようになる。
そう信じていた。