267Dead『苦しみ』
瑛代は望のいる医務室に入った。
「お兄ちゃん? 元気?」
と言って望を見た。
望は
「……ゾンビっていいなあ……玉潰されても気にしないんだぜ……」
「……そう……だね」
と言って頭を抱える。
望は
「あああ……ゾンビになりたいなあ……そうすれば俺もこんな……あ! アニメ見よう! 見ている間は忘れられるんだ! こんな腐ったゴミみたいなリアル!」
と言ってテレビを探すが
「テレビおおおおおおおおおおおおおおお!! テレビが無いいいいいいい!」
と言ってテレビが無くアニメが見れないというフラストレーションが暴発してベッド何に縛られている中暴れだす。
ガダンガダン!!
とベッドは揺れる。
瑛代は
「もう……お兄ちゃんいい加減機嫌直してよ……もうお兄ちゃんを苦しめたゴミは罰を与えてお兄ちゃん並みの苦しみを与えたから」
と言うが望は
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と言って奇声を上げる。
瑛代は
「全く仕方ないなあ」
と言って望の拘束を解いた。
そして
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ドダン!!
とベッドから落ちて暴れだす。
瑛代はそんな望の手を握って
「ほい」
と言って
「あでででででええええええええええええええええええ!!」
と望はいきなり苦しみだして座る。
「お兄ちゃん、取り敢えず落ち着いて、今は世界が終わっていてアニメ何てやってないから……フィギアで我慢してよ」
と言った。
望は
「だからゾンビになりたいんだよ! いつまで待たせるんだ! どうせ俺が死ぬ頃だろ! なら生殺しだろ! 近いうち! 俺はそんなの信じねえ! 希望を持った瞬間に殺されて絶望するぐらいなら絶望して勝手に死んだ方がいい!」
と言った。
瑛代は
「ああ、それはさせない……私の威信にかけて」
と言ってニヤリと笑う。
望は
「糞! スゲエありがた迷惑! 望んでない! そんなの俺は望んでないから! どうせ権力者としてもすぐに俺は邪魔者扱い邪見扱いされて追い出されてゴミのように死ぬんだ! なら俺はゾンビとして! ゾンビとしてええええ! もう辛抱たまらん!」
と言って窓を開けて
「俺! ゾンビになる旅に出る!」
と言って出ようとするが
「……この網戸どう開けるの?」
と聞くと瑛代は
「ああ……それか……取り敢えず開かないようにお兄ちゃんが精神復活する前に改良したんだ! 偉いでしょ!」
「偉くないわ……」
と言って呆れる。
望は
「もおおおお!! お前も邪魔するの!」
と涙目でキレる。
瑛代は
「だってお兄ちゃんが死のうとするし」
「悪いか!」
「私にとって都合が悪い」
と言い返される。
望は
「糞う! 妹ならもっとお兄ちゃんの苦しみを分かれよ!」
「分かるよ……多分」
「何で分かんねえんだよ! お兄ちゃん! 生殖不能キック喰らわされたんだぞ! ショックと痛みと絶望で頭おかしくなったんだぞ! お前だって流産パンチ喰らったら同じになるよ!」
とキレる。
瑛代は
「止めなさい……女性の誰かが聞いたらお兄ちゃん偏見の目で見られるよ!」
「男は良いのかよ! 男の生殖不能キックは良いのかよ! あいつ等が潰した物の中にはたくさんの命が詰まっていると言っても過言ではないだぞ! いわば大量殺人だ!」
と言うが瑛代は
「でもお兄ちゃん使い道ないじゃない」
「あの時使う予定だったんだよ! ゴムなしでな!」
とキレる。
瑛代は
「まあそうだね」
と半笑いで言った。
望は
「どうして! どうして俺が! 俺は権利を得てそれを実行しようとしただけじゃないか! 意味が分からない! 意味が分からない! 物を買って生殖不能キックは酷い!」
とキレる。
瑛代は
「うるさいなあ……耳がキーンとするよ、でもちゃんと分かるよ」
と言うが望は
「分かるわけねえだろうが! 俺の痛みと絶望なんか!」
「どっちだよ」
と呆れる。
望は
「てめえに流産パンチをお見舞いして分からせてやるううう!」
と発狂しながら瑛代に腹パンをしようとした。
だが瑛代はすぐ望のパンチを避けて手の開いた方の指を握り
「よっと」
と言ってそのまま壁に
ドッシャア!
「うべ!!」
と叩きつける。
瑛代は
「そんなこと! 女の子に! 言っちゃだめだよ!」
と言いながら
ドシャ! ドシャ!! ドシャ!!
とドリブルを打つように望を壁に叩きつけ続ける。
「ふぇばあ!! gばあああ! べええああああ! があああばあああ!!」
と血を噴き出しながら壁に何度も激突して遂に
「うげば」
と言って瑛代が指を離してそのまま倒れる。
「ちょっとどうしたの! なんかめっちゃ……うわああ! 血まみれ!」
「大変よ! 犯人は私だけど大変よ! お兄ちゃんが! お兄ちゃんが!」
「いや返り血を見れば分かるけど」
と現れた和子がゲンナリとしてみた。
和子は
「えっと……何があったの?」
「お兄ちゃんが私に手を上げようとしたんだ!」
「喜んでるの?」
「うん、どうせお兄ちゃんが私に勝つことなんて不可能だし」
と言った。
すると望は
「だへがかでねええっで!」
と言って起き上がる。
瑛代は
「へえ……タフになったね、お兄ちゃん」
と言って兄の成長を喜ぶ。